作品タイトル不明
第六十五話 断罪の起源(後編)
「は、話す。俺は事件の真相を知っている」
王太子レオンハルトが青い顔をしたまま言う。
やはりか……。
東方辺境伯の事件は「魔女」セラフィナの逆恨みによる犯行が真相であったが、南方辺境伯は王国の悪政と辺境差別により引き起こされたものだ。「反抗的な」北方辺境伯の事件も王政府が関わっているのではないかという予感がどうしても拭えなかった。
しかし、次のレオンハルトの発言は、俺の予想を裏切るものだった。
「北方の連続猟奇殺人の犯人は勇者ソウマだ」
……それはあり得ないだろう。
「いい加減なことを言うな! 勇者ソウマは投獄されているはずだ。獄中の人間が、わざわざ北方の辺境まで行って殺人をしてこれるわけがないだろうが」
「ひぃぃぃ」
レオンハルトがまた怯える。嘘をついているようには見えないが……。
「ほ、本当だ。王家はやつを利用して、王家に反抗的なやつらを一掃したんだ」
「……どういうことだ?」
「お、おまえらみたいに王家を批判するやつらがいたから、辺境に視察に行くよう命じて、そこで勇者にそいつらを殺させたんだ。勇者であれば、北方辺境伯のように一刀で四肢も切断できるから、北方辺境伯の仕業にも見せかけやすかったんだ。減刑してやると言ったら、勇者は喜んで指示を聞いた」
「なぜ目や耳や舌を切断する必要があったんだ?」
「俺たちは、ただ王家に逆らったことを後悔させて殺せと指示しただけだ。それは、あの勇者の残虐趣味だ」
北方辺境伯の断罪の場にいた鉄仮面の人物は勇者ソウマで、やはり王家が関わっていたか。それにしても、何なんだ、こいつらは……。こんなやつらが統治する王国に俺は今まで住んでいたのか……。
「おまえを解放したら、俺たちも同じように殺すつもりか?」
「い、いや、そんなことはしない。約束するから俺のことは助けてくれ……」
そんな言葉が信用できるはずがない。
絶対にこいつらは断罪しなければならない。
俺はエリシアに向き直る。
「エリシア様、俺の、 正(・) し(・) い(・) 断罪を取り戻す、という目的は間違いかもしれません」
エリシアは変わらず穏やかな顔で俺の顔を見ていた。
「ですが、世の中には、人としてやってはならない悪いことをする人がいて、俺はそいつらを許すことはできません。そいつらを断罪すべきだという考えは変わらないです」
俺はレオンハルトを睨みつける。
「そして、俺にとって今、最大の悪は王家であり、それに追随する王国民です。彼らを断罪することで、 新(・) し(・) い(・) 断罪の時代を作りたい」