作品タイトル不明
第277話「定期報告と紗月からの不穏な連絡」
#第277話「定期報告と紗月からの不穏な連絡」
司が危うい道へ足を踏み入れつつあった頃、レンたちはただひたすらにダンジョン攻略へ没頭していた。
彼らが目指すは――五階層の攻略。そして全員のレベル6への挑戦だった。
(レン視点です)
頑張ってはいるけど、全員レベル6にはまだ時間がかかる。
順調でもまだ数か月は必要だろう。だが確実にラムとリンのレベルアップが視野に入り始めていた。あと2~3か月でレベル6になる予定だ。待ち遠しい。
レベル6になれるというだけでも十分すぎるほど凄い。だけど、使役モンスターの場合はそれだけでは終わらない可能性がある。
使役モンスターには“FS遷移”という、あの特別な進化があるからね。
前回のラムの時は、まさかの「ダンジョン外へ出られるようになる」という予想外の進化だった。
今度は更に凄い変化が起きる可能性がある。本当に、次に何が起きるのかさっぱり分からない。
できれば事前に何になるのか分かればありがたいが……それは使役モンスター本人にも予測不可能らしい。前回も何も分からずレベルアップした時にびっくりしていたからね。
今回もそういう感じなのかもしれない。
使役モンスターの進化は楽しみだ。とは言え、現時点ではやることは変わらない。前に進むだけ、突き進むだけだ。
俺がレベル6にレベルアップしえからは効率を最大化するため、二手に分かれての攻略を進めている。
俺をリーダーとする5人、そしてルナをリーダーとする3人のチーム編成。俺とルナはレベル6なので五階層のボスと言えるオークでも何体か同時に対応可能ということで取られた作戦。
これだとルナに負担がかかってしまっているが、本人が「任せてくれ。大丈夫だ」と言ってくれたので甘えることにした。
このペースを維持できれば、ラムもリンが2~3か月後にレベル6に、そして同じぐらいの間隔でロア、ルフ、クー、ひよりの順番で同じくレベル6になる予定。
全員がレベル6に届く未来が、ようやく現実味を帯びてきている。
前回の定期報告から約一か月。
俺たちは再びハンター協会ビルを訪れていた。
「あいかわらず人多いな……」
「そうだね。まだまだハンターが足りてないみたいでCMとか情報番組で応援してるからね。応募はたくさんあるらしいよ」
そうだ、ひよりはもともと公務員で新規ハンターの受付をやっていたこともある。それほど前の話でもないが懐かしいな。
「もう、そっちの仕事はしていないのだろう?」
「うん、もう全く……ってずっと一緒にダンジョン入っているんだからレンも知っているでしょ」
まあそりゃそうか。ずっと一緒にダンジョンで討伐を進めている。公務員の仕事もやっているとはさすがに思えない。
そんな話をしていたら見覚えのある人影が俺に近づいてきた。
紗月だった。ただし今日は司の姿はない。まあどちらにしろあまりいい気分はしない。そして紗月は俺に話しかけてきた。
「レン……ごめん。ひとつだけ聞かせてほしい。ここ最近、司くんを見なかった?」
「いや? 前に紗月と一緒に勧誘しに来た時以来だな。あれっきりだ」
「……そっか。実はね、行方不明なの。こんなこと言える立場じゃないけど……教えてほしいの」
紗月の表情はどこか焦っているようにも見えた。何かあったのだろうか?でも俺は正直なところ何も知らない。前回、完全に勧誘を断ったからもう来るとも思えないのだけどね。
「ああ、見かけたらな。まあ……ないとは思うけど……いや、正直なところはなくてほしい、かな」
「うん。ありがとう。それじゃあ」
そう言って紗月は去っていった。
そんなやり取りの後に俺たちはエレベーターへ向かった。そしてそのまま朝倉さんのオフィスへ。
そこにはいつもの定期報告のメンバーがそろっていた。朝倉さん、エリナさん、透子さん。今回は、前回だけ来ていた黒澤さんはいないようだ。まあさすがに忙しいだろうからね。当然だとは思う。
朝倉さんがいつもの調子で話かけてきた。
「調子はどうだい?」
その問いかけに、俺は現状を報告した。まあ本当に先月から特に何も変わっていないので報告することも特にないのだが再確認という感じになる。
まずは五階層での引き続き討伐を進めていること、そしてラムとリンがあと2~3か月ぐらいでレベルアップする見込みであること。
FS遷移についてはまだ何もわからないこと。
「順調そうで何よりだよ。次のレベルアップ……楽しみにしているよ。」
朝倉さんが優しく笑ってくれる。そしてその横で透子さんが、いつものキラキラした目で身を乗り出してきた。
「次のレベルアップの時は絶対に呼んでね! 絶対だからね!」
「もちろん! 透子さんとは一緒に見たいよね」
透子さんは前回、そして前々回の使役モンスターのレベルアップやFS遷移も見ている。そして「世界初の瞬間かも」と喜んでいるからね。呼ばないわけにはいかない。
とは言え、ほぼ毎日うちのマンションに入りびたりで使役モンスターと一緒にいるのだからレベルアップのスケジュールは俺よりも詳しいぐらいのはずなんだが。まあいいか。
これで今日の報告は終わり……と思っていたら、ひよりが口を開いた。
「あの……朝倉さん。実はエントランスで、気になる話を聞きまして……前回に報告に上げた御影さんのことなんですけど――」
ああ、その話もした方が良かったかな?
でも、その言葉を聞いた朝倉さんの表情が静かに引き締まった。何かあったのだろうか?