作品タイトル不明
027 依 頼 6
「…………」
換金のため、窓口で 代用貨幣(トークン) を差し出したところ……。
なぜか、受付のお姉さん……少し目付きが怖い……に無言で睨まれた。
あ~、多分『新人がオークを狩るなんて無茶をしてはいけません!』とか、『大丈夫ですか! お怪我をなさったりは……』とか心配して、叱ってくれてるのかな?
「……ギルドの受付の真ん前で、堂々とギルドを通さない直接依頼の募集をなさいませんように!
ギルドを通されませんと、当方に手数料が入りませんし、何か問題が起きた時にギルドが介入したり救済措置を取ったりできなくなりますので!」
あ、全然違った!
これ、ただ怒られてるだけだ……。
確かに、あれは飯屋に弁当を持って入って、勝手にテーブルで食べるみたいな行為かも。
……そりゃ、怒られるに決まってるよ……。
「「すみませんでしたあぁ〜〜!!」」
「わふん……」
ふたりと一匹で、頭を下げて全力謝罪!
いや、確かにこれは私達が悪かった……。
でも、ああいう募集の仕方をするのに、わざわざギルドを通さないと駄目だとは思わなかったんだよ……。
「まあ、ああいうケースなら仕方ないですけどね……」
ほら!
よし、私は許された!!
「まあ、あれを見ていましたから、オークの納入は間違いないでしょう。
はい、素材の代金です。常時依頼の間引きや特定場所の討伐依頼は出ていませんから、依頼報酬はありません」
「はい、分かっています。事前に依頼を受けたりはしていませんからね。
今回のは、ただ襲われて反撃しただけです。それが、運良く……」
私の説明に、目を 剥(む) くお姉さん。
あ~、私達は他のパーティに作業員の募集や換金を頼まれただけで、オークを狩ったパーティは輸送員達と一緒に解体場で待っているとでも思っていたのかな。
まさか、私達が自分でオークを倒したとは思ってもいなかった、と……。
いや、そりゃ私が受付嬢だったとしても、絶対にそう判断するよね。
私とリゼルが狩れそうなのは、 角ウサギ(ホーンラビット) か草原リスくらいだと思われているだろうからね。
明らかに前衛は務まりそうにない、非力な新米魔術師コンビ。
そりゃ、オークに立ち向かうのは自殺行為だと思うよね。たとえそれが、1頭だけであっても。
まさかそれが3頭相手だったとは、思いもしないだろうなぁ……。
……そしてお姉さんは、ささっと胸の前で聖印を切って……。
「女神の御加護に、感謝を……」
あれ、私達のために、女神への感謝の言葉を 紡(つむ) いでくれた……。
やっぱり、いい人じゃないの。
……目は少し怖いけど……。
ぺこりと、軽く頭を下げてお礼の意思表示をしておいた。
リゼルも一緒に頭を下げている。
こういう時には、言葉を口にすることなく、黙って動作で礼の気持ちを表せばいいのだ。
「……あ、すみません、小金貨8枚分は銀貨でお願いします……」
「ああ、輸送員への支払いがありましたね……」
ちょっと眉をしかめているのは、受付嬢たる者それくらいのことには気付いて当然、言われるまでもなくその分は銀貨で支払うのが常識。客に指摘されるまで気付かなかったというのは受付嬢の名折れ、とか考えて、ぐぬぬ、と思っているんじゃないだろうか……。
もしくは、両替手数料を要求しようと考えているとか……。
……あ、普通に渡してくれた。しかも、小さな革袋に入れて……。
え? 両替手数料を取るどころか、革袋はサービス?
太っ腹!!
……まあ、受付嬢さんの自腹というわけじゃなくて、ギルドの経費なんだろうけどね、消耗品費とかの……。
よし、解体場へ戻って、支払いだ!
オークの血やら泥やらで汚れた連中がゾロゾロと入ってくるのは迷惑だろうから、輸送作業をしてくれたみんなには解体場で依頼料を払い、飲食する前にいったん帰宅して水で身体を洗い着替えるよう指示しよう。
飯屋や飲み屋に迷惑を掛けるわけにはいかないよね……。
* *
「残りのオークは、当分の間、フェンの収納魔法に入れたままね……」
「どうにかして、換金する方法はないかなぁ……。
近隣の町で今回と同じやり方をすると、すぐに噂が広まってこの町にも届いちゃうよねぇ……」
リゼルが言う通り、同じやり方はもうできない。
あああ、どうすれば……。
「とりあえず、重い納入物を持ち帰らなくてもいい依頼ばかり受けちゃどうだ? 元々、俺がいなきゃそうするしかなかったんだろ?」
「う、うん、それはそうだけど……」
フェンが言う通り、私とリゼルのふたりだけで、輸送力が求められる仕事なんかできるわけがなかった。だから、不自然なことをやって疑いの目を向けられないようにするには、それしかない。
……それは、分かってる。分かってるんだけど……。
「でも、それじゃあ稼げないんだよね……」
そう。リゼルが呟いた通り、普通にやっていたんじゃ、最低ランクのハンターと見習いのふたり組、しかもどちらも体力のない小娘とあっては、宿代と食費を稼ぐだけでいっぱいいっぱい、着替えすら買えないだろう。
前衛職や弓士と違い、武器や防具にあまりお金が掛からないということだけは救いだけど、それは魔術師ふたりだけというバランスの悪さを表しているだけだから、全然嬉しくはない。
と言うか、ふたりだけでは、バランスも何もない。
これで、もしフェンがいてくれなければ……。
「高価な薬草とか、珍しい小動物とか、そういったものを狙うのはどうだ?」
「「……珍しい、小動物……」」
「何でふたり共、そこで俺を見詰めるんだよっ!!」
「……あ、ごめん……」
そりゃ、私達が知っている身近な『珍しい小動物』と言えば、フェンしかいないよね。思わず視線が向くのは仕方ないでしょ!
「護衛依頼は……、無理か。新米の少女ふたりを護衛に雇うような商人はいないよなぁ」
フェンが、そんなことを言った。
……何よ、ソレ……。
「あんた、どうしてそんなに人間のことに詳しいのよ! 生後半年の野生動物なんでしょうが!
……おかしいわよ! おかしいわよね!!」
「「あ~……」」
フェンとリゼルが、困ったような顔で私を見てる。
……え?
私、何か変なこと言った?
私がおかしいの、コレ?