軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第230話「司、ついにクラン追放か?」

#第230話「司、ついにクラン追放か?」

石動は、報告書の束を机に置き──深くため息を吐いた。

社長からクラン『エクリプス」の全権を任され、なんとかしようとしてきた。だが、これがなかなかに難しい。

まずはメンバーのやる気と実力が低い。大して優秀でもない外部から呼んでいる本田が最も光るぐらいだ。もう少し真剣にやれば伸びるだろうに真剣さが足りなさすぎる。

だがそれならまだいい。社長の息子の司が本当にひどい。呆れるしかない状況だ。

クラン『エクリプス』関連で入ってくる報告書の半分ぐらいは司の問題に関するものだ。

本当に駄目人間。とは言え、それでも社長の息子だ。致命的な邪魔にならない限りは放置しておこうと思っていた。

しかし、そうもいっていられない報告が上がってきた。

クラン『エクリプス』は現在、新宿ダンジョン一階層・二階層における常時監視任務を請け負っている。

本来ならば、班を交代で回しながら淡々とこなすだけの軽い仕事。一階層、二階層を24時間常時3人体制で回している。

まがいなりにも上を目指しているメンバーにはレベルアップの遠回りになって申し訳ないがこれも会社の実績作りのためだ。クラン『エクリプス』のほとんどのメンバーは実力がないのだからそういった仕事をしてもらうしかない。

だが──。

司はそこに顔を出さない。

いや、出てこないのはまだ理解できる。司は一応はレベル5だから一階層、二階層といった初心者向けフロアの常時監視ではかなりバランスが悪い。普通にもったいない。

だから、本当ならばレベル3のメンバーをレベル4へ引き上げる補助に入ってほしいのだがそれさえしない。

たまに来たと思えば邪魔をして帰るだけ。

存在しない方がマシだった。

それでも石動は「まあ、害さえなければ」と放置していたが──

事態は思ったよりも悪い方向に向かっていた。

司は監視任務についているメンバーをそそのかしサボり仲間に加えていたのだ。

もっとも、全員を一斉に抜けさせるほどの度胸はないらしく最小人数である1〜2名は常に監視場所に残していた。

外から見れば、一応“常時監視”は成立しているように見える。だから外部的には致命的な問題にはなっていない。

司はこういったこずるい知恵だけは回る。その知恵をクランの発展に使えばいいのだがそんなことはしない。

そして──

当然のことながら、こんな状態を許していいはずがない。

このまま腐ったみかんを放置していたら腐っていないみかんも全てが腐り出すのは明白。司一人がさぼるならばいいが他のメンバーまでサボらせるのはさすがに駄目だ、これ以上の失態は許せるものではない。

そこで石動はすぐに決断した。

「……司さんクビにするしかないな。クランを離れてもらおう」

そしてまずは司と一緒にサボっていた数名を呼び出した。

本来なら全員即クビにするところだ──

「呼び出しを受けた理由は分かっていますね」

石動の言葉にすぐに呼び出されたメンバーたちは白状した。

「申し訳ありません。司くんからどうしてもと言われて仕方なく」

「社長の息子の俺が言うんだから言うことを聞け。問題など起きるはずがないと言われました」

「俺がどうとでもごまかすから全く問題ないと言われました」

など言い訳ばかりが出てくる。本当に駄目な人間たちだなと石動は呆れた。言い訳するぐらいならば最初からおかしなことをせずに相談しにくればいいものを。

本来なら言い訳など関係なくこのメンバー達はクビだ。

「それで言い訳はそれで全部ですかね。ならば悪いことをしているという認識はあるのですね」

「そうは言っても司さんが……」

「はぁ、駄目ですね。会社としては自分で行動の善し悪しさえも判断できない人間は不要です。責任感がなさすぎる。本来ならば君たちは全員クビです」

「そんな……」

中には泣き出すメンバーもいた。放心し膝から崩れるものも。そりゃそうだろう。真剣度は足りないとは言えこれまで、それなりに頑張ってきたのだ。会社の仕事に加えてダンジョン活動。

最近は常時監査でさぼってはいたが一般の人よりは確実に頑張ってきた。

司にそそのかされたとは言えそれまでは懸命にもがいていたのだ。だからこそ、石動の一言があまりにも重かった。

そこで石動は告げた。

「最後にもう一度だけチャンスをあげます。今後は真面目に働くように。そしてこれからは自分でも、ものごとの善悪を判断して動いてください。上司と言えどもおかしな意見、曲がっている話だと思ったら聞いてはいけません」

「どうしてもおかしな命令だと思ったら、更にその上に相談するのもありです。投書箱を利用してもいいでしょう。しっかりと社会人としての行動をするように」

「「「「はい、分かりました」」」」

こうして司とサボっていた人間たちは首の皮一枚繋がった。しかし司は別だ。

「分かっているとは思いますが、当然のことながら司さんはクランを辞めてもらいます。今後、誘われても絶対に付いて行かないように。今度同じようなことがあったら、あなたたちは会社とクラン両方ともクビになりますのでそのつもりで」

これは司と共にさぼっていたメンバーに対する最後通告だ。

ここでメンバーは序列が完全に確定していることを理解した。

司がいくら何を言っても「石動>>>司」なのだ。今後は司から何を言われても石動さんに相談しよう、そう心に決めた。

司にそそのかされ、おかしな行動をするメンバーもいたのだがその行動についてはぎりぎり許された。

そして次は司の処分になる。