軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第236話「深層へ進む者として」

#第236話「深層へ進む者として」

黒澤さん、エリナさんを交えた打ち合わせを終え、俺たちはマンションの上層階からエレベーターで降り自分たちの部屋へ戻った。すると、すでに部屋の中で透子さんが待っていた。もう住人のようなものなんだよね。

それにしてもしまった、透子さんも一緒に話を聞いてもらった方が良かったかな?

とりあえず一服。

だけど、頭の中がまだ整理しきれていない。

――あまりにも凄い話を聞いたので、正直少し放心していた。

「これは気合いを入れないとな」

ルナが静かに言った。

その声には強い覚悟がにじんでいる。俺とひよりも頷いた。

気合いを入れなければいけないのは間違いない。

黒澤さんもエリナさんも、“日本を守るために” 深層攻略を諦めた人たちだった。

本当はもっと深くまで潜りたい気持ちを今でも持っているらしい。

でも、その頃と同じ最強レベルの仲間を再び揃えるのは難しいだろう。後進の育成をしているとはいえ、そこまでの強さにするのは大変なことだ。中には独立していく人もいるだろう。この二人はそういった人を止めるようなことはしない。

深層攻略で一番簡単なのは昔のメンバーが再び集結すればいいのだろうが、今の立場がそれを許さないだろう。自分の夢を日本の未来のために諦めた人たち。そして今なおも日本のために働いている。

そんな人たちが、俺たちをバックアップしてくれる。俺たちは、日本の安全だとか政治的な事情を気にする必要はほとんどない。

何も考えずに、ただ純粋に深層攻略を目指せばいいだけだ。

……本当に恵まれていると思う。

周りが完璧におぜん立てしてくれている状況と言える。

もちろん、ダンジョン氾濫が起きれば動く必要はある。

でも、普段は深層の攻略に専念していいのは凄く大きい。

黒澤さんやエリナさんにどこか申し訳ない気持ちもあるのが事実だ。

だけど――そんなことを言って立ち止まっても仕方がない。それこそ二人に怒られそうだ。

俺たちのやるべきことはひとつだ。期待に応えること。少しでも早く先に進むこと。

五階層の攻略、その先の六階層、レベルアップ。どれも緊急の課題だ。

「とりあえず今まで通り進めるとして、何か新しくすべきことはあるかな?」

俺がぽつりと言うと、透子さんが横で手を挙げた。

「あるよ! 使役モンスターを増やすのはどう? レンは無理だけど、ルナとひよりならまだ枠が空いてるよね!研究データ的にも超ありがたいし!」

確かに、一理ある。使役モンスターが増えれば深層の攻略はぐんと楽になるだろう。

でもルナは即座に首を横に振った。

「それは――今は駄目だな。使役モンスターを育てる余裕がない。深層攻略が最優先だ」

ルナの言う通りだ。使役モンスターの育成には莫大な時間がかかる。俺の時と同じような育成ならば、それこそ数年単位の話になる。

攻略するのに人数が足りなくて使役モンスターを育てるというならば一理あるが、足りている今、そこに時間を割くのは得策ではない。

そもそも育つ確証もない。

俺の使役モンスターと同じように育たなかったら時間を無駄にしただけになる。そうなったら目も当てられない。

「人数が足りなくなるなら別だが、五階層の攻略なら当面は今の8人で十分だ。今は“速度”を落とすべきじゃない」とルナ。

「……そう、だよね。うん、わかってたけど……わかってるけど……」

透子さんは肩を落とした。

研究対象を増やせるまたとないチャンスだと思ったのだろう。

気持ちはわかる。

俺だって、いずれは増やしたいと思っている。研究が進み、使役モンスターの育て方が確立すれば日本の防衛、ひいては世界の防衛にも繋がる可能性がある。

ダンジョンの外で戦える使役モンスターが増えれば心強いからね。

「余裕が出てきたら、改めて考えるよ。だからもう今は待ってね」

「……約束だよ?」

透子さんはすぐに表情を戻し笑った。そして俺は次にひよりに確認した。

「ひよりは何かあるか?」

「私は何も思いつかないな、でも……」

「でも?」

「レンはダンジョンを裏技的な方法で進んだよね。それが凄く面倒で大変、かなりの遠回りのようで……実は近道だったと思うの。だからそういった裏技って他にはないのかなって気になったんだ」

「それは考えなかったな。先を見るので精一杯だった」

――裏技。何か簡単に確認することがあればやってみる価値はあるかもしれない。

でも現時点で思いつくことは特にない。

「ダンジョンはゲームに近い設定があるって話だったでしょ。ゲームに詳しいレンやルナなら何か知っているかと思って」

「ルナ、何か思いつくことあるかな?俺は特にないのだけど」

「私も特に思いつくことはないな。でもその筋で考えていくのは一理あるかもしれない。いろいろなダンジョン関連ゲームについて調べ裏技を研究するとかかな? ただそれも私達が調べるのは効率的ではないな」

そうだよな。俺達は普段はダンジョンに潜っているので調べる時間はそれほどない。

「そういう話なら任せて欲しい。ただしあまり期待はしないでね」と隣から透子さんが再び割り込んできた。

「それは助かります。宜しくお願いします!」

裏技的なことは透子さんに任せるのが一番いいだろう。

チームとして頑張っていければいいと思う。

何か良さそうなものがあれば透子さんの方で検証してもらい教えてもらうことにした。まあ、裏技なんてそんなにないだろうしあまりあてにはできないけどね。