軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

026 依 頼 5

さすが、地元のハンター達。

ちょっと人数が少なかったかな、と思ったけれど、木の枝や 蔓(つる) を使って上手く運んでくれた。

予想重量をひとり当たりが持てそうな重さで割って、と考えて人数を決めたけれど、オーク丸ごとというのは、穀物袋や解体した肉塊を運ぶのとは全然違った。

前のパーティで見習いをやっていた時には、オークを狩っても現場で解体してそれぞれが担げるだけの肉を持ち帰っていたから、丸ごと運ぶなんてことはなかったんだよね……。

まあ、それは殆どのパーティが同じだと思うよ。

森で狩ったオークを丸ごと持ち帰れるパーティなんか、ないよねぇ……。

つまり、私達『フェンリル』は、圧倒的な収益率を誇ることができるわけだ。

……フェンの能力を上手く隠せる範囲内であれば、だけどね。

「現場で 解体(バラ) して運んだ方が、楽ちんだったんじゃねえか?」

「それだと、俺達も荷馬車も血塗れになっちまうし、専用の道具もなしで解体のプロもいないんじゃ、上手くやれねえよ。大物の解体ってのは、難しいんだよ……。

それに、血の臭いを撒き散らすと、魔物が集まってくるからな。

今回来てるのは俺達下っ端ばかりだから、オーガの群れとかが来たらどうすんだよ」

「ひえっ!」

あ~、そうなんだよねぇ……。

本当は、現場で内臓を捨てて軽くした方が良かったのだろうけど、魔物が集まってくるし、安くしか売れない内臓はみんなにあげるって言っちゃったからなぁ……。

この人達にとっては、内臓でも貴重な食材だものね。一応は、お肉なんだから……。

私達も、 無料(タダ) で貰えるなら、大喜びだったよ。

……うん、ここは過去形で言っておこう!

そして、こんな荷運び仕事を受けてくれるのは、Cランク下位までだ。

Cランク中位とかは、たとえお金に困っていても、プライド的なものがあるから、こんな仕事は絶対に受けない。

まあ、そういう仕事は下級ランクの者達に譲ってやらねば、という善意もあるのかもね。

とにかく、ここにいるハンター達は弱い。

オーガどころか、オークであっても複数相手では分が悪いだろう。

「おい、さっさと運んで引き揚げるぞ! 急げ!!」

オーガの群れ、という言葉にビビったのか、ひとりがそう声を掛け、皆、慌てて運ぶ速度を上げた。

* *

「何とか積み込めた……」

はあぁ、と息を吐く、ハンター達。

やはり、荷馬車に積み込むのに大苦戦した……。

フェンの収納にはまだ2頭のオークが残っているけれど、これは同じ手は使えないなぁ……。

毎回10人以上雇うのもアレだけど、それ以前の問題として、私達がそんなに立て続けにオークを狩れるということが皆の懐疑心を煽るだろうし、そもそも毎回こんなに街道の近くでオークを狩ったということ自体が大問題だ。

1頭を、1回だけ。

それならば、まだ何とかなる。

たまたま、偶然にも必死で放った攻撃が急所に当たった。

たまたま、偶然にも仲間割れかオーガにでも襲われたのか、瀕死のオークに出会った。

たまたま、偶然にもはぐれオークが街道のすぐ側に迷い出てきた。

……それなら、何とか説明がつかなくもないし、大きな問題はない。

でも、オークが3頭も街道近くに現れたという話になれば……。

そんなの、オークが街道を通る人間や馬車を襲おうとしていた、街道がオークの狩り場になったと思われて、街道がしばらく通行止めになったり、オークの大規模討伐が計画されたりしちゃうよね。居もしない、街道付近を狩り場にしたオークの集団を求めて……。

……それはマズい。

そんな手間とお金を掛けさせて、商人や旅人に大きな迷惑を掛けて、もし後になってそれらが全て嘘だったとバレたら……。

ハンター資格抹消の上、ギルドを永久除名。

……それくらいで済めば、まだマシな方かも。下手をすると、莫大な賠償金を請求されたり、縛り首や斬首刑とかもあり得たりして……。

……。

…………。

………………。

ぎゃあああああああ〜〜!!

