軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第231話「司の悪あがき」

#第231話「司の悪あがき」

石動は司が新宿ダンジョンの一階層、二階層の常時監視として働いているメンバーの一部をサボらせているという情報を入手した。

さすがにこれは許さないとして即座に動いた。司にそそのかされサボっていたメンバーには全員会社を辞めてもらうという通告をした。

絶望に崩れるメンバー達。それを見て石動は一度だけは許すとして伝えた。

「最後にもう一度だけチャンスをあげます……」

首の皮一枚ぎりぎりで繋がったメンバー達。そして本当の意味で司の言うことを聞いてはいけないと理解した。

どうしてもそれまでは「社長の息子だから」ということで迷うこともあり、そして時にはサボリ仲間になってしまったのだが、そういったことはもう絶対に許されないということだ。

次はもうない。司と共にサボっていたメンバーはそれを叩きつけられた。

石動としてはこれで確実に念を押したつもりだ。だからこそサボっていたメンバー達を元の持ち場に戻した。

彼らもさすがに再び司の誘いには乗らないだろうとの判断だ。もちろん次はない。今度は一度でもサボったら次はすぐにクビにするだけだ。

そしてもう1つ肝心な仕事が残っている。残るは──司本人に最後通告を出す必要がある。こちらは温情は全く必要ない。クビ一択だ。

一方その頃、今日も司はお気楽に“サボり仲間”のところへ顔を出していた。また遊びに連れて行く予定だった。

だが──

「悪い司くん。今日からは無理だ。ていうか……もう俺たちを誘わない方がいいぞ。全て石動さんにばれてた。そして完全に怒ってる。司くんをクビに、クランから追放するって言っていたぞ。早く謝りに行った方がいいって」

「は? 俺がクビ、追放? ありえねーだろ。ってか誰がチクったんだよ!」大声で怒り狂う司。

「そんなの分かんないよ。でも早くしないと本当に追放されるかもしれないよ」

「ふん、そんなことが石動にできるはずないだろうに」

司は鼻で笑ったが、心のどこかに不安がよぎった。

父親がクランの全権限を石動に譲ったのは知っている。それは父親から直接言われたことだ。石動の言うことを聞くようにと直接通告されたことを思い出した。

つまり──

石動が“クビ”と言えば、司は本当にクビになるのだ。権限の序列的に間違いのない事実。

「ふ、ふざけんなよ……! なんで俺が育てたクランなのに石動に勝手に追放されなきゃいけねーんだ!」

司は焦り、苛立った。そして追い詰められた。

とうとう石動からの呼び出しの連絡があったのだ。この呼び出しに応じて石動のところにいけばクビを通告される可能性が高い。

ならばどうする?再びコロナ仮病を使うか?いや、それも無理だ。行かなくても書類でクビを通告されるだけだろう。それでは全く意味がない。

何か手はないか?

そのとき──求人の一件を思い出した。おもしろそうな仕事だと思ってパソコンのブックマークにいれていたやつだ。

『アイドルの護衛兼レベリングスタッフ募集、レベル4以上必須でレベル5以上は大歓迎』

司の脳内で、都合のいい計画が電撃のように走った。

「……これだ!俺が有名アイドルの護衛をすれば、クラン『エクリプス』の看板を背負って仕事をしているってことになる。アイドルなら場合によってはテレビで全国放送されるかもしれない。そこで、俺がクラン『エクリプス』のリーダーだ!って紹介されればいい。そうなれば“クランの顔”をクビにするなんてできないだろ!さすが俺だ、頭脳明晰!これでいこう!」

司はそのアイドル護衛の仕事に即座に応募した。

そして、石動からの呼び出し通知は完全に無視した。これから逆転劇を始めるのに石動の呼び出しなど構っていられない。

そして運が良いのか悪いのか?司はその護衛任務の一次審査に簡単に通った。やはりなんだかんだ言ってもレベル5というのは大きい。レベル4よりも信頼される。

そして履歴書に書いたクラン『エクリプス』のリーダーというのも、更には御影グループ社長の息子という肩書も大きかった。

普段の司の行動を知っていれば絶対に採用されなかっただろう。

しかし何も知らないテレビ局のスタッフたち。

更には、司はいかつい他のハンターよりも見た目は真面目そうな若い青年でアイドルにも受けがいいだろうと思えた、しかも有名な御影グループの息子でありレベル5。

良いのか悪いのか……スタッフ側の思惑にピタリと嵌まっていた司はそのまま面接で採用が通ってしまった。

「さすが俺だ。見る目がある人間には分かるんだ、すぐに採用されたぜ。悪いが石動の呼び出しには応じられない。俺は忙しいんでね。アイドル護衛という“重要任務”があるんだよ」

司はそう言い残し、勝手に新たな仕事へ向かった。

まるで、自分がまだクランの中心人物であるかのように。

――石動の怒りが軽く限界を迎えていることも考えずに。

この最後の悪あがきが成功するのか?司は再びクラン『エクリプス』のリーダに戻ることができるのか?

現時点では誰も知らない。

いや……そうでもないか。