作品タイトル不明
44.
聖華に伝わるだろうか。
この言葉に込められた思いを。
「…………」
彼女はうつむいてる。
少し、彼女は、考えすぎるところがある。
余計なことを考えて、暴走する。
それを可愛らしいとも思うが、しかしこの場においては、そうあってほしくないと願った。
「俺は……」
ちゃんと伝える、そう思ったのだが……。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょ」
「ちょ……?」
聖華は顔を真っ赤にして、動揺しまくっていた。
先ほどまでの悲壮感はまるでなかった。
「そそそ、それって……こ、ここここ、告白的な……やつ……」
(なんでこんなときだけ、勘が鋭いんだ……)
言葉を尽くして、自らの思いを説明しようと思ったのだが……。
どうやら聖華は、一発で正解を引き当てたようである。
奉太郎は、脱力するとともに、後から猛烈な羞恥心が襲ってくる。
なんだ、さっきのムードもへったくれもない、告白は……。
「で、でもでもあのあの……そのその……できればもう少し……」
(ああ、やっぱり昼神さんも、もうちょっとムード作って欲しそう……)
あんな、勢いに任せた告白なんて、嬉しくないのだろう。
「いや嬉しいから! ほんと嬉しいから!」
(なんでこういうときだけ……はぁ……)
いつもの鈍感さ、アホさ加減はどこへやら。
ここに来て勘の冴える乙女ギャルだった。
(なら……うん。やるべきことは一つだ)
奉太郎の腹はすでに決まっていた。
「ごめんね」
「NO~~~~~~~~~~~~~~!」
(なんでまた元に戻るんだよ……!)
「そういう意味のごめんじゃないから。ちゃんと聞いて」
「どういう意味ぃ~……」
先ほどまで冴え渡っていた勘はもう品切れらしい。
いつもの聖華に戻っていて、奉太郎としてはちょっと安心した。
「ちゃんと、言うから」
「ちゃんと?」
「うん。こんなとこで、売り言葉に買い言葉みたいな感じで言われるの、いやなんでしょ?」
「うん」
即答だった。
それはそうだろう。
自分だってもっと、ちゃんと言葉を選んでおきたい。
「だから、仕切り直し。ちゃんと考えるから。君が……喜ぶように」
要するにデートのお誘いだった。
デートをし、ムードを作って、改めて……告白する。
奉太郎はそう言いたかった。
「うー……」
しかし聖華は不服そうだった。
「だめ?」
「うん。今すぐ欲しい」
「だからそれじゃムードが……」
「それも重要だけど!」
若干の面倒くささに、奉太郎は苦笑する。
(あばたもえくぼって、こういうことなのかな)
面倒くささが、逆に愛おしい。
「じゃあ、今から行こう」
「行く? どこに?」
「だから……デート」