軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七十六話 反断罪戦線、再び

クローデリアと俺は、冒険者ギルドの受付の奥、ギルマスの応接室に通された。

そこには先ほどの声の主、聖女エリシアが座っていた。

「クローデリア……。と、あなたはどなたかしら?」

当然、エリシアは俺のことを覚えていない。

「ユウマ……。ユウマ・クスノキと言います。聖女エリシア様」

エリシアは聖女を前に臆する様子も見せない俺に少し怪訝な表情を見せる。

「そう、ユウマさん……。初めまして。

私が口を出すのはおかしいかもしれませんが、ギルドマスターにはどういったご用件でしょうか?」

そう尋ねられた俺は、エリシアをまっすぐ見る。

「その用件をお伝えする前に、一つお伺いさせていただきます。ひょっとしてエリシア様とギルドマスターは、『 反(アンチ・) 断罪(ヴァーティクト) 戦線(・フロント) 』の活動についてお話をされていたのではないですか?」

エリシアの顔がいよいよ疑念の色に染まる。

「なぜ『反断罪戦線』のことをご存知なのですか?」

逆に、まだ公表していないことになっているの?

俺の「名喰い」によって、まるで辻褄合わせするように歴史が捻れてしまっているようだ……。

エリシアも、そもそも一度も投獄されていないことになっているのだろうか。

「まさか……王政府の方ですか? クローデリア……どういうこと?」

不審に思ったエリシアがクローデリアを見る。

「ユウマには不思議な力があるから何でも知っているの。彼は王政府の者ではないから安心して」

エリシアが再び俺のほうに向き直る。

「そう。それならクローデリアに免じてお話を伺いましょう。『反断罪戦線』にようこそ。どこまでこの組織のことを知っているのかは存じませんが……」

「あなた方が王政府に反発し、欺瞞に満ちた断罪をやめさせようとしていることは知っています。『断罪の起源』も知っています。災害と戦災の時代に、辺境の大貴族が冤罪により断罪された歴史のことも」

穏やかなエリシアが驚いた表情を見せる。

「それは聖女しか封印を解けない文献だけに記載されている歴史のはず……。国王が他人にその歴史を明かすとも思えない……。あなた、何者なの?」

あなたから聞いただけですけどね。あなたが話したのを忘れているだけで。

「あなたのように、俺も女神の祝福を受けているんです」

うん、それ自体は嘘ではない。

「あなたが只者ではないことはわかったわ。それで、『反断罪戦線』にどういったご用なのかしら?」

俺は軽く息を吸う。

そして口を開く。

「『反断罪戦線』に協力したいのです。いや、違うな。『反断罪戦線』に協力してほしいのです」

「……どういうことかしら?」

「クローデリア様も俺も、あなたたちと同じく、王政府の今の断罪に異を唱える者です。そしてあなたたち『反断罪戦線』だけでは、この戦いは失敗します。女神に特別な祝福を受けている俺にはわかるのです」

「そう……。それで、あなたに協力すればうまくいくと仰るの?」

「はい」

はっきりと俺は即答する。

聖女は俺の目をじっと見つめる。

「嘘ではなさそうね。その自信がどこから来るのかは存じませんが……クローデリアも協力してくれるのよね?」

クローデリアは頷く。

「ユウマを信じれば間違いないわ」

あなたの俺への盲信もちょっと理解できないところではあるが……。

エリシアが大きく息を吐く。

「わかったわ。クローデリアがそこまで言うのであれば信じましょう。私も『反断罪戦線』の活動に少し行き詰まりを感じていたところなの。その間にも不当に断罪されていく人々がいるというのに……。あなたたちが活路を開いてくれるかもしれないわね。あなたたちが今日、ここを訪れたことを、やはり運命なのだと信じましょう」

そう言って、エリシアは部屋の隅で縮こまる、この部屋の主を見やる。

「いいわね、ギルドマスター」

「この冒険者ギルドの者は、『聖女』と『剣姫』に異を唱える者などおりません、エリシア様。俺も血が 滾(たぎ) ってきました」

縮こまりながら、ギルマスが笑う。

「ところで、『反断罪戦線』に協力している冒険者はどれくらいいるのですか?」

俺が尋ねると、ギルマスが笑顔のまま答える。

「A級からC級冒険者はほとんど『反断罪戦線』に所属している。人数にして百人は優に超えるだろう」

ん? まさかガルドたちが断罪迷宮で無事だったのも、最初から聖女側に与していたからか……。

今さらそんなことはどうでもいい。ともかく、ここには百人を超える猛者たちがいて、俺たちの戦力になるのだ。

「いける……」

俺は思わず呟いた。

「で、『反断罪戦線』は何をしたらいいのかしら」

エリシアが俺に尋ねる。

その問いに、俺ははっきりと答える。

「王城を襲撃します」