作品タイトル不明
第276話「司の再出発(司視点)」
#第276話「司の再出発(司視点)」
くそ……むかつく。
世の中、全部間違っている。どうなっているんだ?
なんで俺がレンを誘っただけで会社に圧力がかかるんだ。勧誘なんて誰でもやっているだろうに。本当におかしい。
レンのせいで、そして政府のせいで俺の帰るところがなくなったじゃないか。
しかも今日もテレビの仕事が終わったあと、なんとか契約継続ができないか局に掛け合ったが、再び駄目だった。あいつら全く俺の話を聞こうとしない。
そうか。分かったぞ。もしかしたら、テレビ局にも政府から圧力が入っているのかもしれない。
あの番組は人気番組になっていると聞いている。それがいきなりの打ち切りなんておかしいことだ。
そういうことか。政府は本当にやることがせこい。
本当むかつくな。政府が民間にまで圧力をかけるとか終わってるだろ。
今に「言論弾圧」と言われることになるぞ。国民の正当な権利を取り上げるなんてなんて奴らだ。
そんなことを考えながら最近、泊まっているホテルへ向かった。すると、その時に前方で何やら騒がしい団体が目に入った。
宗教?それとも何かのデモか?馬鹿だな。デモなんぞやっても無意味だというのに。
――ん?
横断幕やプラカードに書かれた団体名などを見て、思わず足が止まった。
「反政府ハンター解放同盟」
なんじゃそれは?俺は少し気になってそのプラカードに書いてあることを眺めた。
そこにはいろいろなことが書いてある。
・政府の横暴を許さない
・政府は民間に圧力をかけている!
・ネットの書き込みも消される、言論弾圧だ!
・ハンターを雑に扱うな!
・レベルだけで差別するな!
・ハンターの収入を保障しろ!
そうそう……ほんとその通りだよな。
政府は民間を弾圧している。間違いない。おかしな話だよな。言論弾圧もあるのだろう。ネットの書き込みも反政府の書き込みなどは全て消されるのだろう。圧力をかけやがってふざけた話だ。
そのそも、俺ほどの人間を雑に扱うくらいだ。こいつらのようなクズ連中だったら何も考えずに弾圧するだろう。そうしてゴミのように扱われてきたのだろうな。そう考えるとかわいそうな奴らなのかもしれない。
俺ほどの人間、レベル5である俺を軽んじるなんて本当にありえないことだが政府はそんなおかしなことさえもやっている。
そんなおかしな政府を信用できないのも分かる。
こいつら、いつも馬鹿らしい主張とかくだらない活動をやっていると思えば、意外と言っていることは正しい。ちょっとだけ見直してやろうじゃないか。
そう思いながら眺めていると、少し可愛い女の子が近づいてきた。
「私たちの活動に興味あるんですか?」
「いや、別に? でも言ってることはまあまあ正しいと思ってな。それでちょっと眺めていただけだ」
「本当ですか? すぐに理解されるなんてさすがですね!」
そう言うや否や、その女の子は俺の腕に絡みついてきた。
……おお、意外と胸がデカいじゃないか。
「すごいです! 一目見ただけで本質を理解されるなんて! かなり凄い人なんですね」
「まあな。お前もやるじゃないか。俺の凄さをいきなり見抜くとはなかなかだ」
「ほんと凄いと思いますよ。あなたほどの方なら、すぐ幹部になれますよ! ぜひ活動を手伝ってください!」
「幹部? なんだそりゃ?」
「私たちのトップメンバーです。ここだけの話ですが……お金も女性も好きにできますよ」
「ほう……そこんとこ詳しく」
その言葉を聞いた瞬間、俺の中で何かが弾けた。
――金と女が自由になる?
それなら話は別だ。俺のことを認めてくれ、更にはお金と女が自由になる。いい話じゃないか。
俺はそのまま女の子に誘われるままにデモの中心へ連れていかれると、周囲のメンバーが一斉に拍手で歓迎してきた。
おお、こいつら分かっているじゃないか。俺は軽く手を上げてやった。
「もしかしてあの司さんじゃないですか?」
「ああ、そうだが俺の名前を知っているのか?」
俺は少し不気味に感じて聞いてみた。
「だって、確かテレビに出ている有名人ですよね。誰でも知っていますよ。凄い人じゃないですか!」
「おお、良く分かっているじゃないか」
うん。怪しい連中だと思っていたけどそうでもない。俺のこともよく分かっている。まずまずいい感じの奴らじゃないか。
「ええっ、そんな凄い人だったのですか!」とさっきの女の子が言い出した。
「まあな。俺はレベル5ハンターでもあるからな」
「本当に凄い人じゃないですか! そんな人がうちに来てくれたら百人力ですよ。これはもう、すぐに幹部候補ですね!」
ほう、よく分かっている。石動のような老害とは違う若いメンバーばかりだ。政府と反発しているのもいい。
ここなら俺の凄さを理解し、正しく評価してくれるはずだ。
……そうだな。俺のような優れた人間はこういう団体の幹部になるのも悪くないな。ここで力を付ければ政府に対抗できるかもしれない。
まずは俺がここで頂点に立てばまた世の中を動かせるはずだ――よし、俺のターンが来た。覚えていろよ、レン、そして政府の野郎ども。