作品タイトル不明
69話 断罪される偽英雄
テイマーのエレンが、正体を現したコナスを撃破した。
話は数時間後。
王都にて。
「コナス様達を乗せた馬車が帰ってきたぞー!」
昼前の王都入り口には、大量の王都民たちが集まっていた。
馬車から降りてくるのは、エレン達【緋色の翼】。
そして、その後に続くのが……コナスたち【灰色の人狼】。
「ちょっ、ちょっと待って! コナス様……なにか様子が変よ!」
「ほんとだ! ロープで腕を拘束されている!」
王都民たちがざわつく。
エレンはコナスたちを倒した後、ロープで結んで動きを封じたのだ。
彼らを騎士の元へ連れて行き、罪を償わせるつもりだった。
「おいあんた! コナス様をどうしてロープで縛るんだ!」
「そうよ! コナス様にどうしてそんな酷いことするの!?」
コナスが実は有望な新人達を、裏で葬り去っていたという事実を、世間は誰も知らない。
正体が悪人であることを知らぬ王都民からすれば、エレンのほうが英雄を縛り上げた悪人と見えるのだろう。
「コナス様を離せ!」「そうだ、今すぐ解放しろ!」
人が密集して、先に進むことができない。
エレンは仕方なく声を張り上げる。
「みなさん、聞いてください! このコナス・オータンは……」
そのときだ。
「みんな聞いてくれ! このエレン・バーンズたち緋色の翼に、私たちは酷い目に遭わされたのだ!」
「なっ!? ちょっとあんた、なに言ってるのよ!」
ティナが慌てていうが、コナスは続ける。
「こいつらは魔族と内通していた! やつらと結託し我らを殺そうとしてきたのだっ!」
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精霊使いへの敵対行動を感知しました。
コナスへのペナルティを実行します。
→スキル【降霊術】を使用します。
→コナスに殺害された冒険者達を呼び出します。
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コナスの言葉を、王都民はあっさりと信用する。
「なんですって!?」
「最低!」
「おいこっちのガキ共を引っ捕らえろ!」
王都民達が、エレンに押し寄せようとする。
「……くひゃひゃっ! バーカ。愚かな街の人間どもは、みんな私の言うことを聞くバカどもなんだよ!」
邪悪な笑みをひっそりと、コナスが浮かべたそのときだった。
『みんな、騙されるな!』
突如、エレンの目の前に、半透明の人影が現れる。
「ひっ……! な、なんだぁ……?」
「きゃあ! ゆ、幽霊よぉおお!」
突如現れた大量の幽霊達に、王都民は恐れおののく。
彼らは降霊術によって呼び寄せられたものたちだ。
「い、いや待て……見覚えがあるぞ……?」
王都民のひとりが、幽霊に近づく。
「やっぱり! あんた、去年の期待の新人冒険者じゃないか!」
「よく見れば見たことのある顔ぶればかりよ!」
ざわつく王都民達。
一方で、コナスが大汗をかく。
「ど、どうなってる!? なぜ降霊術が!? しかもヤツらは私が闇に葬ったやつらばかり……まずい! このままでは!」
動揺するコナスをよそに、死者達が王都民に言う。
『われらはそこのコナス・オータンに殺された被害者だ!』
「「「なっ!? なんだって!?」」」
驚愕する王都民達に、死者たちは語る。
『この男は最低だ! 自分より才能のある人間を妬み、影で殺していたんだ!』
『魔族と内通していたのはこいつの方だ! そのせいでパーティを壊滅させられた!』
次々と、死者達がコナスの罪をあばいていく。
「どういうことなの……?」
「コナス様が……まさか……本当に人殺しを……?」
見知った死者達の語る言葉には、真実味があった。
王都民の中では、英雄コナスへの信頼がゆらいでいる。
「騙されるなバカどもがぁああ!」
コナスは血走った目で、王都民達を見渡す。
「よく考えりゃわかるだろ! フェイクだよ! このエレンとか言うガキが幽霊をスキルで呼び寄せて、操ってんだよ! そんなこともわからねえのか愚者どもが!」
英雄の豹変した態度に、王都民達はさらに動揺する。
「こ、コナス様……?」「うわ、なにあの態度……ちょっと幻滅」「つーか、これマジでコナスがやったんじゃね……?」
動揺とうわさが、王都中を、まるで枯れ野に火を放ったかのように広がっていく。
「これは何の騒ぎだね?」
がちゃがちゃ、と騎士まで駆けつけた来た。
