作品タイトル不明
第319話「積み重ねの一撃」
#第319話「積み重ねの一撃」
ジュリアとステラがうちのマンションにお泊まりした翌日。
俺たちは一緒に恩方ダンジョンに入った。まずは俺たちの五階層での戦いを彼女たちに見てもらうことに。
一応、映像でも見せてはいたが――実際に目の前で見るのとは違うようだった。
圧倒されているのが分かる。
「(強い。それに役割分担がしっかりしている)」
「(さすがに全くレベルが違いますね)」
俺たちはレベル6とレベル5の混成部隊だ。レベル4から見れば、動きも威力も別次元だろう。
それはまあ仕方がない。いつもは二チームに分かれて討伐していると説明すると更に驚いていた。
五階層は彼女たちにとってはまだ未知の領域だろう。そこで二チームに分かれて戦うことは無謀にも見えるのかもしれない。
そこで現実に何度か実践を見せたら納得してくれた。まあおれ達が普段、どんな感じでやっているのか、だいたいは理解してくれたことだろう。
「(まあ、いつもこんな感じだよ。基本的には安全マージンを大きく取って、その上で効率を高めているんだ)」
「(これはちょっと真似できそうにないです)」とジュリア。
そうだな。彼女たちは二人しかいない。そして高レベルハンターが引率する形だろう。なかなか自主的にコンビネーションを組んで討伐するというのは難しいと思う。
おそらくは高レベルハンターがおぜん立てしてくれたところを殴るだけ。それだと本当の実力がなかなか付かない。かと言って彼女たち二人だけでやるのは自殺行為。難しいところだね。
この辺りは彼女たちを指導している人達に伝えるしかない話だ。
真の実力を高めるための方法をI国のお偉いさんにも考えて貰いたいところだ。レベルアップだけが全てではないからね。
その後は四階層へ。
彼女たちに討伐してもらったが、さすがに二人だけでは厳しい。俺とルナがフォローした。
やはりレベル4の敵相手でも、一対一は無理なようだ。
ということで、レベル3以下の相手を残して倒してもらった。
実力的にはレベル3が相手ならば問題なく勝てるという感じかな。
……まあ、俺も最初はそんな感じだった気がする。
とりあえず四階層で二人だけで攻略するのは厳しい。
となるとI国ではレベル5以上と組んでレベル上げをする。
ある程度はおぜん立てするにしても、せめてレベル4の敵と一対一で勝てるぐらいにならないと駄目だ。どうしたらいいものか。
やはり基礎を積んでいくしかないだろう。それをどうするかなんだよね。
戦闘の後、ダンジョン内でルナの簡易指導が始まった。本当はいろいろ教えたいところだが、時間は限られている。
ルナは俺が最初に指導してもらった時と同じように、正面からの振り下ろしに絞った。
「姿勢を崩さないこと。腕だけで振らない。全身で振る。特に最初の下半身の踏み出しが大事」
シンプルだが重要な基礎だ。
最初は不安定だったけど、やっているうちに明らかに動きが変わっていった。
……上達が早いな。
俺なんて、頭の中のイメージと体がなかなか一致しなくて苦労したのに。
ジュリアもステラも飲み込みが早い。
ルナに向けて振り下ろす一撃。受け止める音が最初とまるっきり違う。しっかりと踏み込みができていると思われる音だった。
確実に威力が増している。
でも、おかしいな。俺の時はもっと時間がかかった気がするが?俺は道場で習った後に実践で試したがなかなかうまくいかずに苦労した記憶がある。
何でジュリアとステラは、すぐにうまくいっているのだ?
これがセンスの差というやつかもしれない。
ルナにもひよりにも「不器用」だと言われてきたからな。
まあいい。俺は数をこなすタイプだ。気にしない。……いや、ちょっとは気にしてるけど。
その後、みんなで少し話をしたが、やはりセンスはあるようだ。
「(二人ともセンスがあるよ。最初から段違いに威力が増している。確実に俺より上達早いよ)」
「(さすがにそれはほめ過ぎでしょう。レンさんは凄く強いので、センスの塊なのでは?)」とステラ。
「(そんなことないよ。二人ともセンスある)」とルナが補足。
二人は俺よりも上達が早いという話が信じられないみたいだ。でもこれが本当なんだな。
ルナとひよりが「本当だ」と補足したことで、なんとか納得したようだった。
センスのないことは残念で自慢できることでもないけど、それも努力で覆せる。
地味な基礎鍛を続け、努力すれば更に強くなれると思ってもらえたらいいだろう。
俺からも付け加えた。
「(打ち込んだ後は隙が出やすい。そこだけ気をつけて)」
「(分かりました。確かにそう思います。打ち終わった後は力が抜けてしまって危ない)」とジュリア。
特に自信が出てきた頃が一番危ない。安全マージンは常に取らないと駄目だ。ともかく……二人とも、昨日より表情が明るくなったと思う。
もちろん重圧が完全に消えたわけではないだろう。だけど、純粋に“強くなること”の楽しみが増しているように見える。
「(厳しいようだけど、真の実力を付けることが大事。そうしないとレベルだけ上げてもはりぼてになってしまうと思う。回り道に見えるかもしれないけど基礎鍛錬を頑張って欲しい)」
「(はい、分かりました)」とジュリアとステラ。
取りあえずは、それでいいだろうね。
でもそこからがまた大変ではある。地味な鍛錬の積み重ねはそれなりに辛いだろう。俺はそれが好きだったからいいけど彼女たちにとっては厳しい道。
本当はルナが定期的に指導してあげたらいいのだけど彼女たちは普段、遠くにいる。
結局、最後は本人次第。
それでも……今の彼女たちならばまだまだ強くなれると思う。頑張って欲しいところだ。