作品タイトル不明
41.
昼休みも終わりに近づき、奉太郎たちは、クラスに戻ろうとした。
帰ろうとする聖華を、深雪が呼び止める。
せっかく奉太郎と一緒に帰ろうとしたのだ。
それを止められて、むぅと唇を尖らす聖華。
「……阿智くん、ごめんなさい。聖華をちょっと借りる」
「わかった。あとでね、昼神さん」
去っていく奉太郎の背中を見て、聖華が深々とため息をつく。
一緒に帰りたかったと。
「……バカ」
「なによぅ、藪から棒に」
深雪はこんこんと、お説教をする。
さっきのは奉太郎からの絶好のパスだったと。
何を見逃し三振を決めてるのだと。
「本がなんでパスなの?」
「……気のある相手にしか本なんて貸さない。貸し借りから、色々展開させられるでしょ。一緒に本を選びに本屋にいくとか。お礼にお菓子を贈るとか」
聖華は目を剥いて、その場に膝をついた。
己の過ちに今更ながら気付いたようである。
なんたる失態。
「い、今からじゃ遅いかなぁ……」
泣きそうな聖華に、深雪は「知らないわ」と一蹴。
だがこれは、あえて冷たく突き放すことで、聖華の危機感を煽ろうとする、深雪の作戦だった。
なんだかんだ言って、深雪は友達である聖華の幸せを願っているのである。
「あ、あたし! 行ってくる!」
「……うん。それがいい」
聖華は深雪にお礼を言うと、猛烈ダッシュ。
奉太郎はまだクラスに戻っていなかった。
大声を出したら、目立ってしまう。
だから彼の元へいき、肩を叩いてこういった。
「本、読みたい! ちょうだい!」
……奉太郎は目を丸くしていた。
ちょうだい、それはつまりくれと言ってるのだ。
貸し借りという話だったはずだが。
しかし奉太郎は聖華の間違いを指摘することはなかった。
苦笑しながら言う。
「あげられないけど、貸してはあげられるよ」
聖華は自分の発言のばかっぷりに悶え、しかし奉太郎の優しさに、さらに身悶えするのだった。
この場が学校でなかったら、そして奉太郎が目の前にいなかったら、大声で好きだと絶叫していたところである。