軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第221話「黒澤との秘密共有」

#第221話「黒澤との秘密共有」

ハンター協会ビルの高層階。普段なら静かな朝倉のオフィスに、三つの強大な気配が集まっていた。

レベル8の黒澤。

レベル7のエリナ。

そしてハンター協会の重鎮・朝倉。

日本のハンター協会の中でもトップクラスの三人が揃った。それだけでも緊張が走る。

「こんな大げさに呼び出されるのは久しぶりだな。何の話だ?」

黒澤が腕を組み、椅子に腰を下ろす。エリナは朝倉と目を合わせ無言で頷いた。

――今日は“秘密の開示”の日だ。

これまでは黒澤には知らせていない内容を告げることにした。

・使役モンスターの人化能力。

・ダンジョン外での行動。

・そして陣馬高原の氾濫を収めた事実。

これらはすべて、国家レベルのトップシークレット。

現時点で知っているのは首相、防衛大臣、朝倉、エリナ、そしてレンたち8人だけだった。

だが――。

これから先の展開を思えば、黒澤にも知ってもらうべきだ。信頼でき、人格も実力もトップクラス。そしてレンとの接点も深い。

朝倉とエリナは、そう判断した。

「黒澤さん。今日は……あなたにどうしても伝えておきたいことがあるの」

「おいおい、何だ? 声が怖いぞエリナ。変な話に巻き込む気か?」

「巻き込む、というより……力を借りたいのよ。ある人間を守るために」

「もしかして……レンか?」

「さすが黒澤さんね。察しがいいわ」

エリナが微笑む。

黒澤はふんと鼻を鳴らしながら朝倉へ視線を送った。

「で、どこまでの話なんだ?それは協会のトップシークレットか?」

「いや協会というよりは日本のトップシークレットとして考えて欲しい。これから話すことは、私とエリナ君、そして研究課の透子君……あとは首相、防衛大臣、そしてレンたちしか知らない。ハンター協会会長さえにも知られていない日本のトップシークレットだ」と朝倉が続けた。

「……は?」

黒澤の顔から笑みが消える。

まさか日本の“最高責任者”クラスが関わる話とは思っていなかった。首相と防衛大臣は知っていてハンター協会トップが知らない内容。相当な案件に違いない。しかしそれとレンが何故結びつく?どうにも理解が困難だった。

「だから覚悟して聞いて欲しい。当面は田嶋くんにも秘密で頼む」

「……分かった。そこまで言うなら、こっちも腹をくくるさ。話してくれ」

なんだかんだ言っても黒澤は好奇心の固まりでもある。ここまで言われたらどうしても知りたくなる。そして秘密厳守と言われれば当然守る。律儀な男でもある。だからこそエリナも朝倉も秘密を伝えることを決めたのだ。

もちろん、黒澤に秘密を打ち明けることレンにも伝えている。レンは二つ返事で「黒澤さんなら問題ありません」と言ってきた。ならば伝えるべきだろうと結論付けた形だ。頼れる守る側の人間が1人でも多い方がいい。

エリナがタブレットを操作し、一つの映像を再生した。

「まずは、これを見て」

画面に映ったのは、朝倉のオフィス。すなわちここだ。その中央には青い髪の女性――ラムが立っている。

朝倉がラムへコインを投げる。

するとラムは軽く指ではさんだだけで――

バキッとコインが割れた。

「はあっ!? 待て待て待て! 割れたぞ今!? 曲がったじゃなくて割れたぞ!?」

「そうよ。次も見て」

次の画像は緑の髪の女性――リンが立っている場面だった。

リンも同じようにコインを軽く割る。

黒澤は言葉を失った。

コインが真っ二つに割れたのだ。普通に考えてあり得ない。どれだけの力を加えたらそうなるのか?

「おい……こいつら……いったい何者だ?」

「この二人は――人間じゃないわ」

「は?」

「レンの使役モンスターよ。人化した状態」

「………………は?」

黒澤の思考が硬直する。人間ではないと言われても、どう見ても映像の中にいるのは人間だろう。しかしそれが使役モンスターの人化した姿だと言う。あり得ない話だ。

その一方で目の前のコインが割れた映像は、紛れもなく“現実”。

普通の人間には見えるがとんでもない人間離れした力を持つ。そう考えると使役モンスターが人化した姿だと言われれば辻褄は一応は合う。

しかしいろいろあり得ない。そもそも使役モンスターが人化するなど聞いたことがない。そして使役モンスターがダンジョンの外に出られるという話も聞いたことがない。

目の前の信じがたい映像。そして自分の常識が黒澤の頭の中でぐちゃぐちゃになって混乱した。

そのまま黒澤はしばらく映像を見つめていた。

「……ちょっと待て。使役モンスターが……人化? 外に出られる? そんな馬鹿な話が……聞いたことがないぞ」

「最初聞いた時は私達もそう思った。海外でそういった話も出ていたが噂レベルだと思っていた。だがこれは事実だ。画像を見れば分かるようにエリナ君も直に見ている」と朝倉。

話をしながら黒澤もようやく少し落ち着いてきた。これほどの力のある女性が2人いるならば秘密にしたいのも分かる。

それを共有したいということか。でも、それを自分に伝える意味がよく分からない。別に自分にも世間にもばらさなければいいだけの話では?

「これがレンの秘密か。このとんでもない女性について隠して欲しいというのが今回の話か?」

「ええ、半分は合っているわね。でもまだ秘密があるの。ここからが本題と言ってもいいわ」

黒澤の喉がごくりと鳴った。とんでもない力を持つ女性が2人。これだけでも凄い話だ。でもそれだけではない。まだ本題があるという。

黒澤は次のエリナの言葉を待った。