作品タイトル不明
第七十五話 冒険者ギルド
「クローデリア様、王国を変えるため、もう一度立ち上がりませんか?」
俺はクローデリアにそう言うが、クローデリアの表情は曇る。
「ユウマ……。もういいのよ……。私がただわがままであなたを巻き込んで、ありえない夢想に取り憑かれてしまっていたの。王国を変えるなんて大それたこと……。本当にごめんなさい」
「いえ、できますよ。クローデリア様、やりましょう。俺を信じてください。俺たちなら必ず王国を変えられます。今度こそ、やれます」
「名喰い」された俺を忘れずにいてくれたクローデリアの願いを諦めるなんてことは俺にはできない。
「……何か考えがあるの?」
俺は力強く頷いてみせる。
「はい、まずは人を集めましょう」
※
俺たちは冒険者ギルドを訪れた。
「名喰い」されて、俺の冒険者登録も消滅しているはずだ。「断罪結社」もクビになって、「断罪の刃」からも自然離脱して、喜ばしい限りだ。「名喰い」だって良い側面も少しはあるのだ。
しかし、今日の本題に俺の冒険者登録は関係ない。
「ギルドマスターはいらっしゃいますか?」
クローデリアが冒険者ギルドの受付嬢に尋ねる。
「は、はい、直ちにお呼びして参ります」
クローデリアを見た受付嬢が慌てて席を立つ。
ただでさえ高名な公爵令嬢クローデリアだが、冒険者としては王国唯一のS級で「剣姫」の称号を持ち、この冒険者ギルドで彼女に畏敬の念を持たない者はいない。
受付嬢が奥に引っ込んだかと思うと、すぐに一人の男を連れてきた。
クローデリアに卑屈な、あのギルマスだった。
「反断罪戦線」に加担したとして指名手配されていたはずだが、俺が「名喰い」されたことで、ギルマスも追われる身でなくなったのか。
「これはこれはクローデリア様、本日はどういったご用件でしょうか? 何なりと仰ってください。そのお連れの方と冒険者パーティーを組まれるのですか? もちろんギルマス特権で承認させていただきます……」
相変わらず卑屈さがほとばしるギルマスをクローデリアが制する。
「冒険者パーティーも組みたいのだけれど、今日は違う用件で参りまして……奥に通していただいてもよろしいでしょうか? あまり人に聞かれたくない話なのです」
するとギルマスの顔色が急速に悪くなる。
「あの……それがその……ちょっと事務室は散らかっておりまして……」
「構いません」
「はあ……そうは仰いますが……その……」
ギルマスはあからさまに何か都合の悪いことを隠そうとしているのがわかるが、クローデリアに「断る」という行為を行うことができず、パニックに陥っているようだった。
「お通しされたらどうですか? これも何かの運命のような気がします」
奥から穏やかな女性の声がした。
それを聞いたギルマスが再び卑屈さ100%スマイルに戻る。
「もちろんですとも。ささ、クローデリア様、どうぞ奥へ。足元お気をつけください」
俺は今の女性の声の主を知っている。
……聖女エリシアだ。