軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第224話「政府の新たな動き」

#第224話「政府の新たな動き」

横須賀ダンジョン、そして陣馬高原ダンジョンの連続氾濫――政府は初めて “本格的な危機対応” を迫られていた。

これまでは、一階層から三階層のモンスターを定期的に討伐し、ダンジョン内部のエネルギー値を管理すれば氾濫は回避できるとされていた。すでにそれが常識となっていた。

しかし、急にその法則が崩れた。いや世界ではすでにその法則性が崩れる事象が何度も確認されていたのだが日本では監視体制がしっかりしているのでそれは起きないだろうと甘く考えていたのだ。

戦争も同じだが現実に危機が起きるまでは自分事として考えられない。悪く言えば平和ボケ状態だったと言えよう。

しかしながら横須賀ダンジョン、そして陣馬高原ダンジョンと二度続けて起きたことでその安全神話は完全に崩れ去ってしまった。日本でも当たり前にダンジョンの氾濫が起きるということを否応にも突き付けられたのだ。

そして今回外に出てきたモンスターは想定以上に強かった。一階層のモンスターならば警察の拳銃で何とか倒せたが二階層は自衛隊のライフルが必要だった。

更に三階層のモンスターは自衛隊がライフルで一斉射撃をしてようやく倒せるほどの耐久力を持つ。一体一体がとんでもない強さだ。

横須賀ダンジョンの氾濫では自衛隊が総力を挙げて迎撃し被害は最小限に抑えられた。

陣馬高原ダンジョンでは――たまたま居合わせたレンの使役モンスターのリンが討伐したことで大事には至らなかったが、あれは“偶然”でしかない。

もしこれが都市部で起きていたらどうなるか。

例えば新宿ダンジョンで氾濫が起これば、首都の一部が壊滅していた可能性すらある。

政府としては早急に対応しなければいけない案件となった。

まずは国民に「ダンジョンを管理しきれていない」と知られたら大混乱になる。

そこで政府は対外的には “イレギュラー事故” として処理し、同時に都市部ダンジョンは24時間監視体制へ。

地方は人員不足もあり、夜間のみカバーする形となった。これでとりあえず大丈夫……なはずだった。

しかしその矢先、すぐに問題が浮上する。

――ハンターが足りない。とにかく足りない。そしてそのハンターを雇う予算の問題も浮上。予算は特別国債を発行。なりふり構っていられなかった。

一階層はレベル2以上、二階層はレベル3以上、とここまでは人数的に何とかなる。

だが三階層の監視には余裕を見ればレベル4以上が必要となり一気に人手不足が顕在化した。

やはりレベル4ともなると人数が少なく、要求される金額も高くなる。それなりに高くしたつもりではあったが応募が少ない。

本来、レベル4の登録ハンターは1万7千人ほどいるはずなのだが、実際に動ける現役はその半数ぐらいだろうか。すでに引退したものが多いのだ。

また動けるはずのレベル4ハンターもレベル上げを頑張っており「監視業務などはやりたくない」と敬遠するため、穴が開くダンジョンも増えていった。

レベル4以上の戦力となると全国で2,000人程度は必要だったが、なかなかその数字は届かない。

そこで政府は一大キャンペーンに踏み切った。

――TVCMや情報番組などによるハンターの大規模募集。

『日本に3,000人いるとされるレベル5。あなたもその高みに挑戦しませんか?レベル5になれば年収数千万円!』

そんな派手なキャッチコピーがCMで連日流れた。

情報番組では男性アイドル、女性アイドルが「憧れの職業ハンター」をアピール。特に女性アイドルは露骨に「ハンターしている男性には憧れます!日本を守るために頑張ってください」と応援、レベル4以上のハンターが一緒に番組に出ることもあった。

やはり世の中の男性は単純。それを見て自分もハンターになってアイドルの憧れになりたい、レベル4ならなれるのでは?というものが続出。施策はうまく進んだ。

実はこれまではこのようなCMや演出はあえてやらなかった。その理由はハンターが危険な仕事だからだ。

ハンターが増えればダンジョンで命を落とす人間はどうしても増える。それは本当は避けたかった。厳しい仕事であるということを知った上で自己責任で自らハンターになるのは仕方がないが、夢がある仕事だとして後押しまでするのはやりすぎだろう。

しかしながらそうも言ってられない、背に腹は代えられない状況になったということだ。ダンジョンが氾濫したらその数十倍、数百倍、下手すれば数万倍の命が失われるかもしれない。

天秤にかけてハンター募集に踏み切った形だ。おそらくはハンターになったうちの一部はダンジョン活動で亡くなるだろう。政府は責められるだろうがそれは覚悟の上だ。

同時に、企業や草クランにも奨励金制度が導入された。

レベル4以上を育成すれば補助金が出るため、レベリングだけでレベル4へ駆け上がる者も増えた。

――ただし、この制度がいつまで続くかは分からない。

「とにかく今のうちにレベル4にまでは上がっておけ」という空気が全国のハンター界で広がっていった。

一方でそんな社会の大きな変化を、まるで別世界の出来事のように感じる者たちがいる。

レンたちだ。

彼らは政府の動きにもあまり関心がない。

スケジュール通り、淡々と五階層の攻略を進めていた。

――目標は全員のレベル6到達。

まずはルナ、続いてレンをレベル6に引き上げ、その後に使役モンスター5体を順次レベルアップさせる予定だ。

単純計算では全員がレベル6になるまで“約2年”。

しかしその期間を少しでも短縮するため、彼らは毎日、密度の高い攻略を続けていた。

外の世界が騒がしく変わっていく中で――

レンたちだけは、自分たちの確かな目標に向かって着実に進んでいた。