作品タイトル不明
第233話「ダンジョン発現中期― 安定と停滞へ」
#第233話「ダンジョン発現中期― 安定と停滞へ」
ダンジョン発現初期は強者が台頭する時期であった。ハンター人口は1万人程度と少なかったもののその平均的実力、意識レベルは今とは比べ物にならないぐらい高い状況だった。
その中でも選りすぐりの人間たちが集い、更に深層を目指した。七階層、八階層まで討伐が進んだ。全員が更なる深層へと夢を持っていた。そこまでいけば世界のトップも夢ではないと感じていた。
しかしそこで問題が発生した。“地方の浅層”を担当する人材が一気に不足したのだ。
そして夢を持った精鋭の中でも意見が分かれ、最終的には分裂した。
やはりなんだかんだ言っても誰かがダンジョンの浅層を管理し日本を守る必要がある、ということで地方を回ったり後輩育成を重視する正義感の強い人間の方が多かった。
自分の夢よりも日本を守ることを選ぶ人間たちだ。その中には黒澤やエリナもいた。
更にその内部でも方向性が分かれた。
企業と組み資金力で大規模育成を進める派。草の根的に一般ハンターを地道に集めて育成する派。
中にはその対立に嫌気がさして完全に実質的な引退を選ぶものもいた。
どちらにしろ、多くの精鋭が集まらないと深層の討伐は進まない。分裂したことで日本の深層討伐は七階層、最大でも八階層でほぼ止まる状況となった。
その後はクランの分裂や統合などを繰り返した。黒澤とエリナは当初こそは企業系クランにいたが、その利益追求型で人を大事にしない方針などに嫌気がさし離脱。
それでも最終的な結果としてはお金と人が集まりやすい企業系が台頭していった。
国もハンター人数が少ないことで浅層討伐ができなくなったことに危機感を覚えハンター育成制度を創設、補助金を投入したこともあり、その企業系台頭の状況を後押しした。
ハンターが増えると同時に強者に必須の宝箱が足りなくなった。大量の武具が必要になったからだ。ダンジョン内で発見される宝箱が高値で安定して売れるようになり企業系はそれを率先して狙うようになった。更に企業系に権力、金が集中するように。
そのうちにレベリングでの育成が当たり前となり企業系が有望なハンターをほぼ独占するような形にもなった。もちろん草クランも頑張ってはいたが差は歴然だった。
企業系が台頭したことで目に見えない様々な弊害も出た。圧倒的な個の強さを持つ人間もまだいたのだが、システムに組み込まれたことでダンジョン発現初期の人間ほどの無茶をしないお利口さんになった。ルナのように自分1人で深層を目指すようなことをしないのだ。そうして有望な新人もその他大勢とあまり変わらない状況になった。せっかくの個の強さが組織に埋もれるように。
逆に管理の行き届かない草クランに入った人間やクランに入らない人間は実力がないのに無茶をした。最悪死に至るものも。
人数が増えたことでハンター全体としての戦力は上がったかもしれないが急成長する人間も少なくなりレベル6、7になる人数の割合は急激に減った、更には犠牲者も多くなりと問題が増え微妙な状況になりつつあった。
更に政治や金が複雑に絡んでいく。本来は改善すべきところが多いのに、その趣旨から大きく外れ、ただただ企業系が有利になるような法改正などが進んだ。純粋な善意だけでは人は動かなくなっていった。
そうして“ハンターはダンジョン発現初期に比べると危険が少なく、その一方で成功すれば莫大な金額が稼げる夢のある仕事” として世の中に浸透定着し、気づけばハンター人口は一気に百万規模へと膨れ上がったのである。
現実にはレベルを上げることができそうな有望な人間のほとんどは企業系に入り、そこからあぶれた人間は草クランでなんとかやっているのが現実だから全く甘い世界ではないのだが。
そりゃそうだろう。野球に例えれば空き時間に草野球している人間がプロになれるはずもない。もともとの実力も、その後に蓄積している継続した努力も全く違うのだ。
また企業系に入った突出したプロと呼ばれる人間でさえも最初の野心は薄れお利口さんになった。お金儲けに走り深層の討伐はなかなか進まななった。
深層の討伐が進まなくなったのはかつて精鋭と呼ばれた人間たちが後進の育成や企業契約のしばりで集まることはほぼ不可能になったという事情もある。
――それがダンジョン発現から三年以上が過ぎた頃の話だ。レンがハンターになった頃でもある。
レンはその企業系クラン、草クランのどちらにも属さないケースだ。その場合はほとんどがレベル1、良くてもレベル2程度で断念する。危険なのに全く儲からないからだ。夢を持っている人間もあきらめるのが実情。
そのためレンがその後にレベル5にまでなったのは極めて珍しいケースと言える。
この頃がダンジョン発現中期と言えるだろうか。
そして現在。
レンがハンターになって更におよそ三年が経った。
状況が再び変わっている。一階層から三階層の浅層を定期的に討伐しエネルギー値を下げても氾濫が起きるようになったのだ。
もはや従来の理屈が通用しない。ダンジョン一階層から三階層の浅層の常時監視が必要。そのためにはレベル4以上の人材が多数必要。
そこで政府はレベル4以上の増加を急ぎダンジョン常時監視員の育成のために大規模な追加施策を打ち出している。
現実的にそれ以外の対策が思いつかないからだ。
そうして再びハンターが増えることになる。新しい時代、後にダンジョン発現後期と言える時代に入ろうとしていた。
だがそれらの動きが最善かどうか――
判断できる者は誰一人としていなかった。言えるのはいつの時代でもダンジョンの脅威が目の前にあり動かざる得なかったということだけだ。そこに金や思惑も絡んで時にはおかしな方向に進んで行く。
ダンジョン発現初期の混乱から始まった“選択の歴史”はいま再び新たな岐路に差し掛かっていた。
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以上、ダンジョン発現初期から中期のお話をここに混ぜ込みました。何でこんな肝心な話を今まで入れなかったのだ!と怒られそうですがお許しいただければ幸い。
感想などで「レンがハンターになった頃になんで黒澤やエリナらレベル7の人間が存在するの?最初の頃の方がレベリングもなく大変なはずなのに圧倒的にその人達の方がレベルアップ早いじゃん、おかしいよ!」とか矛盾点を突っ込まれて、確かにあれれおかしいな?ということで頭をひねり直して作った話ということは、ここだけの内緒にしていただければ幸い。もしかしたら更なる新たな矛盾を作った可能性もあるかもしれません。以上、裏話でした。
(他の小説や漫画、アニメなどで途中で急に初期の頃の話が出てきたらそういった推理を働かせるとおもしろいかもよ?と私の小説作成レベルの低さをごまかすために論点ずらしもしてみた!)