作品タイトル不明
第318話「背負うか、楽しむか」
#第318話「背負うか、楽しむか」
I国の秘密戦力、ジュリアとステラがお泊まりに来ている。そしていろいろと話をした。主にジュリアから質問を受ける形になっている。
最初は「どうやって強くなるか」という話だった。俺は基礎修練が必要で、そのアドバイスをしてくれる人を見つける必要がある。そして基礎修練は地味で辛いものだから、その覚悟が必要という話をした。
なかなか強くはなれないし、いつもはレベル上げに使っている時間を基礎修練にあてるのは勇気がいるだろう。予めその覚悟がないと続かないと思ったからだ。
ある程度はジュリアもステラも納得してくれたと思う。
その後は、いつの間にか話題は別の方向へ移っていった。
「(レンさん、ひよりさん、ルナさんは……辛くないですか?)」
ジュリアが静かに聞いてきた。
「(私は辛いです。I国から頼りにされるのが……もちろん期待されるのは嬉しいです。でも、その期待と責任が重大すぎて)」
その声は少し震えていた。
するとルナがあっさり言った。
「(私は重圧は全くないかな? 全部リーダーのレンに押し付けてるし)」
えっ。
もしかして俺は押し付けられてたの?俺、押し付けられてると思ったことないんだけど。
俺が不思議に思っていたらルナが続けた。
「(うちはレンがいるから成立してる。レンが嫌って言ったらそこで終わり。だからレンに任せるしかないのさ)」
なるほど……そういう構造か。
そう思っていたら、ひよりも頷いた。
「(私も似たようなものだよ。レンがやりたいようにやればいいって思ってる。責任を押し付けてるっていうより、信頼してるって感じかな)」
確かに、ひよりはずっと俺を支えてくれている。俺が自由に動けるのは、ひよりがフォローしてくれているからだ。ひよりがいなかったら俺たちはここまで強くなっていない。ひより様様だ。
じゃあ俺は?重圧を感じているか?
……ないな。全くないと言ったら嘘になるけど、そこまで気にしていない。
首をかしげていたら、ルナが笑った。
「(レンはこういう人間だからな。重圧とかあんまり考えてないよ。強くなることしか見てない)」
まあ確かにそうだ。でも、なんか馬鹿にされてる気がするけど?
「(ジュリアも、まずは強くなることだけ考えたらいいんじゃないかな? そしてできればそれを楽しめばいい。国のためってモチベーションになるならいいけど、負担なら考えすぎない方がいい。レンみたいに頭をからっぽにして強くなることだけ考えればいいと思うよ)」
俺は頭からっぽにしているわけではない……はずだ。でも、ルナの言いたいことは分かる。
そこで俺は口を開いた。
「(まあ、ちょっと納得いかない部分もあるけど……だいたい合ってる。俺も責任は感じてるよ。でも、そればっかり考えても意味ないと思う)」
少し考えてから続ける。
「(俺、ゲームが好きなんだ。キャラを育てるのが好きでさ。それが自分になっただけだと思ってる。辛いししんどいけど、少しずつ強くなっているって思えたら楽しいんだよ)」
ジュリアの表情が少し和らいだ。
「(……私も、自分が強くなることをもっと楽しんでみます。重圧はありますけど、そればかり考えていたら辛いですよね)」
「(そうだよ。責任感が強いのは凄く良いことだけど、背負い込みすぎると続かない。最悪、心が壊れてしまうよ。まずは自分が楽しめないと。それを重視した方がいいと思う)」
「(分かりました)」
そのやり取りを見ていたステラが言った。
「(レンさんたちは凄いですね。私が背負い込んでも良くないと、何度言ってもジュリアは変わらなかったのに……私は駄目ですね)」
俺は即座に否定する。
「(いや、それは違うよ。たまたま悩みが似てただけだからアドバイスできただけだよ。そして根本的なところは何もしてない)」
更に俺は続けた。
「(ステラさんがいるからジュリアさんは頑張れるんだ。自分をもっと誇った方がいいよ。おそらく、ステラさんがいてずっと励ましたからこそジュリアさんはここまで成長できたのだから)」
ステラは少し目を伏せた。
「(……ありがとうございます)」
俺だって同じだ。
ラム、リン、ロア、ルフ、クーが一緒に頑張ってくれたからここまで来られた。俺が強くなったのは間違いなくみんなのおかげだ。
ジュリアも頷く。
「(本当だよ。ステラがいなかったら、私はダンジョンで死んでたかもしれない。そしてその後も続かなかったと思う。本当にありがとう、ステラ。あなたに駄目なところなんて何もないよ)」
「(ジュリア……)」
そう言って、二人が軽くハグした。
……女性の友情、尊いな。こういうのもいいものだ。
でもそうやって眺めていると……周囲の視線が冷たいような気がした。ジト目のような気がする。
違うからね?俺は何も変なこと考えてないからね?尊いと思っただけなんだから!
ともかく……俺たちの言葉が彼女たちにとって、少しでもヒントになってくれればいいと思う。
背負い込むだけではしんどいよ。それではさすがに続かない。是非とも自分が進む歩みを楽しんでもらいたい。
強くなる道は、どこまでも長いのだから。その道を楽しむことができれば最強だと思う。