作品タイトル不明
第943話 ドゴールさんとマグノリアさんの結婚式(3)
買い出しに行った翌日、村へと購入品を持ってやってきた。
集まった場所は、村の中の寺子屋。椅子やテーブルを片付けると村で一番部屋が広いので、ここに村人たちが集まった。
すっかり、ドゴールさんたちの結婚式は、村のお祭り扱いだ。
持ち帰った素材はもちろんだけど、特に喜ばれたのは結婚情報誌とドレスブック。文字は読めなくても、イラストや写真に、ママ軍団だけではなく、おばさまたちも大興奮。
ドレス以外のアクセサリーやバッグのデザインにワキャワキャする姿が可愛くて、思わず、ニヨニヨしてしまう。
中でも、主役であるマグノリアさんは頬を染めながら、ママ軍団と写真に見入っている。
「ねぇ、お母様、このお姫様みたいなのがいいんじゃない?」
十歳になったフェリシアちゃんが、キラキラした目でまさに『プリンセス』ラインのドレスを指さしている。
すっかりおしゃまな女の子になったフェリシアちゃんは、村の女の子の中でも飛びぬけて可愛く育っている。街に行ったら、変な男たちに狙われそうで、今から心配になるくらいだ。
兄のザックスくんも同じなのか、冒険者ギルドの仕事を終えて村に戻ってきている時には、孤児院の男の子たちに剣の訓練をつけているそうだ。
……シスコンで、八つ当たりしているわけではないと思いたい。
「素敵ね。でも、もう、お姫様な年齢ではないから」
困ったような顔でフェリシアちゃんに答えるマグノリアさんだけれど、まったくそんなことはない。
――いやいや、貴女の年齢、関係ないですから!
すでに三十代半ばだというのに、二十代前半くらいに見えるのだ。元から美人だったのもあるが、村で生活するようになったのもあるかもしれない。
私の思いは皆の思いと重なったと思う。
まるで聖母と天使みたいな 母娘(おやこ) の姿に、その場にいた女性陣は、デザインはプリンセスラインで決定、となった瞬間だった。
「それにしても、このキラキラした宝石は凄いねぇ」
「このカットは、ドワーフたちでも無理だろう」
「何をー! ……と言いたいところだが、この小ささは厳しいな」
「この薄くて小さくてキラキラしてるのも、どうやって作ってるんだか」
「真ん中に小さな穴が開いてるな」
「小人族なら、ギリギリいけるか」
「あいつらのは、馬鹿高いぞ?」
「ああ、王侯貴族が高い金出してるヤツな」
「そもそも、素材はなんだ? こんな銀色や金色なんて、魔物の鱗でも見たことはないぞ?」
ラインストーンやビジュー、スパンコールを手に盛り上がってるのはドワーフたち。その背後にはアクセサリー職人のアビーさんが興味津々で覗き込んでいる。
「見ておくれよ、この生地!」
「こんな艶やかなのは見たことも、触ったこともないよ」
「テレンとした触感……クリスタルスパイダーの糸でも、極上のでもなければ、ここまでにはならないね」
「え、これ、向こう側が見えるぞ!?」
「触れても破れねぇ……どうなってんだ」
「まぁ、まぁ、まぁ! このレースも素敵ね!」
「……私らも編んでみるかい?」
生地関係で盛り上がっているのは、毛梳きチームのジジババ軍団。いつもホワイトウルフの毛で糸を紡いだり、布を織ったりしているからか、私が持ってきたレースや生地で、あーだこーだと熱中している。
――ウフフ。どんな結婚式になるか、楽しみ~。
私も村人たちと一緒に、あれはどう? これはどう? と盛り上がるのであった。