作品タイトル不明
第219話「実践後のミーティング」
#第219話「実践後のミーティング」
俺たちは五階層の初実戦を終え、マンションに戻ってミーティングをすることにした。
今日はなんとエリナさんにも来てもらった。忙しいのに申し訳ないが相談したらあっさり「行くわよ」と返事をもらえた。ありがたい限りだ。
ちなみに透子さんもいる。ここ最近は当然のように居る。もう“ほぼ一緒に暮らしてる人”みたいな扱いだ。だから、まあ透子さんはいてもいなくてもあまり関係ない。空気みたいなものだ。いや、それはさすがに言い過ぎで失礼か?
まずは初実戦の動画をエリナさんに見てもらうことにした。もちろんこの動画は配信用ではない、完全に内輪だけの記録になる。
もちろん、俺たちもエリナさんと一緒に見た。ミーティングでもあるが反省会でもあるからね。問題があれば修正していく必要がある。それは自分もそうだが仲間もにも問題があれば指摘する必要があるだろう。
そしてエリナさんは動画を見た瞬間、少しだけ目を丸くした。意外そうな表情だ。やっぱりルナの戦い方に驚いているのだろうか?
「あなたたち……レベル5になりたてで、これが五階層はじめてで間違いないわよね?」
「はい。そうです。ルナ以外は全員、五階層は初めてです。やっぱり駄目でしたか?」
「違うわよ。逆よ、驚いたわ」
「……逆?」
逆ってどういうことだろうか?ルナが強いのは間違いない。だからそれに驚くのは分かるのだが。あと俺たちはやはり初回だからエリナさんレベルから見ればぎこちない戦いに見えるだろう。逆の意味がよく分からない。
「驚いたわ。あなたたちの誰一人としてオークを恐れていない。警戒はしてても“真っすぐ見て”戦ってる。普通は最初の五階層なんて、恐怖で足がすくむものよ」
「いや、普通のレベル5は初回どころか多少慣れたとしても、ずっとかなりの恐怖を感じながら戦っているの。あなたたちは初戦で堂々としたもの。本当にとんでもないわ。すでにレベル5でも上位、下手すればレベル6と言っても差し支えないわね」
恐れていないということは感覚が鈍いということか?いやそれともしっかりしていると褒められているのか?どうにも褒められているのか呆れられているのか微妙に分からない。一応誉め言葉だと受け取っておこう。
「ルナの指導のおかげだと思います。入る前にかなり映像研究もしてましたし。ここ数日間はダンジョンに入らず研究したりイメージトレーニングをしたりしていました」
「なるほど、それね。あなたたち、四階層まではろくに研究もせずに上がってきたんでしょう? その無謀さが逆に恐ろしいわ」
「えっ、それじゃ俺たち、ぶっつけ本番のバカみたいじゃないですか」
「まあ……言い方を変えればそうね。でも結果的には最短で成長してるから文句は言えないわ」
むむ、褒められているようで、やはりけなされている気もする。なんとも複雑な気持ちが続く。少なくともこれまではかなりの安全マージンを取って戦ってきている。無謀なことをしているつもりは全くないのだけどね。
だから無謀と言われてもピンと来ない。それでも五階層はルナの提案で研究をしてから挑んだ。これは間違いない正しい選択だったということだろう。
「ともかく、五階層を“レベル5だけで回せてる”のがすでに異常ね。初回の実践であれだけ余裕があるなら、レベル6に上がるのは間違いないわね。本当にすごいことよ」
おお結局はエリナさんも認めてくれているということかな?それはありがたい。でも俺たちにも大きな問題はある。
「でも討伐速度はかなり遅いです。今日は全体で200体ぐらい。ボス格のオークは40体ぐらいですね。ほぼルナに回してはいますが、このペースだとルナ1人をレベル6にするだけで半年以上とかかかりそうで」
「何を言っているのよ。それはかなり早いわよ。あなたたちと話していると感覚がおかしくなるわね。そもそも、ほとんどの人はレベル6に上がれないんだから。日本で300人程度しか上がることができていない大きな壁よ」
エリナさんは続けた。
「レベル6の壁っていうのはいくつかあってまずは“恐怖心”の壁があるのよ。それだけで断念する人も多いわ。だから基本的に格闘技などをやっていないと乗り越えられないとされているの。五階層はオークの体格も脅威だし、攻撃範囲も広いからそれだけで精神的に参ってしまう人が多い。でもあなたたちは全員、すでにそこを乗り越えてる。それだけでも凄いことよ」
「でも、討伐が遅いのはどうにも……」
「それは慣れるしかないわね。敵との“力量差の把握”ができるようになれば、無駄な力を入れずに倒せるようになる。軽く当てるだけで倒れる雑魚に全力振ってたら時間と体力の無駄でしょう?」
「はい。それは分かっているつもりです。現時点で最優先の改善課題だと感じています。
その通りだ。俺たち全員、同じ課題を感じていた。共通で改善しようと考えていた部分だ。まだ初回だから慣れていない。まずは慣れる必要があるとは考えている。
「すでに分かっているなら、現時点で特別に言うことはないわね。五階層が厳しいようであれば私がフォローに入ればいいと思ったけど……この様子なら必要なさそうね」
「フォローに入ることも考えてくれていたのですか?それは本当に助かります」
「でもそれはやらない方がいいわね。むしろ私が入るとバランス崩れそうだから入らないわ。今の戦い方を磨きなさい。まあ次の階層が厳しい様であればそこで考えましょう」
そう言って微笑むエリナさんは、やっぱり別格だった。
「……まあ、早く私のところまで上がってきなさい。とりあえずレベル6になれば、六階層で一緒に戦えるかもしれないわね」
えっ……エリナさんと一緒に戦う?
レベル6ならば、早ければ1年後ぐらいにもあり得る未来かもしれない。
エリナさんは俺たちからすればまだまだ雲の上の存在だ。その人と肩を並べて戦えるかもしれない、そう思うと胸が熱くなった。
まだまだ頑張らないといけないな。そう強く思った。