作品タイトル不明
第275話「崩壊の自覚と逆恨み(司視点)」
#第275話「崩壊の自覚と逆恨み(司視点)」
くそいまいましい。
紗月からの情報で、石動のやろうがいまだに俺の功績を認めず、俺をクビにしようとしていることが判明した。
石動は本当にふざけた奴だ。とんでもない。俺がどれだけ会社に貢献したと思っているんだ。テレビ番組で何度も会社の名前を出してやったというのに。
仕事を正当に評価しない人間が上にいるなんて……あいつは御影グループの癌だ。すぐに辞めさせるべきだろう。
だが――大丈夫。俺はやっぱり頭がいい。
石動のような老害は駄目だ。やはり頼りになるのは若手だ。俺は以前、俺にコンタクトを取ってきた会社の若手執行役である鷹見にSNSメッセージを送った。
あいつなら俺の功績を正しく理解してくれるはずだ。すぐ返事が来たのも実にいい。
やはり仕事はスピードが大事なんだよ。こうやってすぐに動く、やっぱり鷹見は一味違うな、俺の味方をしてくれるはずだ。
――そう思ったのだが、鷹見から送ってきたメッセージを開いた瞬間、俺は固まった。メッセージの内容は俺を責め立てるものだった。
「なんてことをしてくれたんですか、司さん!社長がかんかんに怒っていますよ!」
は?
どういうことだ?意味が分からん。
会社の宣伝をテレビで何度もしてやったじゃないか。会社は大喜びするはずだろ?どうして俺が親父に怒られるんだ?
混乱した俺は、SNS通話で直接鷹見に連絡した。こういう文字のやり取りでは間違いが多いんだ。きちんと口頭でやり取りすることが大事だ。きっと何か誤解しているに違いない。
「おい、鷹見、どういうことだ。俺はテレビ番組で何度も会社の名前を出してやった。貢献しているよな?」
「司さん、何をとぼけたことを言っているんですか? そんなの貢献になるはずないでしょう。それよりも社長はかんかんですよ。居場所が分かるのならばすぐに連れて来いって激怒しています」
鷹見は何を慌てているんだ。多少、問題があったとしても俺のように冷静に話をしないと駄目だろうに。冷静にならないと判断を狂わすぞ、相手にも話がきちんと伝わらない。
ともかく俺は激怒されるようなことをした覚えがない。おそらく何か行き違いがあるのだろう。それを確認する必要がある。
「鷹見、落ち着け。どういうことだ? 俺が何をやったと言うんだ?」
「司さん、会社の名前を使ってレベル6のハンターを勧誘したって本当ですか?」
「ああ、なんだレンのことか。あいつもとうとうレベル6になったということで俺が直接、勧誘してやったぞ。もともと俺のクランにいた人間だからな。もちろん会社のバックアップもあるぞと言ってやった」
「マジですか……やはり本当だったんですか」
「ああ、それなのにレンは馬鹿だからな。すぐに断ってきやがった。ふざけたやつだ。しかも紗月も紗月だ。俺がせっかく勧誘しているのに隣で黙ってやがって、しかもレンに謝っていたぞ。本当に使えん奴だ。で、それがどうしたって言うんだ? 何ら問題ないだろうに」
その瞬間、鷹見は深いため息をついた。
「……とんでもないことをしてくれましたね。司さん」
「それは大問題ですよ! レベル6の若手は国の宝なんです。最近はレベル6になる人間も珍しい。しかも若手の成長株、超重要人物なんです。その人間に会社の名を使って接触? そんな迷惑行為をしたら政府が黙っているわけがないでしょう」
「迷惑行為? なんで勧誘が迷惑行為なんだ。しかも政府が動くって何だよ!」
俺は理解できなかった。勧誘なんぞ、どこにでもあるだろうに。なんで俺だけ問題視されるんだよ。レベル6の若手がなんだってんだ。俺だってちょっと……いやかなり頑張ればきっとなれるはずだ。
しかし鷹見は更に追い打ちをかけるように続けてきやがった。
「おそらく今、政府から圧力がかかって、御影グループは多くの仕事が止まっています。投資家も離れて、取引先も逃げています。全部、司さんの勝手な行動が原因です」
「……………………は? みんな揃いも揃って馬鹿なのか? 政府が民間に圧力をかけるなんて、やっていいはずないだろう。それは民間の弾圧だろうに」
日本はいつからそんなおかしな国になったんだ。政府が圧力をかけるなんてあっていいことではない。そんなの常識だろうに。
「司さん……何を綺麗ごとを言っているんですか。政府が国に貢献する人間を守るのは当たり前です。それを邪魔する人間や会社が排除されるのも当然です」
「司さんの行動は……政府、そして国から犯罪行為に近いとみなされてますよ」
鷹見の大きな声に耳鳴りがした。本当に理解が困難な状況だ。鷹見までなんでこんなことを言い出す?揃いも揃っておかしいだろう。
俺のせいで政府から圧力?会社が大変なことに?
しかも親父がかんかんだと?
みんな間違っている。何でこんなことになるんだ。俺はどうしたらいいんだ。これでは―― 俺にはもう帰る場所がないじゃないか。
みんなに歓迎されての凱旋を予定していたのに!
くそ……どうしてこうなった?
そうだ、やっぱりレンが悪い。あいつが元凶だ。
あいつが俺の誘いを断ったから、こんなことになったんだ。なんてことをしたんだあいつは。
レンが誘いを受けてさえいれば何も問題は起きなかった。
くそっ、俺が何したってんだ。政府にチクるなんて卑怯なことをしやがって。更にはその政府を使って圧力をかけてくるなんて最低じゃないか。
あの野郎、絶対に許せん……!
とは言え、今は怒っている場合ではない。
なんとかしなければ本当に終わる。
……もう一度、テレビ局に掛け合えば延長できるか?
金の余裕はない。今すぐに仕事がなくなるのはかなりまずい。
猶予はあと1か月もない。
テレビの仕事が終わったら本当に終わる。とりあえず考えないと駄目だ!