作品タイトル不明
78話 魔族の軍勢
ぼくが魔王の息子セブンスを退けてから、数日が経ったある日のこと。
『大変です、若様! 街を魔族の軍勢が、包囲しています!』
忍びのランが、慌ててぼくのもとへやってきた。
「なっ、なんだって!? 行こう!」
【緋色の翼】の仲間達とともに、ぼくらは街の外へと向かう。
不安げな住民達の間を縫って、ぼくらは街を囲む外壁へとやってきた。
外壁は見張り用にハシゴがかかっている。
それを登って、外壁の上から外の様子を見下ろす。
「こ、これは……!? な、なんて数だ……!」
見渡す限り、魔族の群れがいた。
『ほとんどが男爵級ですが、しかしそれをまとめているあの男……おそらく魔王の息子でしょう』
群れの中から、眼鏡をかけた痩せた男が出てくる。
尻尾と翼は悪魔のそれ。
頭からは、山羊のようなねじくれた角が生えていた。
アーシアの兄弟……魔王の息子、魔王子だ。
「おまえは誰だ!?」
「失礼、申し遅れました、サルの諸君」
にぃ……と彼が見下したように笑う。
「私は【ファウスト】。誉れ高き魔王の息子、第一王子ファウストでございます!」
「第一王子……だって?」
この間来たのは、第7王子だった。
その兄、ということはそれだけ長く生きてるのだろう。
『気をつけてください、若様。魔族は歳を重ねれば重ねるほど、魔力量が増えて強力になります』
「賢い犬ですね。サルの部下にしておくにはもったいないくらいだ。どうです、私の配下に加わりませんか?」
ファウストが、ぼくのランを勧誘している。
「ふざけるな! ランはぼくの大事なパートナーだ! ぜったいに譲らないぞ!」
『わ、わかしゃまぁ~……♡ きゅーん……♡ ちゅき……♡』
『発情している場合か、犬っころ』
ぼくらは武器を構えて、魔族達の前に出る。
「おっと! 動かない方が良いですよ。でないと、彼らがどうなるか?」
パチンッ! と指を鳴らす。
群れの奥から、人間が連れてこられた。
「クレアさん!」
「……ごめんなさい、エレン様」
買い物へ行っていたクレアさんが、魔族に捕まっていた。
彼女だけじゃない、他にもたくさんの人たちが、魔族達に捕まっていた。
『みなトーカの街の住民です。いつの間に……!』
「街へ先行し、拉致しておいたのです」
「卑怯だぞ!」
「何が卑怯なものですか。戦いは始まる前にいかに準備したかで決まるのです」
「くっ……!」
攻撃しようにも、クレアさん達トーカの街のひとたちが人質に取られている。
下手に動けば、みんなは殺されちゃうかもしれない。
「さぁ、エレン。君の置かれている立場が理解できたかな?」
にやにや、とファウストが邪悪な笑みを浮かべる。
ぼくらの情報も、あらかじめ仕入れていたと言うことか。
「武器を捨てなさい。言うことを聞かないと……」
「…………」
人質を取られている以上、敵の言うことに逆らえない。
ぼくらは持っている武器をその場に捨てる。
「良い子です。さぁ、エレン。おとなしくこちらに来なさい。用事があるのは君だけです」
「エレン! 行っちゃ駄目よ!」
アスナさんが青い顔をして叫ぶ。
「人質なら私にしなさい!」
「アスナさん……」
「残念ながら、用があるのはそこのエレンだけなのです」
「駄目! エレン! 行っちゃ! 殺されるわ!」
ティナがぼくの腕を引いて、必死に止めようとする。
「けど……街のみんなが……」
「その通り。さぁエレン、早く決断してもらいましょうか。あまりモタモタしていると、町の人を殺してしまうかも知れませんねぇ~」
魔族のひとりが、クレアさんの腕をぐいっとひねる。
「あっ……!」
「クレアさん! くっ……!」
このまま、ぼくは従うしか……ないのか?