『コナスてめえ! この期に及んで嘘の上塗りなど! 恥を知れ!』
死者のひとりが声を荒らげる。
だがコナスは全く悪びれる様子もなかった。
「うるせえ亡者ども! てめえら三下の言葉なんてだーれが信じるのかってんだばーか! もし私が非道をはたらいたって言うなら、証拠を見せろよ証拠をぉ!」
たしかにコナスの言うとおりではある。
死者の証言があるものの、物的な証拠がなにもない以上、彼の罪は確定しない。
「証拠もねえ癖に私を引っ捕らえてみろぉ!? 英雄を誤って逮捕させたってことでてめえら全員死刑だぞ死刑!」
王都民、そして騎士たちもコナスの言葉にたじろいでいた、そのときだ。
「……ふざけるな」
今まで黙っていたエレンが、肩をふるわせる。
「何の罪もない人を私利私欲のために殺し……嘘までついて言い逃れようとするなんて……最低だぞ、コナス!」
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精霊使いへの敵対行動を感知しました。
スキル【思念投影】をエレン、および死者達に付与します。
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「ハッ! うるせえガキぃ! ほら、証拠がねえならさっさと私を離せ! てめえも豚箱行きだぞああぁ!?」
そのときだった。
【冥土の土産に教えてやろう。私は以前から、才能のある目障りな 新人(ルーキー) たちをこっそり排除していたのだよ。クエスト中の、不慮の事故と言うことでね!】
「な、なんだ!? 頭の中に、直接映像が流れてる……!」
「おれこれ知ってるぞ! 思念投影ってスキルだ! 自分の見た映像を、他人の頭に投影するスキルだ!」
王都民の頭に流れているのは、エレンが実際に見た映像だ。
【そんな……魔族と協力して、ぼくたちを殺そうとするなんて……ひどい!】
【貴様ら才能のある新人達が悪いのだ。後から来たくせに生意気なんだよ!】
ショッキングな映像に、王都民達は言葉を失っていた。
一方で、コナスは青ざめた顔で叫ぶ。
「こ、こんなのデタラメだ! 記憶改ざんとかそういうのだ!」
だが、誰ひとりとして、もはやコナスの言葉に耳を貸していない。
次々と、彼らの脳内にコナスの非道が流れる。
それはエレンの見たものだけでない、死者たちが最後に見たコナスの悪事、そのすべて。
この場にいたひとたちに犯行映像が、共有される。
「うわぁあああ! 見るな見るな見るなぁああああああ!」
やがて、その場にいた全員の目の色が、変わる。
先ほどまでは、英雄コナス・オータンへの憧憬があった。
だが、今は明確な怒りの炎が、王都民全員の瞳に浮かんでいる。
「最低! 自分の出世のために、若い子たちを殺すなんて!」
ひとりが叫んだことがきっかけとなって、怒濤のように非難が殺到する。
「最低!」「このクズ!」「てめえが死ねば良かったんだよ!」
コナスは青白い顔で、ぶんぶんと首を振る。
「ち、違う違う違う! 誤解だぁああ! みんな誤解なんだよぉおおお!」
王都民は怒りに突き動かされ、コナス達灰色の人狼を取り囲む。
「ざっけんな!」
バキィッ!
「ぐぇええええええ!」
殴り飛ばされたコナスは、地べたに無様に這いつくばる。
「死んだ中には……アタシの息子がいたんだ! あんたは……息子は立派に戦って自分を魔族からかばったって言っていたじゃないか!」
年配の女性が、涙を浮かべながらコナスに言う。
「あれは嘘だったんだね!」
「ち、ちが……ごか……」
「うるさい! この人でなし!」
泣きながら、女性はコナスの頬を蹴り飛ばす。
「ぶべっ!」
次々と、王都民達がコナス達を袋だたきにする。
「死ね!」「くたばれ嘘つき!」「なにが英雄だ! この大罪人!」
ばこっ! どかっ! ばきっ!
暴徒と化した王都民を、エレンも騎士達も止めることができない。
次から次へと王都のみんなが流れ込んできてコナス達への制裁を加える。
「ごめんなさい! 私が悪かったです! もう許して、許してくださいぃいいいいい!」
その後騎士の詰所へと連行。
事情聴取が行われ、コナス達は禁固刑に処された。
無論今までの功績は全部剥奪。
殺人鬼として知れ渡る。
コナス・オータンとその仲間達は、希代の大犯罪者として歴史に汚点を残す。
社会的にも完全に抹殺され、彼はもう二度と、日の光の下を歩けない身体となってしまったのだった。