軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第240話「アイドルの頑張り」

#第240話「アイドルの頑張り」

ダンジョン浅層のモンスターを定期的に討伐し、エネルギー値を管理すれば氾濫は防げる――これまで常識とされてきた法則が崩れた。

横須賀ダンジョン、陣馬高原ダンジョンと立て続けに一階層~三階層の氾濫した。こうなれば他のダンジョンも危うい。

こうして立て続けに起きたモンスターの氾濫を受け、政府は全ダンジョンの常時監視に踏み切った。

都市部では一階層〜三階層を24時間体制で監視。緊急度を下げている地方では人手不足もあって夜間のみの監視だ。

いずれにせよ、ハンターが圧倒的に足りないのは誰が見ても明らかだった。特に三階層を任せることができるレベル4以上が不足しているのだ。

レベル4以上は人数がもともと少ないのに加えて、そのレベル帯の人間は更に上を目指している人間が多いからだ。いくら安定したお金がもらえるとは言え暇な監視員などやってられない。

そこで政府は、ハンターを増やすためにこれまでにない大規模キャンペーンを打ち出した。

アイドルやタレントを起用した「ハンター憧れ職キャンペーン」。

朝の情報番組ではハンターを絶賛する特集が組まれ、CMにはハンター募集広告が連日流れ始めた。

その中心にいたのが――

5人組アイドルユニット「トライ・スピア」 。

大所帯アイドルグループJPGP69の中でも中位以下に埋もれて知名度が低い彼女たちだが、ハンター募集のために朝の情報番組やCMに呼ばれ知名度が少しずつ上がっていった。

更にはドキュメンタリー番組で「日本を守るために涙を流しながらハンターになって頑張る姿」が放送されると状況が大きく変わった。

高レベルハンターの護衛付きとはいえ、

必死についていき、ついに全員が レベル2 に到達。

「体力もない女の子が日本のためにここまでやるのに、男どもは何をしている?」

そんな世論まで生まれ、ハンター希望者は急増した。

その動きは男性だけでなかった。彼女たちに憧れた女性たちも続々とハンター登録を行った。その波に乗ろうと他のアイドル、地下アイドル、ユーチューバーにも広がった。

アイドル、地下アイドル、ユーチューバーは自分も売り出したいという下心があったのは当然だが、知名度が高い人間が更に集まったことが大きかった。

そうして日本全体が、ハンター活動を後押しする空気に包まれていった。

しかし――

光の裏には必ず影がある。

トライ・スピアの五人は確かに先頭を走っている。

だが、それでもまだ レベル2だ。

ハンター業界の知識が増えるにつれ、

「このままではダメだ」と強く感じるようになっていた。レベル2はちょっと強い程度。この程度ならば悪く言えば誰にでもなれる。

他のアイドルたちもハンター登録している現状から考えてすぐに追いついてくるだろう。

当然のことながら自分たちの優位性はそれほどない。それどころか身体能力にも優れているアイドルが参入してきたら簡単に逆転される可能性もある。

そうなればアイドル兼ハンターという優位性も埋もれてしまうだろう。すでにそういった傾向が見えている。今はまだいいが抜かれてしまったら大変だ。

目標はまずはレベル3。できればレベル4 へ。

そうでなければ、番組も活動も先に繋がらないかもしれない。もう売れない時代には戻りたくない。

そのため、仕事の合間に関東周辺の簡単なダンジョンを巡り高レベルハンターの護衛のもとで必死にレベリングに励んだ。

だが――問題があった。

護衛兼レベリング補助として来る高レベルハンターは……強いがゆえに 個性が濃く、怖いタイプが多い。

筋骨隆々、声が大きい、態度が粗い。

中には「トライ・スピア?聞いたことねぇな! なんでこいつらの子守を俺がしなければいけねえんだ!」と堂々と言う者までいる。実績のためにと企業系クランから送られてきたメンバーは細かい事情を知らないケースも多く平然と文句を言ってくる。

男性から見ても高レベルハンターは怖い人間が多い。アイドルにとっては、モンスターより恐ろしく見える時もあるほどだった。

モンスターと戦うだけでもしんどいのにハンターとの関係性も今一つ、精神的にかなり消耗しているのはスタッフから見ても明らかでテレビ局側も心配し、護衛ハンターの募集を更にかけることになった。

とはいえ予算は限られている。

優秀な高レベルハンターに頼むのは難しい。政府に連絡してなんとか補助金を回してもらい、ギリギリのところで継続している状態だった。

そんな中――

ひとつの応募が入った。

若い男性。見た目は柔らかく、とりあえず怖くない。

しかもレベル5の有望株。

スタッフは目を疑った。

「……ハンター業界にこんな若手人材もいるんだ」

「嘘じゃないよな? レベル5ならかなり強いんだろ?」

「ハンターは怖い人間ばかりだけど、この人が近くに1人いるだけで和らぐ可能性があるな」

期待と驚きが交錯する中、採用が決まった。

その男の名は――御影司。

クラン『エクリプス』所属でレベル5。

業界に詳しい人間なら知っていたかもしれないが、採用募集をかけたテレビ局の人間はいなかった。

そしてすでにクラン『エクリプス』からのクビが決まっていた人間でもある。

彼を巡ってどんな未来が待っているかはこの時まだ誰も知らなかった。