軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第241話「司、アイドル護衛デビュー」

#第241話「司、アイドル護衛デビュー」

5人組アイドルユニット「トライ・スピア」のダンジョン活動に、ついに司が加わった。

スタッフや他のハンター陣は「レベル5の即戦力が来た」と喜んでいたが「トライ・スピア」の5人から見れば、司はただの普通の青年に見えた。

だが、その普通さこそが何よりもありがたかった。

というのも、これまで彼女たちをサポートしていた他のハンターは、見た目が怖かったり、言動が粗かったりと、とにかく近寄りがたい雰囲気の人間が多かったのだ。

強さは必要だと頭では分かっている。それでもハンターに慣れていないアイドル5人にとっては、毎回が緊張の連続だった。話するだけでもしんどい。

もちろんテレビ局のスタッフも同行しているがハンター登録したての非戦闘員ばかりで心強いわけでもない。

そのため、5人のメンタル疲労は外から見ているより相当なものだった。

そこへ現れたのが普通の見た目で普通の空気感を持つ青年の司だった。

見た目に怖くない。落ち着いている。話し方も柔らかい。ハンターでないと言われても不思議ではない普通の青年。

「初めまして、レベル5の御影司と言います。クラン『エクリプス』のリーダーやっています。御影グループ社長の息子でもあります」

「「「「「こちらこそ宜しくお願いします!」」」」」

やや自己紹介は自慢しているようにも見え鼻につくところではあるが、それが気にならないほどに、見た目に普通の青年というポイントがとにかく大きかった。

たったそれだけのことで、「トライ・スピア」の5人は心の底からほっと息をついた。それだけ新しい護衛メンバーがどんな人なのか心配していたのである。

「司さんって新しく入った人、良い人そうで助かったね」

「うん。あんな普通の人が護衛ならなんとか頑張れそう!」

「普通の人に見えてレベル5ならば凄く強いのよね」

なんと、あの司が100点満点の評価を受けているのだ。司のことを知っている人間からしたら大笑いしそうなものだが5人はそんなことを知るよしもない。

その後、司の役割はすぐに決まった。

5人に最も近い距離で、前方・左右の安全を守る護衛担当である。「トライ・スピア」の5人には常に近いところに怖いハンターがいて心が落ち着かなかったが少なくともモンスターが出現するまでは司だけが近くにいるということで落ち着くことができた。

役割も明確だ。

モンスターが出現したら他のレベル4・レベル5ハンターがモンスターを弱らせる。その間に司が「トライ・スピア」の方向へ敵が流れてこないかを常にチェックする。

もしモンスターが逸れてきたら、真っ先に司が受け止め、5人を守るという形だ。これが複数モンスターであればレベルのわりに強さが足りない司も苦労するのだが単体ならば何とかなる。

司が華麗にモンスターを退ける姿を見て「トライ・スピア」はほっとした。

そして敵が十分に弱った段階で「トライ・スピア」リーダーの白石みことが最後の一撃トドメを担当し経験値をもらう。

司はその時も周囲を見渡し攻撃が5人に飛ばないように万全の護衛に徹した。一応は腐ってもレベル5、やればできるのである。

正直、レベリング効率だけを考えるなら司が必要かどうかは微妙なところだ。本来であれば、彼がいなくても他のサポートハンターで十分足りるだろう。

だが——

「精神的な安心材料」という点では司の存在は圧倒的、絶大な存在だった。

緊張で肩に力が入っていた5人が、司の加入後はリラックスし始めたのが明らか。

結果として集中力も上がり、討伐のリズムも良くなりレベリング効率まで向上するという意外な副効果まで出た。

「司さん、優しかったね」

「今日は全然怖くなかった……」

「護衛が安心だと、こんなに違うんだ……」

こうして、アイドル5人からの信頼を最初からしっかり掴んでしまう司。

当然、テレビ局スタッフも司の価値に気づいた。

「彼、いいじゃないか。画面に映しても問題なさそうだ」

「ファンにも受けると思うぞ。守ってくれる“優しいお兄さん”ポジションだ。他のハンターだと画面移りが心配だったが彼なら全く問題がない」

スタッフの間でも好意的な声が上がり担当ディレクターはすでに、司をも全面に押し出す絵コンテを描き始めていた。

——これは使える。

そう判断したのだ。

そしてついに、番組サイドの英断が下される。

「司くん、次の収録……君の画像も使わせてもらっていいかな?」

「俺がテレビに出るということですか?」

「そういうことになるね」

「はい。全く問題ありません。是非!」

司の思う通りの状況になった。計算通り、ある意味で司は天才なのかもしれない。

そうして司の全国デビューはもうそこまで来ていた。

だが、そのデビューが“喜び”となるのか、それとも“さらなる混乱”を招くのか——

この時点では、誰一人として想像していなかった。