軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第244話「会社からの呼び出し(紗月視点)」

#第244話「会社からの呼び出し(紗月視点)」

私、本田さん、そしてリーダーの佐藤くんの三人が、石動さんに呼び出された。

この三人の組み合わせ……嫌な予感しかしない。思い当たるのは一つだけ。司くんの件だ。

先日、アイドルの護衛でテレビに映っていたし、「クラン『エクリプス』のリーダーだ!」とか全国放送で叫んでいたし……。

あれを見たら誰でも頭を抱えるだろう。司くんは何をやっているんだか。

とはいえ、私たちに何ができるのか?私にしたって司くんを最近見かけない。どこにいるのかすらよく分からないのにどうしようもないと思う。

何かとんでもないことを押しつけられそうな気がする。無理だと言って断ることができればいいのだけどね。どんな話なのか、ちょっと怖い。本田さんと佐藤君もちょっと緊張しているように見える。

会議室に入ると、石動さんの横に若い男性が座っていた。誰だろう、初対面だと思う。

スーツが似合う、落ち着いた雰囲気のイケメン。仕事ができそうなタイプだ。きっとお金持ちではないだろうか。こういう人と結婚できればセレブになれそうな気がする。

(……できればこういう人に乗り換えたいな。司くんの彼女扱いは正直きついよ)

そんな想いがよぎったが、すぐに飲み込んだ。やばい、バレたら面倒だ。下手すれば声に出てきそうだからね。

そして自己紹介を聞いて更にびっくりした。彼は鷹見さんという、御影グループの執行役。若手のエースらしい。

すごすぎる肩書きに一瞬背筋が伸びた。性格はどうなのだろうか?女性に優しいタイプなのだろうか……いや、今はそんなことを考えている場合ではないな。まずはしっかりと話を聞かないと。

そして話題はやっぱり司くんのことだった。

「司さんがアイドルの護衛になってテレビ番組で暴れている。あれをなんとかしてほしい」と鷹見さん。

やっぱりね。司くんのことだろうと思ったよ。でも、彼はどこにいるかさえも分からないのよ。私たち3人にどうしろというのかな?

そもそも、別に私たちに頼る話でもないだろうし。

「何とかするってどういうことですか? それは司さんに直接言うべき問題では?」と本田さん。

そうだ、そうだ!私は心の中で本田さんを喝采し応援した。私たちを呼び出すのではなく、司くんを呼び出して直接伝えるべき話だろう。

私たちを呼び出した理由が今一つ読めない。何かが引っかかる話だ。

「それができればいいのだが司さんと連絡が取れないでいる。だから君たち3人を頼ったわけだ」と鷹見さん。

ふーん、会社のお偉いさんでも連絡取れないのか。ならばなおさら理解ができない。私達にどうしろっていうのだろう?どうにも意味が分からない話だ。

そう思っていたら鷹見さんが答えを出してくれた。それは思ってもみない方向だった。

「実は、あの番組に君たち3人を押し込もうと思っている」

えぇ?私たち三人を“司くんの抑え役”として現場に投入するつもり?

でも連絡が取れないとなると……そうするしかないのか?

いや、それ以外にも例えばテレビ局に直接連絡を取るとかいろいろ方法はあると思うけど、どうなのだろう?

そこで、石動さんが説明を継いだ。

「司さんがテレビで『エクリプスのリーダーだ!』とか『御影社長の息子だ!』と連呼してるのはまずい。できれば、それだけでも止めさせて欲しい。特に会社の名前を出して問題を起こされたら困る」

まあ、それは分からないでもない。確かに司くんは問題行動を起こす可能性がある。そこまで自己紹介した後でテレビ番組の中で問題を起こしたら大変だ。

でも何でこの状況になった?

そうか……なんとなく読めてきた気がする。司くんはクビになるって話が出ていたからね。それを察知した司くんがアイドルの護衛に応募したのだろう。

若くてレベルが高いからうまく滑り込めた感じか。そしてテレビでリーダーだと騒ぐことで既成事実化しようとしているのかな。そうなれば会社もクビにしずらいだろう。

全く司くんは困ったものだ。こういう時だけは悪知恵が働くし、行動力もある。それを普段から生かしてくれたらいいのにね。

まあ、ともかく話はおよそ理解できた。今は会社の人でさえも司君と直接連絡を取るのが困難ということなのだろう。司くんはクビを恐れて連絡を取れないように逃げ回っているわけだ。

そして会社側はそのツケを私たちに押しつけようとしているということになる。

ちょっと気に入らない話だな。これは完全に司くんに早く引導を渡さなかった会社のミスだよね。

……とは言え、この話は私にとっては悪くはないんだ。テレビに出ることができれば知名度は上がる。それは"さつきチャンネル"を復活させるチャンスなんだよね。

以前、ルナとのコラボで一瞬だけ再生数が伸びたけど、そのあとは散々だった。でもそれが何とかなるかもしれない。

どう返事したものか?私にとって悪くない話とは言え、あっさり食いつくのも違うと思う。相手が下出に出ている間に何か追加で要求できないかな?

そう思って隣の2人を見ると、特に本田さんは納得いかない表情だった。

「それは会社からの命令なんですか?」

「そうだ。命令だと考えてくれていい」

鷹見さんの短い返事が重かった。

しかし本田さんも負けてはいない。

「司さんに振り回されすぎでは? すぐにクランをクビにして脱退させるべきです」

「それが難しいんだ。今クビにしたら、司さんがSNSで騒いだりして炎上しかねない」

と石動さんが続いた。

なるほどね。ここまできたらクビにしずらいのも分かる。確かにそうだ、今の司くんは全国放送されているから多少なりとも知名度がある。

この状態でクビにしたら司くんがSNSや掲示板で不当にクビにされた!とか騒ぐ可能性はあるだろう。

そして、それを面白がって拡散する人が出てきて大炎上する可能性もある。

そう考えての直接派遣ね。全体像が分かった。

でも私たちが行ったところで、あの自分勝手な司くんを止めることができるとは思えないんだけどな。

本当に困った人だ、司くん……。そして私はどう答えたものか?即決が必要な話だろう。

時間はない。すぐに考えないといけない。頭を働かせよう。