作品タイトル不明
第267話「御影のおかしな提案」
#第267話「御影のおかしな提案」
今日は月1回の朝倉さんへの定期報告の日だ。
俺が予めスマホでレベルアップしたことを事前に伝えると、とても喜んでくれた。本当にありがたい。俺はいい人に恵まれていると思う。
ということで俺たち8人(3人+5体)は協会ビルへ向かった。レベル6になった直後ということもあり足取りも軽い。
早く報告したくてワクワクしていた。
しかし――エントランスに入って少し談笑していたところで、また“面倒くさいやつ”が現れた。そうあいつだ。先月に続いてまただ。
何で報告する日に限っているんだよ。ワクワクしている気分が台無しだ。できれば話かけてこなければいいのだが……そう思っていたが、その願いは儚くも崩れ去った。
向こうからこっちにどんどんやってきて御影が話しかけてきた。
「おい、レン!どういうことだ? 紗月からの電話にも出ないし、住所も変えてどこ行ったのか分からんじゃないか! せっかくこちらから何度も連絡ってやっているのにひどい奴だな!」
……はぁ?
本当に頭が痛い、そして理解できない。なんで俺が今さら紗月の連絡を受けなきゃいけないんだ。何を考えているんだこいつら。
「知らん。俺はダンジョン活動で忙しいから電話なんてしてる暇ないんだけど? 紗月からの着信入っているのさえ気が付かなかったよ。たとえ気が付いたとしても出る必要もないだろう。何で俺が紗月とやりとりしないといけないんだ。意味が分からん」
そう言うと、なぜか紗月が少し寂しそうにしているようにも見える。いや、勝手に俺を捨てたくせに今さら都合よく近づかれても困る。俺にはひよりがいる。何かされても面倒くさいだけだ。
「レン、いい話がある。ちょっとでいいから時間を取れ!」
なんだ、こいつは本当にふざけた奴だな。命令口調で言ってきやがった。本当に面倒くせぇ……。
だが「これが最後」という条件で話を聞くことにした。
すると御影は「1対1で話したい」と言うので、協会ビルの隅にある小さな喫茶スペースへ移動。
ルナ、ひより、使役モンスターたちには、話をして少し待っていてもらうことにした。
「ルナ、ひより、そしてみんな、話は数分で終わると思うからちょっと待っていてくれるか? これで最後らしいから一応聞いてやることにする」
「うん、分かった」とひよりが少し心配そうにしている。まずかったかな。心配させてしまった。
「まあ、早くしろよ。待っているからな」とルナ。
……だが。
行ってみると、なぜか紗月が普通に御影の隣に座っている。
「はぁ?1対1じゃないのかよ……」
「あ、そんなこと言ったっけな。まあ細かいことは気にするな。それぐらいどうでもいいだろう」
本当に勝手でひどい男だ。自分から言い出したことさえも守らない。どうやったらこんな自分勝手なことができるのか本当に不思議だ。
でも、御影の話は俺の考えの斜め上を言っていた。自分勝手どころではないことを言い出したのだ。
御影が胸を張って言いだした。
「レン、いい話がある。」
はぁ……詐欺師の前フリかよ。「いい話」なんて話に本当にいいことはないだろうに。それよりも早く本題言えよ。
そう思っていたらようやく本題を切り出してくれた。
「喜べ、レン。お前はもともとうちのメンバーだ。そこで今回は俺たちのクラン『エクリプス』に、特別にお前を戻してやることにした。お前の他の仲間も全員受け入れてやる!」
……は?
あまりにも意味が分からず、しばらく固まってしまった。
「驚いて言葉もないか?そうだろう。うちは御影グループがバックにいる。会社は安定してるし、活動の幅も広がるぞ! いい話だろう」
こいつ……本気で言ってるのか?
「お前、馬鹿か?」
「はぁ? 馬鹿とはなんだ!」と御影が怒り出した。
「なんで俺たちが、お前のクランに入る必要があるんだ?こっちはもう何人かはレベル6だぞ。なんでお前たちのクランに“合わせてやる”必要があるんだよ。そんなことをしていたらレベルアップが遅くなるだけだ。無駄すぎる。本当に意味不明なんだが」
本当に頭が痛い。御影は何を言っているんだ。言っていることが理解ができなさすぎて困る。これは本気で言っているのだろうか?
勝手に追い出したくせに、俺のレベルが上回ったら戻してやるだと?どこまで頭が都合よくできているんだ?
ほんと「お前の頭はハッピーセットか!」と言いたくなるぐらいだよ。
御影の表情が歪んだ。
「レン、何を言っているんだ。冷静に考えろよ、御影グループだぞ。お前もそれぐらいは知っているだろうが! 凄い勢いで伸びているんだぞ」
「ああ、もちろん御影グループは知っているけど、それが何なんだよ。クランでの成長とは全く別の話だろ。そこに胡坐をかく方がよほど問題だ。俺にはバックはいらない、全く不要な話だ」
さすがにここまで言えば理解するだろう。本当におかしな話をしやがる。紗月も何も言わないから、どう考えているかも分からない。
なんなんだ、こいつらは?
そう思って断り続けていたら御影は更におかしなことを言い出しやがった。
すると御影は焦りながら言い出した。
「くそ……本当に入らないのか?今ならまだ許してやるぞ?」
「はぁ? 何を許すんだ。知らん、勝手にしろよ」
俺が突き放すと、御影は舌打ちして喫茶から出ていった。紗月は「レン、本当にごめんなさい」と言いながら軽く頭を下げ、その後を追った。
御影は更に遠くから俺を指さして「後から泣きついて来ても知らんからな!」という捨て台詞まで残していった。
はぁ、最後まで本当に面倒なやつだ。
……そしてテーブルを見ると。
「あいつら、会計さえもしてねぇじゃねーか……」
最後の最後までひどい奴らだった。まあ、我慢しよう。これで“最後”だ。
もう二度と会うこともないだろう。というか、本当に会うことはないはずだよな?もうさすがにこんなやり取りするのは嫌だぞ。
そう思いながら俺は3人分の会計を済ませ、みんなの元に戻ったのだった。後から聞いたら紗月は、ひよりに自分の分のお金を渡してきたらしい。御影が勝手に動いたから会計も済ませずにごめんと謝っていたらしい。
そっか、紗月はまだ分別があるみたいだな。でも御影のようなやつと一緒にいるのはまずいと思うけど……。