軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第181話「新たな連撃への挑戦」

#第181話「新たな連撃への挑戦」

ラムとリンがダンジョンの外に出られるようになったので、俺たちの道場での訓練に加わった。

もっとも、2人の身体能力は人間の比ではない。スピード、反応、筋力、どれを取っても別格。正直、俺ではまるで相手にならない。

その圧倒的さは、あのルナでさえも全くかなわないレベルだった。ダンジョンのレベルアップ効果を外でも維持している彼女たちはもはや“人外”と言っていい。

そりゃそうだ。コインを曲げるではなく軽く割ってしまうほどの力。身体能力は全く異なる。ラムとリンからは俺たちの動きもスローモーションに見えているのかもしれない。同レベルで戦えるはずもない。

だが、それを誰よりも楽しそうにしていたのはルナだった。

ルナの打ち込みを軽くいなし、かわし、逆に正確なカウンターを返すラム。それを受けながらもルナは笑っていた。

「……最高だな。これほどの打ち合い、久しぶりだ」

今の世の中にルナと同等レベルでまともに稽古できる相手はそれほどいないだろう。格上となると更に数が減る。そしてそういった人たちは忙しい。普段から相手にしてもらうことはほぼ不可能。

でも今のルナはそんな格上相手と日常的に手合わせできる――それだけで彼女は楽しそうだ。まるで子どものように、瞳を輝かせて斬りつけている。

一方の俺は、ようやく“逆袈裟斬り”が形になってきたところだった。袈裟斬りが上からの斬り下ろしなら、逆袈裟斬りは下からの斬り上げ。

どうしても力が乗らず苦戦していたが体の回転――特に腰の使い方がスムーズになりようやく手応えをつかめた。まだ完ぺきとは言えないが下からの斬り上げである逆袈裟斬りでもある程度のパワーを出せるようになった。

今はそれを応用して“連撃”の練習をしている。袈裟斬りから逆袈裟斬り、逆に逆袈裟から袈裟斬りへの繋ぎ。

パターンを増やせば不器用な自分はやはり混乱する。しっかりとパターンとして覚える必要があるだろう。パターン認識すればそれを無意識に繰り出すだけだ。そこまで何とか落とし込む。

連撃は特に群体型モンスターへの有効打になる。4階層の攻略も格段に早く楽になった。

その連撃のパターンが増えれば4階層は更に楽に、そして5階層でもきっと通用する――そう感じていた。

だが、そんな俺の動きを見てリンが首をかしげた。

「レンさん、それは違うですです。動きが雑です」

「え? 何が違う?」

リンによれば、俺の連撃は“途中で止まっている”らしい。確かに袈裟から逆袈裟に切り替える際、どうしても一瞬の間がある。

だが、それは仕方のないことだと思っていた。だってそうしないと、上から下げたものは一度どこかで止まらないと上への斬り上げに繋がらない。

ところがリンは首を横に振る。

「ルナさんは止まらないですです。力を止めてない、逃がしてないです」

そう言ってリンは、ゆっくりと手本を見せてくれた。

袈裟斬りの斬り下ろしから、動きを止めずにそのまま円を描くように――流れる動きで逆袈裟斬りへとつなげていく。

「こうやって、最初の力をそのまま逆袈裟斬りの切り上げにも使うですです」

なるほど……これはやばいな。

確かに、力の流れが途切れていない。そのまま動きをつなげることで、最初の勢いをそのまま次の斬撃の勢いに転化できている。

「凄いな、ルナはこんな動きをしてたのか」

「ああ、もちろんだ。止まっていたらスピードもパワーも落ちる。でもその問題を教えるのはもう少し先だと思っていたけどリンに先を越されてしまったな」

ルナは軽く笑っていた。どうやら彼女にとっては当たり前の動きだったらしい。

「ごめんなさいです。余計なことをしてしまったですか?」

「いや、君たちが指摘し合った方がレンには分かりやすいと思う。どうしても私からだと、できて当たり前の視点になってしまうからな。できればそうやってどんどん指摘して欲しい。もちろん間違っていたら私が止めるから安心していい」

「分かりましたです。どんどん指摘しますです!」

なるほど。ルナの指導も完ぺきではないらしい。どうしても指導者目線になってしまう。素人同士の視点の方が間違っている部分もあるかもしれないが分かりやすいとのこと。そうやって考えると今の環境はかなり良いかもしれない。

そしてリンの言う通りにパワーを逃がさず次の動きに伝える訓練もした。かなり難しい。でもゆっくりやる分にはなんとかできる。そしてやってみるとその動きのスムーズさが本当に素晴らしいことが分かる。

「確かにこれは理にかなってる。早く次の動きに繋がる。それだけでなく力を無駄にしないし、スタミナの消費も減る。連撃で疲れにくくなるのは大きいな」

ただ、ゆっくりならできるがスピードが乗るとまだまだ無理。だからじっくりとパターンとして覚えていくしかないだろう。まずはゆっくりでの繰り返しだ。そして慣れたら徐々にスピードを上げていこう。

これまでやった通りだ。俺は不器用だから繰り返しで習得していくしかない。

リンとルナ、そして俺、ひより。

いつの間にか、訓練場は熱気に包まれていた。

ルナとリンが加わることで成長が加速しそうだ。特に指導者として導いてくれたルナさえも更に成長するならば素晴らしいこと。ラムとリンも訓練を通じて新しい発見があり成長していきそうだ。俺よりも成長が早いのがちょっと悔しいがそれはもう仕方がない。

こうして俺たちは、それぞれの課題を持って修練を重ねていった。

教え、学び、また挑戦する――使役モンスターが外に出られるようになったことで訓練の質が上がったと思う。

「これで、また一段上を目指せるな」

ルナが笑い、リンもラムもひよりも嬉しそうに頷いた。俺も同じ気持ちだった。

ダンジョンだけでなく、この訓練もまた確実に俺たちを強くしてくれている――そう感じていた。