作品タイトル不明
第154話「クラン・エクリプスの希望」
#第154話「クラン・エクリプスの希望」
その頃――。
クラン『エクリプス』では、久々に活気が満ちていた。ここ最近は先が見えず暗い状況だったが、先が見えるようになり急激に明るくなった。
理由はひとつ。本田が加入したからだ。
本田はレベル4のハンターでしかも面倒見が良い。雑用なども文句1つ言わずに行う。討伐中は率先して仲間のフォローに入る。人一倍声を出して周りの人間を励ます。
1日数時間での契約ではあったが、その時間を多少すぎても文句も全く言わない。
クラン『エクリプス』の3階層での活動でも彼の存在はすぐに光りはじめた。
「本田さんがいれば、俺たちもっと上にいける!」
「みんなでレベル4に上がれば次の階層、夢じゃないぞ!」
クランの空気が一変した。
メンバーのやる気が出たことでリーダーの佐藤の経験値の上昇ペースがやや上がった。
以前は佐藤に経験値を集中させていた。今は他のメンバーにも少ないながらトドメを刺す機会も得られ、わずかではあるが経験値が分配されていく。
少しずつでも成長している。その数値の増加がメンバー全員のモチベーションにもなった。
リーダー佐藤への不満が多かったが、その不満の声も少なくなった。
そして本田はそういった声を聞くたびに軽く叱咤した。問題があるならば直接言った方がいい。わだかまりを残したままの活動は良くない。リーダーの佐藤に言えないならば自分がいくらでも聞くという。
それを聞いたメンバーは反省し、心を入れ替えようと考えた。本田についていけば問題ないとさえ考えていた。
本田への依存度が日に日に大きくなっていった。リーダーの佐藤でさえも本田へは崇拝の気持ちさえ持つようになっていったのだ。
自分ではどうしようもなかったクランを本田が立ちなおしてくれた。更には自分よりも格上にも関わらずリーダーの自分を立ててくれる。
その状況を見て石動も動いた。
「分かりました。二ヶ月目以降の費用、出しましょう。みんな、本田さんと一緒に頑張ってください」
「分かりました。ありがとうございます」
ほぼ全員のメンバーの要望だ。石動としてもどう考えてもここで断るのは難しい。
そもそも間違いなくクランにとって良い人物であることは明白だった。リーダーの佐藤に足りないものを補ってくれている。佐藤にとってもクランメンバーにとっても本田と一緒に活動するのは良い勉強になるであろう。
石動としてもこのまましばらくクランにいて支えて欲しいと感じていた。場合によってはクランへの加入も検討してもらうといいだろう。
「本田さん、ありがとうございます。素晴らしい人が来てくれて助かりました。是非、このままクランを支えていってください。私も期待しています」
「ありがとうございます。私のできる範囲で頑張っていきます。宜しくお願いします」
2人は固い握手を交わした。本田としても凄い勢いで伸びている御影グループの相談役と繋がりができただけでもありがたいことだった。鷹見のようにおいしい話を持ってきてくれることもある。
ただし、石動は百戦錬磨、当然のことだがその裏にも警戒していた。石動は感じ取っていた。司さんが一人でこれほどの人物を連れてくるはずがない――裏で誰かがこの流れを作っている。それなりの人物が司に付いたに違いない。
だがまあ今はそれでいい。誰の意図であれクランが前へ進めるなら構わないのだ。
もしかしたら最終的にクランの乗っ取りを考えている人物かもしれない。でも仮にそうだったとしても、それはそれで良かった。今のクランは現状のままでは会社のお荷物でもある。
無償で引き取ってもらいたいぐらいの状況。それを月15万程度で少しでもプラスの方向に向けてくれるならばありがたい。乗っ取られたとしてもそのまま移籍するメンバーは会社での籍も外れる。そこまで戦力になっていない社員がいなくなるのもありがたいことだ。
もちろん簡単に乗っ取らせるのも良くはない。それなりにふっかけるつもりではある。会社側の持ち出しやリスクをできるだけ少なくして再契約という形にするのもありだ。
とりあえずは社長の息子が作ったクラン。存続はさせてやりたいが現状では存続させる理由は何もない。社長からクランの全権を預かっている石動としてはいつでもクランを解体する準備はできている。どのような形であれ、そのクランが立ち直るのは素直にありがたかった。
ただし、司を操るその裏の“誰か”の意図だけは今一つ分からない。
クランの乗っ取り程度ならば特に問題はない。それならば都度、状況に応じて適当に対応するだけだ。
しかしそれが会社に害をもたらす可能性のあるものだったら厳しい対応が必要。常にどういう動きをしてくるのか?監視しておく必要がある。
彼はそう考えていた。そうして本田という人物についても調べ始めた。