軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

024 依 頼 3

ざしゅっ!

一撃必殺!

転んで地面に横たわっているオークの首を、右前脚で一閃。

いや、岩を砕けるんだから、オークの 頚椎(けいつい) くらい粉砕できるよ。

頭部を潰すこともできるけど、眼球が飛び出したり脳みそが飛び散ったりすると、ビジュアル的にイヤ~ンな感じだし、俺の身体が汚れるからな。

そんなのが付いた身体をセリアに洗ってもらうのは、申し訳ないよな……。

他の2頭も、セリアとリゼルの魔力弾撃ちまくりで、かなり削られているな。

魔力量が無限に近いセリアはともかく、リゼルは高威力の魔法を撃ち続けるのはキツいだろう。

そっちも、俺がトドメを刺すか……。

ざしゅっ!

ざしゅっ!

うむうむ。

あまりボロボロにしない方が、良い値で売れるだろうからな。

「一応、危なげなくオーク3頭を倒せたわけだけど……。

これって、俺がいないとどうなってた?」

うん、ちょっとそれが気になったんだよな。

そして、俺の質問に対する、セリアの返事は……。

「う~ん……。ちょっと危ないかな……。

私の顔面攻撃が確実に決まれば、一時的に接近を阻むことはできる。

でも、毎回、今回みたいにこっちを舐めてゆっくり近付いてくるとは限らないし、腕で顔面を護るかもしれないし、目を潰せないかもしれない。私が狙いを外すかもしれないしね。

そして、見ての通り、私もリゼルも、一撃でオークを倒せるだけの威力がある魔力弾は撃てない。

……まあ、それは普通のことなんだけど……。

魔術師が遠隔攻撃でオークやオーガを一撃で倒せたら、前衛職なんか要らないよね。

そして、上手くタコ殴り状態に持ち込めても、トドメを刺すのに魔力を使いすぎる。

それじゃ、あっという間に魔力切れになるわよ」

「私は、もっと強力なのも撃てるんだけど……、やり過ぎると数発で魔力切れになっちゃうから、デカいのを撃つよりさっきくらいのを数撃った方が効率的なんだよ」

リゼルが、セリアの説明を補足した。

……ま、そりゃそうか。

物理的にトドメを刺そうにも、非力なふたりじゃナイフや短剣であの筋肉や脂肪層を貫けるとは思えない。

首筋を狙おうにも、暴れるオークの手足が当たれば、紙装甲のふたりならちょっと触れただけで吹き飛ばされて、重傷か即死だ。

かといって、離れた場所からちまちまと魔力弾を撃ち続けるというのは、魔力量的に問題がある。

もし、敵が4頭以上であれば。

魔力を消耗した帰路に、別の魔物と遭遇すれば。

……色々と、考えるべきことは多いだろうなぁ……。

ま、ともかく、俺がすごく役に立っている!

それがアピールできたのは、ラッキーだったよな。

「……でも、勿体ないなぁ……」

「え、何が?」

何か、リゼルが残念そうに溜息を吐いている。

なので、そう問い掛けたところ……。

「だって、オーク3頭だよ、オーク3頭!

素材を売ればかなりのお金になるのに、私とお姉ちゃんのふたりで運べるの、ほんのちょっぴりだけだよ!

殆どを捨てて行かなきゃなんないんだよ。金貨を捨てて行くのと同じなんだよっ!

あああああああ、勿体ないよおおおォ!!」

え?

「……全部持って帰ればいいじゃん?」

「「え?」」

ふたりとも、何、不思議そうな顔をしているんだ?

「いや、見せただろ、俺の収納魔法。亜空間に物を入れておく魔法……」

「……え?」

「……は、入る……の……?」

「オーク3頭くらい、余裕だよ」

「「やったああああぁ〜〜!!」」

よし、俺様、超役に立ってるぞ!

この調子だと、俺がパーティリーダーになる日も遠くないかも……。

「……あ。

でも、フェンにそんな能力があることがバレたら、マズいんじゃあ……。

フェンを手に入れるため、お姉ちゃんを殺して使い魔契約を破棄させて、自分がフェンの新たなマスターに、とか考える貴族や商人が……」

「ぎゃあああ〜〜!!」

リゼルの 怖い説明(・・・・) に、思わず悲鳴を上げるセリア。

いや、でも、あり得る……というか、そう考える者が続出して当然か。

俺を連れていれば、持ち込み税や持ち出し税を取られることなく、そして荷馬車や護衛を雇うことなく、大量の荷を運べるわけだ。

……うん、今の契約者を殺して奪い取るよな。普通に考えて……。

「フェンの収納魔法は、絶対に秘密!!

少なくとも、私達が名を上げて、フェンは私達の仲間であり奪おうとすれば手痛い反撃を食らうとか、奪っても犯人がすぐにバレて捕らえられるという状況になるまでは、内緒にしないと……」

セリアが、蒼い顔でそう熱弁を振るっているけど、まあ、焦るのも無理ないか……。

「でも、運べないと、お金にならないぞ?」

「……だって……」

まあ、お金より命の方が大事だよなぁ……。

「大丈夫! 要は、普通の方法で運んだ、ということにすればいいのよ。

それも、 最後の部分だけ(・・・・・・・) 、ね。

経路の大部分はフェンの収納魔法で運んで、町側の森の外縁部が街道に接しているところから、荷馬車で運ぶ。

荷馬車と御者のレンタル代と、森から街道までの最後の100メートルくらいを運んで荷馬車に積み込むための 人足(にんそく) 代が必要だけど、オーク丸々1頭の販売金額に較べれば、大した額じゃないよ」

「あ……」

確かに、オークは森の中で狩っても、荷馬車が使える街道まで運ぶのが大変で、ハンターが背負える分しか持ち帰れない。

それが、街道のすぐ近くで狩ったということにして、丸々持ち帰ることができれば……。

荷馬車代や人件費を払っても、充分な稼ぎになるだろうな。

「……1頭だけなの?」

「街道のすぐ近くで2頭も3頭も狩れたというのはマズいでしょ。

そもそも、私達だけでオークが狩れたということ自体が信じてもらえるかどうかってレベルの話なのに……」

「あ……」

リゼルの説明に、ぐうの音も出ない、セリア。

さすが、セリアが自慢するだけのことはあるな、リゼルのヤツ……。

「ま、俺の収納魔法の中はモノが傷まないからな。腐ったりしないから、また機を見て売ればいいだろ。

とりあえずの資金が手に入れば、宿代や食費を気にしなくて済むし、風呂屋にも通えるだろ?」

「「おおっ!!」」

右腕を天に向かって突き上げて、歓びの叫びを上げる、セリアとリゼル。

うむうむ、可愛い少女に喜んでもらえるのは、俺も嬉しいぞ!