そう思った、そのときだ。
『エレン、エレン。愛しのエレン』
ぼくの脳裏に、誰かの声が響いた。
聞いたことのあるような、ないような、判然としない声だ。
『落ち込まないで、エレン。君は何かを諦める必要は無いよ』
誰の声かは、わからない。
ただ、聞いていると安心する、不思議な声だ。
『君はただ望めば良い。どうしたいか、言ってごらん?』
「……捕まっているみんなを、助けたい」
人質が解放されれば、戦うことができるから。
『了解したよ。その願い、聞きとげよう』
その瞬間だった。
シュォンッ! と音を立てて、人質のみんなが消える。
「なっ!? ど、どういうことだ!?」
驚くファウスト、そしてぼく。
「な、なんだ!?」「ここって街の中!?」「嘘でしょ!? 何が起きたの!?」
街の中から、大きな声がする。
『若様! 朗報です! 人質達が外壁の内側へと、転移していました!』
「なっ!? なんだって!」
「集団転移スキルだとぉ!? そんなバカな! 超レアスキルではないか! なぜこんなガキが使えるんだ!」
目をむいているファウスト。
一方で、ランが感心したように言う。
『お見事です若様! 土壇場でスキルを覚醒させるとは!』
『さぁエレン。これで君を縛るものはなくなった。思う存分、力を振るうんだ。頑張って、愛しのエレン……』
そう言うと、声が聞こえなくなった。
「とにかく……みんな、これはチャンスだ! いこう!」
「くそっ! かかれぇえ!」
魔族達がいっせいに、街へと襲いかかってくる。
「【 不死鳥の紅蓮矢(フェニックス・バリスタ) 】!」
炎の矢が飛んでいき、魔族達のど真ん中に激突。
激しい爆発を起こして、魔族達を吹き飛ばす。
「【 颶風旋風刃(ゲイル・スライサー) 】!」
ティナが風の極大魔法を発動させる。
紅蓮の矢による爆風を、さらに拡散させた。
「せやぁああああああああ!」
アスナさんがミスリルの剣を振ると、ぬれた和紙のように、魔族の身体が引き裂かれていく。
「ひぃいいい! ば、化け物だぁああああああ!」
魔族の軍勢が、恐れをなして撤退していく。
「ばかっ! 勝手に逃げるな!」
「そっちこそ、逃げるなファウスト!」
ぼくは風神の剣を持って、彼に向かって走る。
「この私を怒らせたな! 第一王子の実力、とくと……」
「たあぁああ!」
前口上を垂れているファウストに、ぼくは剣を振るった。
「うぎゃぁあああああああああ!」
激しく出血するファウスト。
「【 不死鳥の羽撃(フェニックス・ブロウ) 】」
ぼくの背中から炎の翼が生える。
羽ばたくと、広範囲に炎が広がった。
「うぎゃぁあああああああ! 熱いぃいいいいいいい! なぁぜぇだぁああああ!」
第一王子は真っ黒焦げになって、その場に倒れ伏す。
『お見事! さすが若様! 特級魔族を焼き殺すほどの炎! 素晴らしいです!』
一方で、カレンは小さくつぶやく。
『【 魔核(イビル・エレメント) 】がすでに抜かれておった……すでに、弱体化がなされておったのじゃ。いったい……ま、まさか……!』
ゴロゴロと転がり、痛がっているファウストの前に立つ。
「とどめだ!」
「こ、このぉおおおお!」
ファウストは近くに居た部下のひとりを、ぼくに投げる。
一刀のもとに斬り伏せるが、その隙を突いて彼が転移結晶を使う。
「覚えてろよエレン・バーンズ! かならずおまえを殺してやるからなぁあ!」
他の魔族達も、続々と転移結晶を使う。
「み、見ろ! 魔族の軍勢が撤退していくぜ!」
「すげえ! エレンさんすげええ!」
「【緋色の翼】のおかげで街が守られたんだ!」
「ありがとう! ありがとう緋色の翼ぁああああ!」
わぁ……! と町の方から歓声が上がる。
ぼくはみんなを守れて、ホッと安堵の吐息をつく。
「ありがとう、謎の声さん……」
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せ、精霊使いへの敵対行動を……くふっ♡ くふふふ♡ エレンエレンエレン好き好き好き好き好き好き好き♡
あーーーーー好き好き好き好き好き好き好き好き♡
だから……あの第一王子には、ペナルティを実行します。
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