軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第183話「クランの実情報告(本田)」

#第183話「クランの実情報告(本田)」

ラムとリンがとんでもない模擬戦をしている頃、本田は鷹見にクランの現状報告と相談を兼ねた連絡を入れていた。

内容は、佐藤がまもなくレベル4に到達する見込みであること、メンバーの士気も回復し、活動が安定していること、そして司がついに復帰したこと――。

しかし、その最後の報告には明らかに苦い響きがあった。

「ただ、司さんはあまり評判は良くありません。かなり身勝手な行動が多く、クラン内でも不満が出ています。正直なところ、いない方がましという声が多いです。一応はそういった意見は駄目だとたしなめてはいますが……」

鷹見は少し驚いたように眉を上げた。

「司さんはそこまで無能? いや言い過ぎか。協調性がないのか……」

「いや、もう本音で話しよう。完全に正直ベースでいい。そこまで司さんは駄目なのか?」

「はい。本音を言えば無能で協調性もありません。でも本当に本音で言っていいのですか? 後から処罰とか勘弁してくださいよ」

「ああ、もちろんだ。変に庇うような言い方はしないでいい。回りくどい表現では真実が伝わらない。率直に実情を知りたい」

本田はため息をついた。仮病としか思えない四か月もの療養を経て、司は復帰したかと思えば感謝もせず自分勝手な言い分ばかりで、現場を混乱させている。

せっかくの流れを壊している。鷹見からは率直な状況を教えて欲しいと言われたので状況を説明することにした。

「まず四か月のコロナでの静養は明らかに仮病ですよね。さすがにそれはメンバーには言っていないですけど、そう思っている人は確実にいると思いますよ」

「あと四か月も休養したのにクランメンバーに感謝の言葉もねぎらいも無かったですね。本当に呆れたものです」

「それどころか来て勝手に自分が先頭に立って、『ちんたらやるな』とかどなり散らしていきなり雰囲気をぶち壊してきました。せっかく盛り上がっていたのにメンバーは萎縮してしまいました」

「更にはせっかくみんなで佐藤君のレベルアップのおぜん立てを頑張っているのに、トドメを譲ろうとしたところで司さんが横取り。もう邪魔としか言えません。全てが駄目な方向に振り切れています」

「わ、わかった、まずは落ち着け」

その矢継ぎ早の状況報告にはさすがの鷹見もびっくりした。本田が相当に不満をため込んでいたということが分かった。温厚な本田がここまでになるのだ。相当酷いのだろう。

「司さんは、そこまでひどいのか……正直なところ、無能を通り越しているな。『やる気のある無能が一番やっかい』という言葉通りか?」

「そうですね。率直に言えばそうなります。敵にああいうタイプの人がいればやりやすいのでしょうが味方だと本当に困ります。しかも社長の息子さんなので切るに切れない。きつくも言いにくい」

鷹見は苦笑を漏らした。

「なるほど……ある意味、たいしたものだな。社長の息子ということで周りがちやほやして失敗も挫折も経験せずにのし上がってきた典型的なボンボンってやつか」

「ええ。まさにその通りだと思います」

「となると、司さんが戻ったことですぐに立ち行かなくなるな。もう再生は無理か?」

「まだ今のところはまだ大丈夫ですね。そのおかしなやる気さえも続かないようで。1時間もすれば帰っていきます。なので司さんのいない残りの時間をフルに活用しています」

「くっ、わはは! 司さんは本当におもしろいな。やる気のある無能かと思えば、そのやる気さえも続かないときたか! ある意味で大物だ。ならばしばらくは何とかやっていけそうか」

「そうですね。まあなんとか。でもどっちにしても先はないですよ」

本田は言葉を区切った。

「司さんがいなくても、今の緩い雰囲気では上は目指せません。サークル活動の延長のような感覚ですからね。レベル4は何人か出せるでしょう。でもレベル4が何人か出て4階層にチャレンジするようになったら、その先の本当の壁の高さが分かるかと。すぐにやる気を失う人が増えて立ち行かなくなると思います」

鷹見は黙って腕を組み、しばらく考え込んだ。

「やはりどちらにしろクランに未来はないか。専業でも難しいのに、片手間で成功するわけがない。……会社としても、そろそろ手を打たないといかんな。今のままでは無駄に金を食うだけだ」

(でもそれでは石動の動きの遅さを責めるだけで終わるよな。俺の功績になるような何か手はないものか)

そう言うと、何か思いついたように表情を変えた。

「いや、待てよ。――あの手があるな」

「……あの手、ですか?」

本田が首をかしげた。

「これはまだ極秘だ。口外はするなよ」

「はい。絶対に秘密は漏らしません」

「横須賀ダンジョンの件で政府が動いている。あの“イレギュラーな事故”以降、1階層から3階層までにハンターを常駐させる案が出ているらしい」

「常駐? なるほど……その常駐任務を、我々に回すということですか」

「そうだ。お前たちならば実力的に丁度良いだろう。企業系クランなら管理がしやすいし、責任の所在も明確だ。安全維持チームとして動かせば、会社にも箔がつく。そうして実績ができればその実績を元に他の仕事も取れるかもしれん。政府から出る金にもよるが、大きい金額ならばうちが全部引き受けて下請けという形で他のクランに仕事を回してもいい」

本田は一瞬考えた。

「ただ、今の戦力では少し厳しいですね。もうすぐ佐藤君はレベル4になりますが、私と佐藤君とレベル4が2人では交代制が組めません。最低でも3人、できれば4人以上は欲しいところです」

「だろうな。だからお前に頼みたい」

鷹見はまっすぐに言った。

「しばらくは現状維持で構わん。だが、半年以内にレベル4をもう1~2人育てろ。4人まで増えればベストだろうな。それができればしばらくは安定した仕事になる。お前への支給も増えるはずだ」

「了解しました。厳しいですが全力でやってみます」

「頼んだぞ。本田。この話が形になれば、会社もクランも一気に動き出すことができるかもしれない。……そのためにも、まずは今の勢いを絶やすな。そうすれば俺も会社に提案しやすくなる」

本田は深く頷いた。

目の前に問題はあるがそれでも前に進むしかない。司の存在は確かに厄介だが、動かない理由にはならない。

こうして横須賀ダンジョンの異変が運命を変えようとしていた。それが良い方向なのか悪い方向なのか?まだ知る由はなかった。