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作品タイトル不明

第182話「ラムとリンの模擬戦」

#第182話「ラムとリンの模擬戦」

ラムとリンの模擬戦が始まった。

道場の中ではそのパワーに床などが到底耐えられないだろうということで、今回は道場の内庭を使うことになった。もちろん人払い済みだ。

それにしても、内庭で模擬戦ができるほどの広さがあるとは驚きだ。ルナの道場はやはり規格外だと感じる。

ラムとリンの戦いが実際に始まると、その光景は俺の目ではほとんど追えなかった。

互いに半身の構えで隙がない。そして、そこからの一瞬の動きが速すぎた。剣が動いた――そう理解する頃には、もう何が起きたのか分からなくなっている。

おそらくはラムが袈裟斬りの連撃を仕掛け、それをリンが受け流したのだろう。

ただ、俺はその動きのすべてを確認できたわけではない。初動のわずかな動きからの推測がかなり入っている。

脳内には何となく剣の動きが読めている、もしかして見えていると言っていいのか?

しかし現実に目にはその全てが見えているわけではない。ほぼ勘と言っても差し支えない。実際に見えているものと脳で処理しているものが違う。変な感覚だ。

ルナにその俺の状況を伝えると感心していた。

「ほう、たいしたものだな。この短期間でそこまでの境地に達したのか。凄いことだぞ、レン」

「そうなのか?目で見ているものと脳で処理しているものが違う、何とも変な感覚なんだが?」

ルナによると俺の今の感覚はかなりの境地に達しているとのことだ。目で追えていなくても脳が相手の動きをイメージとして掴んでいる、それができればぎりぎりで剣の達人にも対応できることもあるらしい。

勘に近いものでもあるわけで、ほとんどのケースでは完敗する。しかし脳が処理さえできれば0.1%でも勝つ確率が出てくるとのこと。

そのぎりぎりの脳の処理と予測の組み合わせが必要になるらしい。まあちょっと理解が追い付かない話ではあるが、わずかな確率ながら格上にも勝てるかもしれないということで俺は少しやる気が出た。格上のルナに認められるのは格別に嬉しいことだ。

そして一方のルナにはかろうじてだけどラムとリンの動きが見えてはいるらしい。とんでもない動体視力だ。だが見えてはいても受け流すのはまず不可能だという。

「ラムは単なる速さだけじゃない。あのパワーはとてつもない。あれを受けたら、おそらく武器ごと吹き飛ばされる」

「そうなると避けるしかないが、それでも間に合う気がしない。となると受け流しながら武器と共に体ごと吹き飛ばされるのが一番の得策か?」――そう言う彼女の顔は、いつになく真剣だった。

体ごと吹き飛ばされることを前提で受けるとかとんでもない発想だと思うが彼女にとっては当たり前のことらしい。わずかでも生き残るための戦略ということなのだろう。確かに武器が吹き飛ばされたら、もうそこには敗北しかない。わずかでも勝つ確率のある動き、もしくは戦略的撤退をも考えているのだろう。

その後もしばらく、二人の打ち合いが続いた。激しい衝突音と、わずかな衝撃波。ほんの一瞬の交差が、まるで爆発のような威圧感を生む。

俺たちはただ黙って見守ることしかできなかった。

しばらくして模擬戦は終了した。結果としては、ラムがやや優勢だったらしい。

ただ、俺にはどちらが勝っていたのか全く分からなかった。

ただ一つ確かなのは、あの戦いがとんでもない次元で行われていたということだけだ。

「俺はもうラムにもリンにも勝てないな」とつい本音が漏れた。

するとラムが驚いたように首を振る。

「そんなことありません。ダンジョンの中なら、レンさんの方が強いですよ。まだ勝てないと思います」

リンも笑顔で同じように言う。

「同意するです。レンさんの力はダンジョンの中では私たちより上だと思うです」

本当だろうか。俺を喜ばすために言っているのではないかな?でも、少なくともダンジョンの中では、俺も近いレベルで戦っているのは間違いないらしい。

そう思うと少しだけ誇らしかった。俺もかなり強くなっているのだろう。

もっとも俺は同じ力をダンジョンの外で出せるわけではない。

でも、それは考えても意味がないことだ。使役モンスターの特権だ。俺が持っていないものをあれこれ考えても意味はない。

外では人間と使役モンスターとは根本的に異なるのだ。これはどうしようもない。やはり、ダンジョンの外では絶対に彼女たちには勝てそうにない。それだけは紛れもない事実。

それでも、今日の模擬戦を見て一つの確信が生まれた。

使役モンスターたちは確実に強くなっている。そしてルナも、彼女たちを見て何かを掴もうとしているようだった。そして俺もそれなりに成長して強くなっている。

ルナは「……どうにかできないかな」と呟いている。何度も思い出し頭の中で戦っているのだろう、さすが戦闘狂というべきか。ほぼ100%の確率で負ける。でも、その中での最適解を見つけているに違いない。

俺はそのルナの執着心に苦笑しながらも自分の課題に目を向けた。少なくとも俺が考えても仕方がないレベルのことだからだ。

今は訓練でしっかりと動きを磨きその成果をダンジョンの実践で発揮するだけだ。それが一番の成長の早道だろうと思う。

まずは俺は袈裟斬りから逆袈裟斬りの連撃をマスターすることが必要だ。それによって更に安定感が増すだろう。

そしてダンジョン4階層でロア、ルフ、クーのレベルアップをできるだけ早く実現させる。

その先にある5階層――新たな領域を目指して頑張っていこう。今日見たラムとリンの模擬戦も何らかの力に変えていきたいと思う。