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作品タイトル不明

第303話「緊急会議」

#第303話「緊急会議」

世界会議終了後、朝倉はすぐに動いた。

まずは新たな会議の設定からだ。

そのメンバーは高泉首相、大泉防衛大臣、そして自衛隊トップである統合幕僚長・高倉となっている。

普段、ダンジョン関連の世界会議について、その内容の逐一報告までは行わない。せいぜいが報告書を上げる程度だ。

だが今回は別だった。早急に情報を伝え有事の際の対応を考える必要があると朝倉は考え会議の開催を急いだ。

メンバーが席に付いて会議が始まった。

そこで朝倉は静かに切り出した。

「今回の世界会議に出てきた情報で、特筆すべき点が一つありました」

モニター画面が光った。そして、そこにはいくつかの資料が映し出された。

「明らかに被害が少ない国がいくつか存在しています」

画面の左側には世界各国の被害状況が表示された。ダンジョンの氾濫数、モンスターの数、人的被害などだ。とんでもない被害が世界各国で出ていることが分かる。

また画面の右側には世界地図におよその被害状況を色別で示したものが映し出された。ざっと見て、やはり発展途上国は厳しい傾向にあることがすぐに分かる。

しかしながらその世界地図を見たらすぐに誰もが違和感を覚えるだろう。いくつかの国は明らかに被害が少ないのだ。

それらの国の被害は偶然では説明できないほどに少ない状況。場所は地域に点在しており特に法則性もなさそうだ。

そして、それらの国でも間違いなくダンジョンからモンスターの反乱は確認されていることが朝倉から説明された。

しかし、あまりにもそのモンスター制圧が早く被害が少ないのだ。

ダンジョンの氾濫したモンスターの制圧は通常の国であれば半日以上はかかるであろうが、いくつかの国ではわずか数時間で対応している。それも何度もだ。

「しかしダンジョンからの氾濫がないわけではありません。それらの国でも確実に氾濫が起きています。しかし圧倒的に被害だけが少ないのです」

「その国の軍事力や常時監視体制からは、どう考えても説明がつきません」

室内の空気がわずかに張り詰めた。

朝倉は続けた。

「これらの情報を元にいくつかの仮説を考えました。しかし思いつくのは1つしかありません——レンのような存在が、そのいくつかの国にも存在している可能性があると考えるのが自然でしょう」

朝倉の説明にしばらくの沈黙が続いた。

そして、最初に言葉を発したのは大泉防衛大臣だった。

「なるほどな……確かに、その可能性はあるかもしれない。ダンジョンの氾濫が何度か起きているにも関わらず被害が少ないのはあまりにも不自然だ」

「ただ、特殊な武器、手法などがあるのかもしれない。そこは引き続き確認を続けて欲しい」

そこで高倉が発言した。自衛隊のトップであり軍事方面の専門でもある。

「そうですね。大泉防衛大臣の言う通り断言はできません。しかし、ざっと見てもそれらの国に共通点や法則性が特にない……特殊な武器、手法というのは考えづらいでしょう。あくまでも私の推測になりますが、おそらくは朝倉の言う通りかと。レンのような存在がいると考えた方が自然です」

その言葉に高泉は腕を組み「なるほどな」と言って天井を見上げた。

高泉首相も表情を引き締め、その可能性に言及した。

「仮にレンのような存在が他国にもいるとしたら……現状の世界の均衡は一変する可能性があるわね。今は日本が比較的に有利な状況、しかしそれが続かないかもしれない」

大泉が低い声で続けた。

「そうですね。それらの国にレンのような存在がいたとして、それが世界各国にばれたら間違いなく“取り合い”になります」

ダンジョン外でも活動可能な使役モンスター。その軍事的価値は計り知れない。通常兵器では対処困難な敵でもあっさりと退ける戦力だ。

それが特定の国に存在するとなれば、周囲が黙っているはずがない。

朝倉は頷いた。

「発覚すれば、外交問題どころでは済まない可能性があります」

もし当該国がその存在を他国に融通せずに自国に押し留めようとした場合、他国はどう出るのか?

考えただけでも恐ろしい話だ。

国家間の緊張が一気に高まるだろう。

何とか戦力を融通して欲しい世界各国と、今の戦力を保持したままにしたい国との争いになる可能性があるのだ。

それは軍事そして、経済的な対立にも及ぶ可能性がある。

そして、他にも懸念点がある。

「仮にその戦力が裏社会と繋がった場合は……」

大泉の言葉に、室内が静まり返った。国家管理下にない裏社会に“レン級”の存在が出てきたらどうなることか?

日本ではそういった裏組織は比較的少ない。それでも完全に撲滅することはできていない状況。

一方で世界を見渡せば裏組織はいくらでもある。それらの組織は武器に麻薬と何でも扱っている。レンのような存在がいると分かれば引き込もうとする可能性は十分にあり得る。

仮にそういった勢力にレンのような存在が付くことになれば大問題だ。

それは国家、そして世界の最大級の不安定要素にもなり得る。

やろうと思えば要人の暗殺なども比較的簡単に成し遂げてしまうことだろう。テロなどを起こすことも容易になるかもしれない。本当に恐ろしい話だ。

とは言え、他国のことであればそれを未然に防ぐ方法は無いに等しい。かと言って日本からレンのような存在の可能性を示唆するのも困難な状況だ。

高泉首相はゆっくりと口を開いた。

「我が国において、現時点でレンたちを秘密にすることはそのまま続けるとして……」

「もし、他国でレンのような存在がばれた場合に、日本はどう動くべきかしら?」

その言葉に会議室は静まり返った。そして朝倉が少し考えた上で言葉を発した。