……はぁはぁはぁ……。

駄目だ!

『たまたま、偶然にも街道のすぐ側で作戦』は、今回限りだ! 少なくとも、もうこの国では使えない。

でも、他にフェンの能力を隠してオークを丸ごと納入する方法がない……。

どこかで解体して、毎回持てる分だけ納入する?

そんなの、毎回オークを狩っていることになっちゃうよ!

しかも、毎回狩っているなら、常に一番高く売れる部分を持ち帰るはずなのに、同じ部分は持ち帰らず、段々と安い部分になっていく……。

……怪しい。

そんなの、怪しすぎるでしょうがっ!

あああ、どうすれば……。

「嬢ちゃん、出発するぞ~!」

「あ、ハイ、お願いします……」

考え込んでいたら、御者役の人に声を掛けられた。

イカンイカン……。

荷馬車にはオークだけ積んで、御者役の人以外は、全員が歩き。

たいした距離じゃないし、荷台に座っていたら、流れ出すオークの血で服が汚れちゃうからね。

それに、クッションになるものもなしで荷馬車に乗るというのは、お尻と内臓にクる……。

だから、こんな短距離で荷馬車に乗ろうなんて考える者はいないよ。

馬の負担も増えるしね。重くなりすぎて車軸が折れたりすれば大変だし……。

リゼルは、私と並んで歩いているけれど、ずっと黙ったままだ。

だって、下手に私と話せば、 喋っちゃいけないコト(・・・・・・・・・・) を口に出しちゃいそうだものね……。

この状況で私とリゼルが話すことと言えば、オークを狩った時のことしかないよねえ。

今、全く関係ない話……明日の天気とか、美味しい定食屋の話とか……をするのは明らかに不自然だよね。何か、『オークの件については話すと都合が悪いから、誤魔化すために当たり 障(さわ) りのない話題にしています』って書かれた木札を首から下げているも同然だ。

そういうわけで、黙り込んでいる私達と、ハンターのルール上、聞きたいけど聞けない、だけど知りたい、というような顔で、チラチラと私達の方を見ている皆さん。

……気持ちは分かる。

分かるけど、何も聞かないで!

* *

そしてギルドの裏手、解体場へ荷馬車を入れて、担当者の指示でオークを降ろした。

載せるのに較べて、降ろすのの何と楽ちんなことか……。

「じゃあ、みんな並んでくださ~い! 銀貨5枚ずつ渡します。

……2度並んだら、全額没収しますよ!」

みんな笑っているけれど、いるんだよ、そういうコトをするヤツが……。

まあ、この程度の人数なら、2度並びはすぐに分かるけどね。

とにかく、さっさとお金を配って、と……。

あ。

「ごめんなさい、銀貨が60枚もなかったわ……。

窓口で崩してもらうから、支払いはオークの代金を受け取った後でお願い!」

常に全財産を身に着けているから、当分使う予定のない分は金貨にしてあるのだ。

「……知ってた……」

「常時懐に60枚以上の銀貨を入れてジャラジャラさせてるヤツなんか、いねえよ!」

そう言って、また笑われた。

……まあ、オークの現物があるのだから、依頼料を踏み倒される心配がないのが分かっているから笑っていられるのだろう。

そうでなきゃ、額に青筋を浮かべて詰め寄られてるところだよ。

そして、解体係のおじさんに頼まなくちゃね。

「内臓は、心臓と肝以外は輸送してくれた皆さんにあげてください!」

「おう! 太っ腹だな、嬢ちゃん!」

「失礼な! 私は太っていませんよっ!!」

私の お嬢様ジョーク(・・・・・・・) で輸送員と解体係達から笑いを取って、内臓待ちの皆さんを置いて、リゼルと共に先に本館の窓口へ。

勿論、解体場長から査定額の 代用貨幣(トークン) を受け取ってからね。

……フェン? フェンは、帰路からずっと私の肩の上だよ。

まあ、歩幅が狭いから、大目にみてあげようかな。