軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

025 依 頼 4

「オーク1頭丸ごとを街道まで運んで荷馬車に積み込み、ここまで輸送するための人手を募集します!

場所は森の境界近く、ここから一番近いあたりで、街道まで担いで運ぶ直線距離は100メートルくらい。

人数は、10人くらいいれば大丈夫かな……。

報酬は、ひとり当たり銀貨5枚と、心臓と肝以外の内臓をみんなで山分けしてくれていいよ。

ランク制限なし、年齢制限は10歳以上!」

ハンターギルドに入るなり大声で叫ばれたセリアの言葉に、ざわめくハンターとギルド職員達。

それも無理はない。

オークは、Cランクのパーティであれば狩るのはそう難しくはない。

しかし、森の深部から荷馬車が使える街道まで運ぶのが至難の業であり、狩った者達が持ち帰り換金できるのは、せっかく狩った獲物の、ごく一部だけである。

……それが、丸ごと1頭分。

街道のすぐ近くで狩れたという幸運によるものであろうが、滅多にないことである。

そしてそれだけでも充分驚くべきことであるが、問題はそれだけではない。

最近この町に来たばかりの姉妹。

15歳の駆け出しと10歳の見習いという、パーティとしてこれより下はないという、年齢的にも経験的にも人数的にも最低、最下層のパーティである。

オークはおろか、数匹のゴブリンやコボルトにも負けそうな最弱コンビ。

……それが、オークの輸送依頼?

あり得ない。

皆がそう思い、静寂に包まれるギルド内であるが……。

「「「「「「……あ!」」」」」」

皆が、はたと気づいた。

オークを狩ったパーティが、たまたま通り掛かったこの子達に輸送の手伝い要員を集めるよう頼んだのだな、と……。

皆で現場を離れれば、他のハンターに横取りされたり、魔物に食い荒らされたりするかもしれない。

かといって、メンバーを現場残留組と手伝い募集組に分けると、もし他のオークやオーガが来るとマズい。

なので、たまたま出会った少女ハンターに手伝い募集と荷馬車の手配を頼むのは、何の不思議もないどころか、至極当然のことである。

少女達にとっても、銀貨5枚も貰えれば充分であり、大喜びで引き受けたのであろう。

そして、足の遅い妹は現場に残し、姉の方が全力で走ってきた。

完全に納得できる、ごく普通のことである。

「よし、引き受けた!」

状況を理解し、納得したらしきハンターから、参加表明の声が上がった。

僅かな時間で銀貨5枚というのは、美味しい仕事である。

銀貨5枚もあれば、夕食をたらふく食ってエールを飲みまくれる。

しかも、オークの内臓を店に渡せば、手間賃だけで料理してもらえる。

それに、幸運を引き当てたハンター仲間を手伝ってやるのも、そのお 零(こぼ) れに 与(あずか) るのも、悪くない。ハンターというものは、助け合いが大事なのである。

「俺もだ!」

「俺も行くぞ!」

次々と上がる、参加の声。

そして、年齢制限が10歳以上ということで、たまたまパーティの休養日でギルドにいたらしい見習いが食い付いた。

見習いにとって、銀貨5枚と内臓肉の現物支給というのは大きかった。

勿論、それを見越して見習い達へのサービスとして年齢制限を下げたのである。

色々と苦労してきたセリアは、見習いには優しかった。

しかし、あまり子供ばかりでは荷馬車に積み込むための人力が足りなくなるおそれがある。

なので、見習いがふたりしかいなかったのは、幸いであった。

「荷馬車は、馬込みでギルドのが借りられるぞ。御者は俺ができるから、格安で済むぜ!」

応募してくれたハンターのひとりがそう言ってくれたので、破顔するセリア。

「では、すぐに出発します! 皆さん、よろしくお願いしますね!」

「おう!」

「任せろ!!」

参加希望者が多かったのと、荷馬車と御者の代金が安く上げられたためもあり、結局12名を雇うことになった。

解体済みであればともかく、丸ごと1頭のオークというのは街道までの輸送や積み込みが結構難しそうであり、ハンター達にそう指摘されたからである。

……まあ、ふたり増えても小金貨1枚である。下手に人数不足で立ち往生するよりは、ずっとマシであろう……。

* *

そして、荷馬車を借りて森へとやって来た一行。

街道脇に荷馬車を駐め、御者役のひとりを残し、セリアの案内で皆で森に入り……。

「あ、お姉ちゃん、こっちだよ~!」

リゼルの声が聞こえ、皆がそちらへと向かうと……。

地に横たわるオークの側にいるのは、姉妹パーティの妹の方と、姉の使い魔である仔狼だけであった。

「……え?」

「依頼者のパーティは?」

皆が疑問に思うのも無理はない。

この姉妹がオークを輸送するための人手を集めた、皆が納得する理由。

それが、根底から 覆(くつがえ) されたのだから……。

「……あ、あの、このオークを狩ったパーティは……」

ハンターのひとりからの質問に、リゼルが右手の親指を立てて、自分の顔を指した。

そして、次に姉を指し、……そして最後にフェンを……。

「「「「「「…………」」」」」」

……まあ、たまには他の魔物と戦った直後で瀕死の状態のオークと出会うこともあるだろう。

投げた槍がたまたま急所に刺さったり、目の前で転んだオークが打ち所が悪くてポックリ、とか……。

((((((……ねえよ! そんな たまたま(・・・・) なんか、ねえよっ!!))))))

皆、心の中で自分の考えにセルフ突っ込みを入れているが、それを口に出すことはない。

他のハンターを侮辱するわけにはいかないし、『どうやって狩ったのか』などという、そのハンターの以後の生死に関わるような情報を興味本位で聞き出すこともできない。

そして皆には、困ったことがあった。

現場にはオークを狩ったパーティがいると思っていたから、この人数で大丈夫だと思っていたのである。

それが、現場にいたのが10歳の少女ひとりだけとなると、姉の方も戦力にはならず屈強な男が10人だけ……見習いふたりは半人前扱い……では、100メートルの輸送と荷馬車への積み込みがかなり厳しい。

重さ的には、人数で割れば持ち上げられない重量ではない。

……しかし、未解体のオーク丸ごとというのは、 持ちにくい(・・・・・) 。

身体がぐったりと崩れ、持ちにくいため見た目以上に重く感じられるのである。

しかも、内臓を抜いていない……。

前途多難。

そう思い、少しげんなりとした顔の、ハンター達。

しかし、依頼料は悪くない。

少し頑張れば、今日は豪華な夕食と旨い酒にありつける。

そう考えて、少しでも楽ができる輸送方法を考えるのであった……。