軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七十四話 彷徨うモブ(後編)

「ユウマ」とは誰だったろうか? まるで異世界風の変わった名前だ。

俺はクローデリアに呼ばれたその人物が気になり、再び振り返る。

するとクローデリアがこちらに向かって走ってくる。

「ユウマよね?」

俺に言っているのか?

「いえ……すみません……。俺には名前はないので、おそらく人違いだと思います」

ふと、クローデリアが勘違いしているその人物になりすまそうかという邪念がよぎるが、嘘だとわかったときにクローデリアが悲しんだら、いたたまれない。

「ふふふ。そんなはずはないわ。あなたは『ユウマ』に間違いないわ。世界中の誰もがあなたを忘れたって……あなた自身があなたのことを忘れたって……私だけはあなたのことを忘れないんだから」

そう言って、クローデリアが腰の剣を抜く。

——「断罪聖剣」だ。俺とクローデリアで攻略したダンジョンで倒した「断罪聖獣」の角を素材とし、父が打った剣。そして……

その刀身の根元には、「ユウマ・クスノキ」と銘が彫られている。

世界にただ一つだけ、その名前が刻まれた剣……。

——思い出した。それは俺の転生前の名前だ。

「あなたは私にとって誰よりも大切な人。ユウマ・クスノキ」

俺の目から大粒の涙がとめどなく流れてきた。

それは俺の名前に間違いない。この異世界に転生してくる前の俺の名前だ。

クローデリアだけは、俺が奪われた名前ではなく、「ユウマ・クスノキ」という転生前の真名で、俺を覚えていてくれていたのだ。

そんな奇跡があるのか……。

「だから言ったでしょう? 私だけはあなたを絶対に忘れないんだから。

あなたがいつも私を助けてくれたように、どんなときも私はあなたの味方よ」

俺は嗚咽を漏らし、無様に大泣きしながら、クローデリアを抱きしめた。

この異世界での名前を失った俺は、もはや「平民」という身分すら持たない、ただのモブだ。公爵令嬢を抱きしめようが、断罪されるいわれもない。

「……ありがとうございます。……クローデリア様」

俺は生涯——いや、前世を通じても、こんなにも強い感情を抱いたことはなかった。

【スキル獲得: 断罪の煽動(コンデム・アジテーション) 】【効果:設定した対象に、視認可能な範囲内の人々が断罪の怒りを向ける】