軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第107話「あらぬ誤解」

#第107話「あらぬ誤解」

定期報告の朝。俺はハンター協会へ行く前に、先にクラン『暁の牙』の拠点へ顔を出すことにした。許可を取りひよりも一緒に行くことに。

そこでいろいろと談笑していたのだが、黒澤さんと田嶋さんは急に真剣な顔になり

「それ以外にも、何か“秘密”にしてることないっすか?」

「俺も聞きたい。レン、まだ秘密あるよな」

と聞いてきた。やばい。もしかしてFSの件がすでにばれている?人化の件も?俺はどきどきした。これはハンター協会との契約で言えない話だ。

しばらくの沈黙の後、黒澤さんが語り出した。俺は何を言われるのだろうと緊張で困惑した。

「なら単刀直入に聞くが……お前が新宿の4階層で、綺麗な女性2人と一緒にいたって噂が立ってる。あれは本当か?」

うん?なんだ、その話か。胸の奥の最悪ワード(FS、人化)はとりあえず引っ込めてよさそうだ。それは別に隠してもいない。普通に正直に話できる内容だ。

「はい、女性2人と一緒という話でしたら先日行きましたよ、新宿ダンジョンの4階層。その日は"知り合いの女性2人"と軽く数時間、回しただけです」

「その綺麗な2人とやらは天川も知ってるのか? どういう関係だ。クランでも組んだのか?」

矢継ぎ早で来る。横にいたひよりがこくんと頷いた。

「はい。その2人ならば私も良く知っている女性です。何度も会ったことがあるので何も問題ありません」

「そうなんです。ひよりも知っている2人なので全く問題ないです。あとクランは組んでません。……まあ、ルナとはまた違った形での協力関係みたいなものですね」

――使役モンスターだなんて、さすがにまだ言えない。俺はさらっとごまかす。今度は大丈夫っぽいかな。

「そうか。天川も知っている人間か。なら別にいい、彼女に黙って密会しているわけではないんだな。あと協会側が知っている人間だったら人物としても問題はないだろうしな。……ただな」

「ただ、何ですか?」

「お前“ハーレム野郎”って言われてるぞ」

「はぁ? なんですか、それ?」

「男1人に綺麗どころ2人、肩並べて戦ってたらそう見える。『羨ましい、けしからん』って声が山ほど出てるぞ」

「俺もその噂を聞いた時はびっくりしたっすよ。あのレン君がまさか?ってね」

やめてくれ。俺の知らないところで風評被害が育っている。

「ハーレムじゃないです。断じて違います。女性2人と一緒にハンター活動していただけです。なんでそんな話になっちゃうんですか?」

「いや、普通ないからな、そんなパターン。女性ハンターはもともと少ないから女性の方が多いパターンはかなり珍しいんだ。必然的にうらやむ声も出てくる」

「レンくん、強くなるのはいいけど、この短い期間に彼女も作ってさらにハーレムって、男の夢を全部回収してません?世の中の男みんな敵にしてるっすよ」

「田嶋さん、だからハーレムじゃないですって、違いますってば!」

「……あの頃の純粋なレンはどこへ行ったのだろう?およよ……」

「いや、ここにいますからってここに。何も変わっていませんって」

くだけた空気が一段落すると、黒澤さんが少し声を落とした。

「冗談はさておき。クランを作る気になったら、必ず一声かけろ。騙して書面で縛ってくる連中もいる。契約で躓くのが一番もったいない」

「わかりました。今のところクランを作る予定は全くないので大丈夫です。もちろんクラン結成などに動くときは真っ先に相談します」

黒澤さんは満足げに頷く。ひよりが横目で「良かったね」と小さく笑った。

――内心では正直、冷や汗だった。FSのこと、人化のことを詰められたら困ったところだった。けれど今日は噂止まり。守るべき秘密は守れた。

「……あとな、レン」

「はい?」

「いつでもいいが、ダンジョンで一緒に討伐やらないか?うちのレベル4やレベル5を育てている時にでもどうだ?」

「それはいいですね!ぜひお願いします」

「わ、私も可能であれば勉強させてください。最近、ダンジョンに入っているので」とひよりも賛同する。

俺は他のレベル4やレベル5の人を知らない。他の人と一緒にやることで自分の立ち位置なども分かるかもしれない。しかも草クランの中ではトップと言われている『暁の牙』だ。一緒にやればいろいろと勉強になるだろう。

「なら噂の美女2人もお願いしたいっす!」と田嶋さんが横からしゃしゃり出てきた。

「すいません。それは無理です」と俺は即答。いつかは使役モンスターの秘密も打ち明けるとは思うけど今は無理だ。

「ちっ、レンはいじわるっす」と田嶋さんの声が弱くなる。そう言われても困る。こればっかりはどうしようもない。

その後、俺はもうしばらく話をしてからクラン『暁の牙』の拠点を後にした。ハーレムとかの噂は困った話だ。ほんとあり得ない。

それでも――気にかけてくれる背中があるのは、素直に嬉しかった。いつかは恩返ししたい。

***

レンとひよりが去った後、黒澤は田嶋に話かけた。

「まだ隠していることがあるようだったな」

「そうっすね。でも無理強いは良くないっすよ」

「だな。まあ、おもしろいやつだ。ほんの2年でレベル4になり、すぐにレベル5になるだろう。俺たちもすぐに追いつかれるかもしれんぞ」

「あのルナと一緒となると更に強くなりそうっす…いや、待てよ!」

「どうした田嶋? 何か気が付いたか?」

「いえ、レンが美女2人と一緒で更にひよりちゃん、ルナが一緒だったら4人ハーレムっすよ!」

「ぶっ!」

黒澤はその話に吹き出してしまった。でも確かにそうなるかもしれない。4人の綺麗な女性と一緒にダンジョンだと?想像してけしからんと思ったのは田嶋だけでなく黒澤もだった。

しかし2人はまだ知らない。そして想像さえもしていなかった。レンの周りの美女が更に増えるなんてことは……。