作品タイトル不明
第265話「初めての実践訓練」
#第265話「初めての実践訓練」
朝倉さん経由で自衛隊から実践訓練の依頼が入った。俺は必要なことだと思って了承。そしてそれをひより、ルナ、使役モンスターに伝えた。
その数日後、ダンジョンの五階層で討伐中に実際に自衛隊からの連絡が入った。
そこで俺は緊急依頼が入ったことをみんなに通達。その後はすぐに地上へ戻り、車で立川駐屯地へ向かった。
立川駐屯地にはすでに10人のダンジョン特殊部隊員が整列している。隊長の佐伯さんが短く告げてきた。
「今回は訓練だが、本番だと思って動いてくれ。今からヘリに乗る」
その声にぐっと身が引き締まる。
自衛隊のヘリへ――初搭乗だ。
中は俺の想像よりずっと殺風景だった。パイプ椅子のような座席とベルト。壁も金属むき出しのように見える。こんなんで大丈夫なのか?
さすがに作っている途中で放置されたものではないよね?
そう思っているうちに副隊長の藤原さんに案内され、俺たちは2列ある片側の席へ座った。シートベルトもあるが簡単なものだ。ちょっと俺が想像していたものとは違う。これが自衛隊のヘリか。
そして――
轟音が巻き起こった。すぐに凄い揺れが発生、時には細かい振動も起きた。落ちない?大丈夫か?
そう思っているうちに急にふわっと浮いたような感覚が起きる。どうやらヘリが飛び始めたらしい。
近くにある窓から地面が離れていくのが見える。その感覚に俺はつい拳を握りしめてしまった。
「レン、顔が怖いよ。落ち着いて」
ひよりに言われてしまった。
でも仕方ないじゃん。こんなに揺れるとは思わなかった。そして飛び立つときの音がとんでもなくでかい。さすがにちょっと怖い。
やっぱり鉄の塊が浮くとかちょっと想像できないよね。
外の窓を見ると、確かに空を飛んでいるのが見える。
「飛んでる、間違いなく飛んでる……」
俺が緊張しながら外を見た後、他のメンバーを見ると落ち着いたものだった。ひよりもルナも何事もないかのように落ち着いている。
そして使役モンスターのみんなは嬉しそうにしている。ニコニコ顔だ。空をとんでいるのを楽しんでいるかのよう。
どうやら緊張しているのは俺だけのようだ。まずは深呼吸して落ち着こう。俺だけ落ち着きがないのは納得いかないからね。
初の飛行体験が自衛隊ヘリというのは良いのか悪いのか分からないが、無料で乗れていると思えばありがたい……のか?
「凄いな。こんなに揺れるとは思わなかった。音も相当に大きい」俺がそういうと、
「そうね。私も久し振りにヘリに乗ったけど以前、乗った観覧用とは全然違う。音も揺れが大きいからちょっと怖いかも」とひより。
「そうだな。飛行機とは全く違う感覚だ。空を飛んでいるという気持ちになるな」とルナ。
2人にとっても自衛隊のヘリは初めての経験。どうやら思っているよりも揺れも音も大きく感じているようだ。
「到着した後は俺たちは何をしたらいいのかな?」
「ああ、君たちは私と共に隊長の元に集まってくれたらいいよ」と副隊長の藤原さんが教えてくれた。
とりあえず何をすればいいのかは全く分からない。言われた通りにしようと思う。
そんなことを考えていると、およそ1時間ぐらいたっただろうか、振動が大きくなったと思ったらヘリが降りていくのが分かった。
どうやら現地に到着したのだろう。
音が大きくなりちょっとした衝撃が起こった。どうやら完全に着地したらしい。ドアが開いた。
外に出るとヘリは森林地帯を切り開いたような場所に着陸していた。
そこからは各班が持ち場へ散っていく。
情報班はノートPCなどを展開している。見慣れない機械も多い。話によると近くの防犯カメラ映像などを集めるているらしい。こんな森で防犯カメラ?と思ったけど近くの街のものらしい。変な人がいないかなどのチェックをするとのこと。
他にもドローンを上空へ機体を飛ばしそこからの映像も確認。実行部隊は周辺に動き警戒へ。
俺たち8人は隊長と副隊長の近くで指示待ちの状態だ。
「何もしてなくていいのか?」と不安になる。
すると、隊長の佐伯さんが説明した。
「本番では君たちが主戦力だ。まずは情報部隊、実行部隊の展開を進めた。使役モンスターにも一度、移動訓練をしてほしいがいいか?」
「分かりました」
今回はとりあえずラムに通信機を持たせ、
ドローン映像で指示されたポイントへ向かわせた。そこに小動物がいるからそれを見つけるということになる。
頷いたラムの動きはとにかく素早やかった。あっという間に駆け抜けていき、しばらくしてドローンで確認した小動物を確認。特に指示をするまでもなく、探索・接近は問題なく成功していた。
同じようにリン、ロア、ルフ、クーも訓練。全員が軽く小動物を見つけていた。みんな凄いな。
これで訓練は終了と言う感じかな?
そう思っていたら給油車両が到着しヘリに燃料を補給していた。凄いな、現地で給油もするのか……さすがに自衛隊だ。これならばどこにでもすぐに行けそうだ。
給油が終わった後は再びヘリに乗り込み帰還。
再び空を飛ぶときには轟音と振動が巻き起こった。とは言え行きよりはその揺れにも慣れて少しだけ余裕ができた。
これが自衛隊の仕事というものか。さすがに大変な仕事だ。でも俺にとってはいい経験になった。次は本番になるのだろう。
初めてのヘリ搭乗、初めての自衛隊との合同行動、そして初めての“緊急出動訓練”。間違いなく貴重な経験だ。
でも、この次は――
本物のダンジョン氾濫への対応かもしれない。しっかりと心づもりをしておかないといけないと思った。