作品タイトル不明
第234話「黒澤さんとの打ち合わせ」
#第234話「黒澤さんとの打ち合わせ」
俺たちはエリナさんのオフィスに集まっていた。
黒澤さんにも俺たちの“秘密”を伝えたということで、黒澤さんに使役モンスターの顔合わせ、ならびに情報のすり合わせをしておこうということだ。
今日そろったのは、俺たち8人(レン・ひより・ルナ+使役モンスター5体)、そしてエリナさん、黒澤さん。
このメンバーで集まったのは初めてだな。そもそもエリナさんと黒澤さんと一緒に会うのは初めてかもしれない。いつもの訓練とはまた違う、少し引き締まった空気があった。
「レン。俺も秘密を聞いた。……だからこそ、これからはお前たちを守る側に回る。全面的にバックアップするつもりだ。何か要望があれば何でも言って欲しい。」
黒澤さんはそう言って、真剣な目でこちらを見てきた。
「ありがとうございます。今のところ特にないですが今後出てくるかもしれません。その時にはよろしくお願いします」
いつもとはやや違う黒澤さんの真剣な言葉。俺も自然と背筋が伸びた。
すると黒澤さんが、ポケットからコインを取り出した。
「そこの五人娘は使役モンスターなんだよな。映像は見た。けどな……こういうのは自分の目で確かめないと半信半疑でな。少しだけ試させてくれ」
そう言って、コインを五人の方に軽く放る。
それを受け取ったのは中央付近にいたロアだった。
まあ実際に目で見ないと人間離れしている力があると言われても信用できないよね。そこで俺はロアに伝えた。
「ロア、そのコイン、加減なしで壊してくれ」
「わかった!」
ロアは無邪気な声で答え、親指と人差し指で軽くコインを挟んだ。
――パキン。
小気味よい音を立てて、コインが真っ二つに割れた。
いつ見てもびっくりだ。曲がるならばあり得るけど何で割れる?
「……はぁ、マジかよ。本当にあり得ない力だな。もう信じるしかねぇな」
黒澤さんは頭をかきながら苦笑した。
まあ、俺だって見ててもどこか信じられなかったくらいだし、見てない人に“信じろ”という方が無理だよね。実際に見てもらった方がいい。
その後、今後の動きについて話をした。
「とりあえず俺のクラン『暁の牙』は恩方ダンジョンと陣馬高原ダンジョンには近づかないようにする。俺以外のメンバーでも邪魔になるだろうからな。それでいいか?」
「ありがとうございます。助かります」
「あと何かあればすぐに連絡しろ。俺たちにできることがあればすぐに対応する。深層攻略の手伝いも考えてたが……それはやめておく。動画を見る限りは俺が入る方がむしろ邪魔になるだろう」
エリナさんが横でうなずいた。
「ええ。レンたちの戦いは少し特殊だから、外部は極力入れない方がいいわ。連携だけ見れば日本でもトップクラス。そこに私たちが変に混じらない方がいいわね」
「それ以外にも有用と思われる情報が入ってきたらなるべく連絡させてもらう。逆に何か必要な情報があれば言ってくれ。分かる範囲で回答するし、分からないことならば調べてみる」と黒澤さん。
「分かりました。何かあれば相談させていただきます」と俺は答えた。
凄く気を使ってもらってありがたい。ただ、今すぐに何か必要かと言えば思いつかない。そこで俺は黒澤さんやエリナさんのこれまでのダンジョン攻略について聞いた。
2人が一階層~七階層までどうやって戦ってきたのか?その辺りの情報を知ることができれば何か参考にできるかもしれない。
それから話題は “ダンジョン発現初期” に移っていった。
「当時はな、ルナみたいなソロの強者がいっぱいいたんだよ」と黒澤さんが懐かしむように語り始めた。
「そうね、最初はみんな一人で潜ってたわね。……けど、深層は一人じゃ無理。それでポツポツと協力するようになったのよね。それから一緒に攻略するメンバーが増えていった」とエリナさんも同じように語り始めた。
昔はルナのようなすごい人がたくさんいたらしい。でもルナでさえ五階層をソロで進むのはきつい。
昔は強い人が多かったがそれでもソロで深層には挑むには限界があったのだろう。一度でも失敗したら、最悪の場合は死んでしまって終わりだからな。どうしても難しい階層では慎重になる。
「で、深層攻略を目指すために当時のトップクラスが十五人集まったんだ。その中に俺とエリナもいたわけだ」と黒澤さん。
「そうね。それが今でいうクランの始まりだったわね。私たちは最強の十五人と言われたけど、その他の人間たちも私たちと同じように、同じレベルぐらいの人間が集まりクランを作り始めたのよ」とエリナさんが続けた。
なるほど――それがダンジョン発生初期だったんだ。ルナのような化け物がゴロゴロしていたとか凄いな。
でも日本は広い。ルナのような強者が十五人ぐらいいても特に不思議はないか。そしてみんな最初はルナと同じようにソロで深層を目指したけど限界を感じて強者が集まって更に先を目指したんだな。
それが波及してクランを作るのが当たり前になっていったんだ。初期の頃は政府の取りまとめとかもなく情報もなく、今と比べて大変だったことだろう。俺は研修を受けたけどそうったものもなかっただろうからな。
俺は自然と頭が下がる思いがした。
先人がそうやって道を作ってくれたからこそ、俺なんかの素人でもハンターとして活動できたんだ。
しかし、その十五人の中で問題が起きたらしい。黒澤さんがその頃を思い出すかのように更に続けた。
「七階層に到達して何人かがレベル7になった頃だ。大きな問題が起きていた。地方の浅層に潜る人間が一気に減っちまったんだ。バラバラだった人間たちが集まってしまったからな。どうしても地方が手薄になる」
「そうね。当時は今と違ってハンター人口が1万人ぐらいしかいなかったの。だから多くの人間がクランを形成することで特定のダンジョンにに集中するようになってしまったのよね」
2人は当時の問題を語り始めた。そうか、今やハンター人口100万人以上と言われているけど、当時は1万人ぐらいしかいなかったのか。
そしてその多くがクランを組んで特定のダンジョンに行くようになった。そうするとどうしても手薄になるダンジョンが出てくることだろう。
「もしかして、それで氾濫が……」
そう言う俺に黒澤さんとエリナさんが頷いた。