軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第263話「レンたちが帰った後で」

#第263話「レンたちが帰った後で」

(第三者視点になります)

レンたちと自衛隊特殊部隊の顔合わせは、つつがなく終了した。血気盛んな実行部隊の数名が使役モンスターへ“腕試し”を挑んだが、結果はあまりに一方的だった。全くかなわない。

それも当然だろう。人間ではレベル3のモンスターですら素手では太刀打ちできない。それはダンジョンの氾濫ですでに分かっている事実だ。

今回対峙したレベル5の使役モンスターに敵うはずがないのだ。ただ、分かってはいても目の前の現実はあまりにも衝撃的だった。

顔合わせが終わると朝倉はレンたちを労った。そして彼らは再び恩方ダンジョンに潜るため立川駐屯地を後にした。

レンたちが去った途端、急に静かになった。あまりもの衝撃で誰もが声を発することができなかったのだ。

その静けさを破ったのは高泉首相だった。

「……やはり、たいしたものだったわね」

続いて大泉防衛大臣が頷く。

「映像を見て強いとは思ってはいたが……実際の動きを見ると背筋が凍る思いだな。自衛隊のトップ層ですら全く相手にならないとは。人間が適う相手ではないのは間違いのない事実だ。認めるしかない」

自衛隊幕僚長の高倉も口を開いた。

「首相と大臣から使役モンスターの事実を聞かされたときは、正直“まさか”と思いましたが……今日で完全に理解しました。間違いなく、彼らは日本の切り札になり得るでしょう。自衛隊も全面的な協力を約束します」

三人とも映像では使役モンスターの強さを何度か見ていた。だが、現実の強さは想像を遥かに超えていた。

特にロアが銃弾を“手で掴んだ”場面は、誰にとっても衝撃だった。スピード、反応、力、どれを取っても人間の領域から逸脱している。

しかも本人は特別な動きを見せたわけではない。キャッチボールをしていて飛んできたボールを軽く掴んだような動きでしかなかった。人間では到底真似はできない。

そこでダンジョン特殊部隊の隊長、佐伯悠真が静かに言った。

「……私も同意します。あれほどの存在なら、ダンジョン特殊部隊という部隊が特別に作られるのも納得がいきます。誇りをもって任務に当たります。彼らを補佐し秘密を守るため精一杯、頑張らせていただきます」

その横で、実行部隊のリーダー、岩崎剛が天を仰ぎながらぼやいた。

「俺、完全に引き立て役だったな……いくら相手が強いとは言え、少しぐらいは実力を見せるつもりが微塵も歯が立たなかった」

スナイパーの神谷葵がからかうように笑った。

「確かにね。岩崎さんがあそこまでやられるのは初めて見たよ。対人戦なら日本でもトップクラスのはずなのに、相手が悪すぎたわね。でも、岩崎さんが一方的にやられるのを見てちょっとスッキリしたけど」

「うるせぇ、お前だってライフルでびびらせるつもりが逆にビビってただろ!」

「う、うるさい!変なこと言うな!」

軽口を叩いてはいたが、実行部隊の全員が理解していた。

――自分たち五人が束になっても絶対に勝てない。

勝ち目があるとしたら遠距離から隙を狙って撃つぐらいだろうか?それにしたってレベル3のモンスター以上の耐久力があるならば難しそうだ。隙を突けばもしかしたら1発は当たるかもしれないが2発目以降が当たるとも思えない。

当たり前の話だが近距離で戦うのは全く勝ち目がない。

自衛隊ということで、強い相手が見るとすぐに考えるのはその相手との戦闘だ。

相手の力量を測った上で自分だったらどう戦うか?ということをシミュレーションするのはいつのものこと。

しかし勝てる未来が全く見えない。

すなわち、彼らとは絶対に敵対してはいけない。戦場で見かけたらすぐに逃げるしかない。そんな絶望的な実力差だった。

黒崎陽葵が腕を組んで言った。

「でも……悪くないわね。日本の危機に立ち向かう仕事を任されたって思えば、むしろ誇らしいわ。あれほどの実力があるなら頼もしい限りよ」

事実、多くの国でダンジョン氾濫は深刻化している。まだ日本国民には十分伝わっていないが、危機は目前に迫っていた。

その危機感の共有は自衛隊レベルまでは常識になっており、将来に不安を抱える自衛隊も多かった。黒崎もその一人だ。しかし今日の戦闘を見て希望が持てた。

そして、自衛隊にとしては“日本の切り札”の隣で戦えるのは名誉でもあると感じられた。

――当然、今回の模擬戦は最初から仕組まれていた。

いくら血気盛んな自衛隊の若者でも、トップの命令もなく一般人相手に挑むはずがない。

首相、防衛大臣、幕僚長――全員が、使役モンスターの“真の実力”を自分の目で見たかったのだ。当然のことながら今回の実行部隊の隊長・岩崎が突っかかったのも命令を受けてのものだ。

しかしその結果は想像を遥かに超えていた。

あの強さは、期待以上でもあり、同時に“恐怖”でもあった。

――彼らは絶対に敵に回してはならない。

――だが、日本の未来を託すには最もふさわしい。

その場にいた全員が、同じ結論にたどり着いていた。

そして自衛隊員10名は「自分の任務をしっかりやり遂げよう、彼らの秘密を守り補佐することで日本の危機に対抗する」という共通の想いを描いていた。