作品タイトル不明
第243話「司という爆弾の処理問題」
#第243話「司という爆弾の処理問題」
御影グループ本社の会議室。御影社長、石動、そして鷹見の三人が集まった。
議題はもちろん——司のことである。
司はクランからクビになりかけていた。そこで大きな勝負に出た。
自分の立場を守るためとは言え自ら動いて道を切り開いたその行動力は凄い。それについては結果が出ておることもあり評価できるかもしれない。もちろん、その行動力を日頃から発揮しろという話ではあるが。
そして、その動きの方向性があまりにも予想外だった。
アイドル「トライ・スピア」の護衛兼レベリング補助で全国デビューとは……。
石動も鷹見も知り合いから聞いてVTRを見て唖然としたのである。
そして大きな問題があった。
司がテレビ全国放送で自分を「クラン『エクリプス』のリーダー」「御影グループ社の息子」と何度も喧伝していることだ。これで護衛に失敗したら、もしくはおかしな行動がテレビ放映されれば会社の名前に傷が付く。それだけは何としてでも避けたかった。
石動が深いため息をついた。
「……すいません。司さんの動きを把握しきれていませんでした。私の責任です」
「仕方ないだろう。勝手に動くのを止めるのは難しい。しかもあの動きを予想するのは困難だ。どうしようもない」
御影社長は石動を擁護した。
しかしその表情には明らかな苦悩が滲んでいた。実の息子だからこそ強く批判しずらい——そもそも自分の教育が間違っていたのが一番悪いのだ。
その辺りの諸事情が問題を更に複雑化させているとも言える。
鷹見が資料を並べて状況を整理する。
「社長の前では言いづらいことではありますが、司さんはこれまでに何度も問題行動を起こしています。さぼりや身勝手な行動など様々です」
「そして、これまでの行動を考えればアイドル護衛でも問題を起こす可能性が高いです。再び問題を起こし最悪の形でテレビ放映されれば、会社の名前に傷がつきかねません」
「クラン・エクリプスがどうなろうと構わんが、会社はまずいな……」
社長の声は重い。会社を守る人間としては当然だ。多くの社員を預かっているのだ。下手すればその家族にまで影響を及ぼす。
「強引に引きずりおろす、という案もありますが……」
と鷹見。
石動も腕を組んだまま続ける。
「しかし、今はネットがある時代です。強権的な動きをしたと喧伝されれば逆効果。“親に潰された可哀想なハンター”などと吹聴されたら、会社が炎上しかねません」
最悪の場合はそうはならないように“圧力”をかけることも考慮する必要もある、と鷹見が囁いたが、その言葉に社長は小さく首を横に振った。
「一番簡単なのは引きずりおろしてあとは脅すなり監禁するなりだな……でも、できれば脅したり監禁するような真似はしたくない。何か別の方法はないか?」
「お目付け役を付けるのはどうでしょうか?」
石動の提案に、鷹見はすぐ反応する。
「レベルの高いハンターは束縛を嫌いますので難しいですね。ただ、“クラン・エクリプス”のメンバーなら呼び出すことはできます。本田、佐藤がレベル4でぎりぎり募集要項にマッチします、そして高嶺(紗月)というレベル3ではありますが司さんの彼女もいます。彼女も女性という立場なので押し込むことは可能と思います」
「ただ、彼らに司さんを抑えられるかどうかとなると……疑問は残りますが」
エクリプス所属の本田と佐藤はレベル4だ。護衛として同行するのはぎりぎり可能。そして紗月もレベル3ながら彼女という立場なので司を動きを牽制するのには最適な立場。
しかし、司を制御できるかとなると話は別だ。今まで通り無理な可能性もある。
だが他に手はなかった。
御影社長は、どこか諦めたように指示を下す。
「……そうだな、それで行こう。本田、佐藤、そして高嶺の3人を護衛にねじ込んでくれ。現状はまだうまく護衛をやっているみたいだからいいが、今後の行動で会社の名に傷が付くのは困る」
クラン「エクリプス」のメンバー3人をアイドル「トライ・スピア」の護衛兼レベリング補助に送り込む。
そしてさらに石動と鷹見が、この3人を通じて司とコンタクトを取る体制を考えた。これで司を制御できればいいのだが。難しいとは思われるがやるしかないだろう。
政府筋からテレビ局に連絡してクラン「エクリプス」のメンバーを送り込むことはおそらく可能。あとはできる限りのことをするだけだ。
「まずは“騒ぎながら討伐するのをやめさせる”ことを最優先にします。彼らにはそう伝えておきます。他にも社長から何か要望があれば伝えておきますが?」
鷹見はそう締めくくった。
御影社長は静かに目を閉じた。
「そうだな、何かあれば都度伝える……ともかく頼んだぞ。問題を起こせば会社どころか国にも迷惑をかけかねん」
こうして、司対策が動き出した。
——果たして、本田・佐藤・紗月の三人に“司という爆弾”を制御できるのか?それは誰にも分からなかった。