作品タイトル不明
第269話「みんなの怒り」
#第269話「みんなの怒り」
いつもの定期報告。俺は朝倉さんに現状報告をした。俺がレベルアップしたこと、そして今後は二手に分かれて活動し様子をみることなどだ。
報告を終えると朝倉さんもエリナさんも俺たちの活動が順調ということで喜んでくれた。
これで終わりかなと思っていたらルナが話を切り出した。御影の話だ。
「それと……御影という人物がレンにしつこく接触してきているようです。可能であれば何とかしてもらいたいのですが」
「おい、ルナ、それは俺の個人的な問題だろ……」
俺が止めたが、遅かった。
朝倉さんが低く声で俺の動きを遮った。
「いや、レン君、それは駄目だ。その話を詳しく聞かせてもらえるかい。そういう話はとても重要だ。仮にレン君の個人的な問題であったとしても、君たちの活動に少しでも支障が出る可能性があるものは排除する必要があるのは間違いない。そこはルナ君が正しい」
「分かりました……」
そこで俺は仕方なく過去の話も含めて説明を始めた。
高校時代に御影にクランを乗っ取られたこと、そしていつもダンジョン内では俺のレベルの低いことなどを馬鹿にしてきたこと。
更には今回はレベル逆転した途端に態度を変えクラン加入を迫ってきたこと、そして俺が断ると御影グループの話まで持ち出して勧誘を続けてきたことなど――
まあかいつまんでの話にはなるが全て話をした。
「まあ、こんな感じでして御影は本当に自分勝手でおかしな奴です。ただ、これは俺の個人的な問題なので、特に大事にすることでもないとは思っています」
俺はなんとか沈静化させようと思った。俺の個人的な話にみんなを巻き込むのは申し訳ないと思ったからだ。
でもみんなの反応は俺が考えているものとは大きく異なった。
「……控えめに言ってクズね。それが本当ならば全力で潰す必要があるわね」
エリナさんが怖いことを言い出した。そして表情が本気で怒っている。エリナさんの全力って何さ、怖すぎるんですけど。
隣ではルナもかなり怒っているように見える。まあこれまで御影のことについて詳しくは話してなかったからな。特に知らなかったのだろう。それにしてもそこまで怒らなくてもいいと思うのだが。
そしていつもは冷静な朝倉さんもかなり怒っているように見える。ちょっと怖い。
そして朝倉さんが静かに語り始めた。
「まず、エリナ」
「何、私に動けというなら動くわよ。全力で潰すわよ」
「違う、勝手に動くな。話が余計にこじれる」
朝倉さんはまずはエリナさんをなだめようとしているっぽい。さすがだね。やっぱり冷静だねと思ったら……そうでもなかった。
朝倉さんは静かに言葉を続けた。
「だが……エリナの言う通りだ。確かにその男の卑劣でクズな行動は見過ごせないな。まずは私から上に話を上げる。すなわち政府から御影グループに“警告”を入れるように要請する。仮に政府が動かないようであれば、その時には私の全勢力を使って潰す。だからエリナはまだ待っていて欲しい」
「えっ、そこまでの話!?」
俺の個人的な話が、いつの間にか国家レベルの話に進んでいるような気がする。さすがにちょっと気が引ける。
「もちろん、そこまでの話だ。現時点で君たちの成長を妨害する行為は、もはや個人のトラブルレベルの話ではない。レン君たちは“日本の切り札”なんだよ。御影君のやっていることは、日本に敵対する行為と言っていい。全力をもって潰すのは当然のことだ」
朝倉さんの声は静かだが重かった。冷静な人ほどこういう時こそ怖いのかもしれない。
更にエリナさんが付け加えた。
「朝倉さんが言うことは当然よ。それでも止まらないようなら、私が個人的に制裁するわよ。全力で徹底的にやるわ」と物騒なことを言い出した。やばい。
比較的おとなしい透子さんまでもが言及した。
「御影グループと言えばダンジョン関連を含めて共同研究などもいくつかあったはず。それらの研究協力も全て停止した方がいいかな。日本と敵対する勢力ならば協力するのはおかしい」
やばいな。御影はそうそうたる人たちの怒りを買ってしまったぞと思っていたら、うちのメンバーたちも同じだった。
振り返ってみると怒りが凄い。まるでみんなから怒りのオーラが出ているようだ。
「レンさんにそこまでの屈辱を与えるとは……今度あったら殴り倒していいですかね」とラム。
「もちろん駄目だよ」と俺は即座に駄目出しした。ちょっと待ってよ。いつもの冷静なラムはどこに行ったんだよ。
「それならば、路地裏にでも連れてきてミンチにするとかはどうですか?全力で形も残らないように潰しますよ」とリン。
「それも、もちろん駄目!」とこちらも俺は否定した。なんでリンまでそんな物騒なことを言い出すんだ。リンもやばいよ。
「でも僕も凄い腹が立った。どうにかしてやりたい!」とロアが言い出した。
「ロア、落ち着いてくれ。俺は大丈夫だから」と何故か俺はロアもなだめた。
「ならば社会的に抹殺するってのはどうですか?ネットにいろいろと方法が書いてありましたよ」とルフが言い出した。
「もちろん、それも駄目! 抹殺とかそこまでする必要ないから」どうしてルフまでそんなこと言い出すのさ。
「暗殺もいいんじゃない。私達なら秒殺で証拠も残らないようにできるよね。命令してくれたらやるよ」とクーまでも物騒なことを言い出した。
「駄目駄目、暗殺なんて絶対に駄目だから!」
いや、みんなそこまで怒らなくても……ともかく俺が怒るはずの話なんだが、みんなが怒って俺がなだめるという変な状況になっていった。
困ったぞと思う反面、みんなが俺のために怒ってくれているんだと思うと胸の奥がじんわり熱くなる。
こんなにも俺のことで怒ってくれる人たちがいる。そして本気で守ろうとしてくれる仲間がいる。俺は本当に仲間に恵まれている。
「……ありがとう。俺は強くなる。もっと強くなるから大丈夫だよ」
自然とそんな言葉がこぼれた。
御影のことは腹が立ったけど、結束力が高まったようにも思う。そういった意味では良かったのかもしれないな。いや、良くはないか。
ともかく、これからもっと頑張ろうと思う。