作品タイトル不明
第237話「ダンジョンの意思」
#第237話「ダンジョンの意思」
黒澤さん、エリナさんを交えた打ち合わせを終え、俺たちはいつものように自分たちだけのミーティングを行った。
まずは気合いを入れ直した。とにかく頑張るしかない。期待されているということをひしひしと感じたからね。
また、ひよりからはおもしろい話が出てきた。何か新しい裏技はないか?というものだ。
俺が使った裏技はとてつもなく大変でかなり時間がかかった。でも俺のような凡人がダンジョン攻略を進めるにはそれが遠道のようで近道であった可能性が高い。
もちろんルナのような強者はやる必要がないが俺のような凡人は地道に力を付けた方がいい。そのご褒美に金箱があるというのは本当にありがたかったがそれは合理的とも言えた。
そんな裏技が他にもあるかもしれない。ただし俺達にはそれを調べる余裕はない。そこで裏技的なところは透子さんにお願いした。
その流れの中で、今度はルナが腕を組んで考え込むように言った。
「……ダンジョンの意思って、どこにあるんだろうな?」
どういう意味だ?と突拍子もない言葉に不思議に感じたがその話は聞けば聞くほど興味深かった。
「ゲームならばダンジョンコアを壊したらクリアとかがあるよな。それは“運営側がこういう設定してます”で説明できる。でも現実のダンジョンは……何か最終的な設定もしくは意思があるのか?」
ルナは続けた。
「モンスターが生まれ、宝箱が生成されている。レベルアップの概念もある。そこには、ダンジョンもしくはダンジョンを作った人間の最終的な目標もしくはがあるのでは?」
確かにそうだ。そういったものがあっても不思議ではない。
「それに……ダンジョンにも寿命があったりして、“枯れていく”ようなことがあるのかもしれないね。ダンジョンは生きているようにも見える。そう考えると宇宙からのダンジョンという新生物が人類との共存共栄を最終目的にしているのかも?」
ひよりが真剣に考えながら付け加えた。
今までそんなことを考えたことはなかった。
でも、もしダンジョンの成り立ちや仕組み、もしくは意思のようなものが解明されれば、攻略の大きなヒントになる可能性もある。
もしかしたらゲームのようにダンジョンを開発した宇宙人のような存在がいるのかもしれない。もしくはコミュニケーションはとれないけどダンジョンも生きていて意思があるのかも?
あとは怖い話だけど宇宙人の地球侵略のためにダンジョンが送られてきたとかSFではありそうだ。なんとも壮大な話だけど、そういう何らかの想定をして証明することができれば攻略もはかどるかもしれない。
「じゃあ、俺が一階層〜三階層で使ってた裏技はどう考えるべきなんだろうか?」
俺は自然と口に出していた。
自分と同レベル以下のモンスターを1万体倒すと金箱が出る――あの裏技だ。他の人から見ればとにかく非効率だったが地道に実力を身に着けることができたしそのご褒美として金箱が出たのはありがたかった。ゲームの知識が役にたった。
「あれはゲームでいうところのチュートリアルみたいなものか?とは言え解説も何もないけどな」
俺はそう感じてつい言葉にした。
「そうだな。普通の人はレベル2やレベル3に上げる最初の壁で心が折れる。ダンジョンに挑もうなんてしない。だからゲームのチュートリアルのようにダンジョンについて知るため、そしてスムーズに進めるためにそういう仕組みが働いたという可能性はあるな。ただチュートリアルというには、とんでもなく長くしんどいチュートリアルだが」とルナが笑いながら言う。
「俺のような初心者タイプには必要な設定だったということかな?一方でルナのような強者には……ゲームに例えれば、ゲームの達人には必要のない設定」
「でもレベリングでそれを突破する動きが出てきたよな。そして躓く人間も多い。これはダンジョンにとっては想定外なのか?それとも……ずるしても最終的にはうまくいかないというダンジョンからの警告か?」とルナは続けた。
ルナの話はおもしろい。現実にレベリングで一気に強くなった人間は後から伸び悩む傾向にある。一方で、俺は少しずつ積み上げてきたことで、安定して進めてこられた。その歩みは遅いかもしれないけど実力は間違いなく上がってきたからね。
きちんとチュートリアルをクリアしたと認めてもらっているのかもしれない。まああくまでも仮定にすぎない。そして証明する方法は現時点では何もないんだけどね。
そこでふと俺はラム、リン、ルナ、ルフ、クーの方を向いた。そう言えば彼女たちはダンジョンから産まれている。ダンジョンから見たら子供のようなもの?それともどのような位置付けなのだろう。
「ラム、リン、ルナ、ルフ、クー、みんなに聞きたいんだけどダンジョンの意思とか設定とか何か分からないかな?想定でもいい」
俺はつい彼女たちにも聞いてみたくなった。よく考えたら、その辺りを一番知っているのは彼女たちなのかもしれないのだ。人間視点ではなく、モンスター視点で何かを知っているかもしれない。
そして彼女たちの回答も興味深いものだった。