作品タイトル不明
第223話「とんでもない8人」
#第223話「とんでもない8人」
ハンター協会ビル高層階。朝倉のオフィスでは、黒澤を交えた極秘会議が続いていた。
レンの使役モンスターの人化能力、FS遷移、陣馬高原の氾濫の真相──
これまで伏せられていた機密は、ほぼすべて黒澤に伝えられた。
黒澤は何度も驚き混乱しつつも、
「国家レベルの機密である理由」 を理解した。国の切り札になり得るのは間違いの無い事実だ。
「さて……ここからはレンの“今の現状”について話すわ」
エリナが切り出すと、黒澤は腕を組んだまま頷いた。
「レンの現状か。そういえば……レンのレベル、今いくつだ?以前会ったときはレベル4だったな。そろそろレベル5か?」
「ええ、すでにレベル5よ。しかも──先日、初めて五階層に挑戦したの」
「そうか、初めてとなるとかなり厳しい階層だがどんな感じだ?」
「ええ、そうね。それはこの映像を見てちょうだい」
タブレットの画面を見た瞬間、黒澤はびっくりした。
「……おいおい、見事に女性ばっかりじゃねえか? 完全にハーレムパーティーだろこれ! 以前より女性が増えているじゃねーか」
「まあ、そう見えるでしょうね。でもこのメンバーの一部はあなたも知っている人でしょう。馬鹿にできたものじゃないわよ」
「……ああ。ルナがいるな。五階層でもぎりぎりながらソロで戦える化け物だ。で、もう一人は……ひより? 公務員の子だよな? あの子がレベル5まであげたのか?」
「そうよ。ずっとレンを支えているわね」
黒澤は「なんだそりゃ。凄いなそれは」という顔をしながら画面を見続けた。
「そしてあとの二人は……先ほどの使役モンスターのラムとリンね」
「なるほどな。ルナ、ひより、ラム、リン……ここまでは分かる。でも、あと3人は……誰だ? 俺には見覚えがない」
「その3人も使役モンスターよ。全員レベル5、そしてFS6に遷移している。つまり──レンの使役モンスター五人全員が“外に出られる”存在なの」
その言葉に黒澤は再び驚いた。
「外に出れる使役モンスター全員がレベル5……それが5人もいるだと?自衛隊でも苦労する三階層のモンスターを軽く倒せる奴らが5人もいるということか?」
「そういうことね。だから国家が動いているのよ。とんでもない戦力よ」
続いて、レンたちの五階層攻略映像が流れた。
巨大なオークが出てきた。威圧が凄い。五階層初挑戦の人間はこの威圧感だけで圧倒されまともに戦えないケースも多い。
そして五階層初挑戦ならば、通常はレベル6以上が何人かはフォローに付くものだが全員がレベル5というのはやや無謀とも言えた。
黒澤もさすがに初回は厳しいだろうとあまり期待はせずに見始めた。
だが──。
「……おい、ルナ以外は五階層初挑戦という話だったんじゃないのか?」
「そうよ。でも見ての通り、誰一人としてこの階層で怯えていないの。とても初回の挑戦とは思えない、堂々としたものよ」
黒澤は唖然としたまま、画面を凝視した。
「これ……まるでレベル6の動きじゃねえか?本当に全員レベル5なのか?」
「そう。実力だけなら、もう全員がレベル6相当かもしれないわね。ルナは別格としても他のメンバーも相当の実力がある」
「……ってことは、こいつら全員、来年にはレベル6に上がるな。レベル6が8人かよ。レベル6以上の人数だけ考えたらもう俺たちのクランと同等レベルになるじゃねーか」
「並ぶどころか、追い越すかもね。この様子だと全員がレベル7に手が届くかもよ。そうなればダンジョンの外だけでなくダンジョンの中でも日本トップになるかも」
「まだハンター始めて3年くらいだろ?信じられん成長速度だな」
黒澤は頭をかきながら、画面のレンたちを見続けた。
「急成長中、しかもダンジョン外に出られるモンスターが5体……レンは、もう国の宝だな」
「そういうこと。だからこそ──守らないと」
エリナが言うと、黒澤は即座に頷いた。
「当然だ。全力で守る。問題があればいつでも協力する」
「ありがとう。彼らは今、恩方ダンジョンと陣馬高原ダンジョンで活動しているわ。邪魔になるような動きはしないで欲しいの。そして……必要なときは助けて欲しいの」
「任せろ。あの映像……恩方ダンジョンだろ?スピード系で難しいダンジョンじゃねえか。それを初挑戦で軽くクリアかよ……。確かにすぐレベル6になるだろうな」
黒澤は深く息を吐いた。
「……負けてられんな。守るのも必要だが、ハンターとして俺たちも鍛えねえと」
「そういうことよ。強くなっていかないとすぐに抜かれるわよ」
会議室には、静かだが確かな決意が満ちていった。