作品タイトル不明
68話 新人殺しの偽英雄
ぼくが大天使ウリエルさんと仲良くなってから、数日後。
王都にて。
ぼくたちのパーティ【緋色の翼】は、別のパーティとともに【特別任務】へ向かおうとしていた。
王都の正門の前に、ぼくらはいる。
取り囲むように、大量の人影があった。
「きゃー!【コナス】さまよぉ!」
「我らが英雄【コナス・オータン】さまがクエストに出発なされるぞー!」
わっ……! とぼく、というより【彼】に声援が送られる。
隣に立っているのは、背の高い美形の青年だ。
彼は、【コナス・オータン】。
ぼくと同じ、【特S級】の冒険者だ。
「ありがとう、諸君! 必ず依頼をこなしてくる!」
「「「がんばって、我らが英雄!」」」
コナスさんは町の人に手を振ると、馬車に乗り込む。
ぼくたちも彼に続く。
馬車は動き出し、王都を出発。
「大人気ですね、コナスさん!」
正面に座る彼に、ぼくは言う。
「ギルドから聞きました。数々の強敵をほふってきた最強の特S級冒険者だって!」
「気恥ずかしいな。私なんてまだまだひよっこの冒険者だというのに」
コナスさんは現在29。
19才の時には特S級になったんだって。
「10年も特S級の看板を背負って戦ってきたんだ……すごいなぁ……」
「いいや、すごいのは君の方だよ」
スッ……とコナスさんが目を細めて、ぼくを見やる。
「私が最年少で特S級になった記録を、君が塗り替えたのだから」
静かに微笑んでいる。
「以前から興味があったのだよ。私よりも若く、私よりも才能あふれるエレン少年のことを……ね」
なんだろう、ちょっと怖い。
「と、ところでコナスさん。今回のクエストのおさらいしておきましょうか」
アスナさんがぼくを抱き寄せて言う。
「今回の依頼は偵察クエストだ。王都からほど近い場所で【魔族の遠征部隊】が確認されたのだ」
「魔族の遠征部隊……人数は?」
「それをこれから調べるのだ」
あくまで今回のクエストは、偵察がメインらしい。
魔族の人数、武装のレベル、そして遠征の目的等。
「相手が大人数じゃないといいわね、ドンパチになったらこの人数じゃまずいわ」
ティナがぼくらを見渡す。
今回のクエストに参加しているのは、ぼくたち【緋色の翼】とコナスさんの【灰色の人狼】のみ。
「今回は偵察任務。遠方から様子をうかがうだけだ。まず見つかることはないだろう」
ややあって。
夜。
ぼくらは森の中の、巨大な湖のほとりまでやってきた。
湖の向こうには、かすかに人影が見える。
双眼鏡越しに見ると……そこには、魔族の集団がいた。
「いました。魔族がかなりいます。10……20……いや、30はいるかも」
仲間達は周囲の警戒をしている。
ぼくの隣にはコナスさん。
ふたりで魔族の数と種類、そして戦力を確認する。
「よし、あらかたの調べはついた。あとは魔族達に見つからぬよう撤退するぞ」
ぼくたちがうなずいた、そのときだった。
【敵襲ぅううう! 敵襲だぁあああああ!】
湖の向こうから、大きな声が響いてきた。
魔族達が向こう側、つまりぼくらを見てくる。
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精霊使いへの敵対行動を感知しました。
魔族30名から 魔核(イビル・エレメント) を剥奪します。
→スキル、魔法の使用権限の剥奪、弱体化が実行されます。
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「いかん! 気づかれた! みな、逃げるぞ!」
「は、はい!」
30人あまりいる魔族を相手取ったことはない。
ここはコナスさんの言うとおり逃げた方が良い。
「エレン君。ここは私たちに任せて、街へ帰るんだ!」
「なっ!? どうして!」
「ルーキーの君たちの盾となるのも、先輩の役割だからさ」
にっ、と白い歯をぼくらに向ける。
かっ、かっこいい!
「さぁ諸君。ここは我ら【灰色の人狼】に任せて、街へ増援を……」
「いえ! 大丈夫です!」
「え?」
ぼくはアスナさんたちを見やる。
「みんな、やろう!」
「「はいっ!」」
「え、ちょ、ちょっと……?」
アスナさんがグッ、と身をかがめると、ドンッ! と走り出す。
「なっ!? み、湖を走っているだと!? なんだあれは!?」
「【水上歩行】スキルです」
ぼくがユニコーンのヴィヴィアンと契約した際に、手に入れたスキルだ。
それをアスナさんに付与しただけである。
「ばかな!? 水上歩行はSSランクの超レアスキルだぞ! いったいどうして……」
驚くコナスさんをよそに、アスナさんが湖を走り抜ける。
「援護するよ! いこう、ティナ!」
「ええ!」
ぼくらは手を前に出す。
「【 不死鳥の羽撃(フェニックス・ブロウ) 】!」
「【 煉獄業火球(ノヴァ・ストライク) 】!」
不死鳥と魔法の炎が、対岸を燃やし尽くす。
「なっ!? ばかな!? 極大魔法の!? しかも無詠唱だって!? 特S級でもそれができるものはいないぞ!?」
ティナには詠唱破棄というスキルを付与しているので、どんな魔法だって呪文無しで撃てるのだ。
「アスナさん、風の結界を張ったから思う存分暴れて!」
「了解! せやぁあああああ!」
炎の中を、アスナさんの剣が舞う。
恐ろしいスピードで、魔族は倒れていく。
「……やはり、危険だ。若い芽は、摘んでおかないと」
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精霊使いへの敵対行動を感知しました。
コナス・オータンから【双剣使いの 精霊核(エレメンタル) 】を剥奪します。
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その後、ぼくらは馬車に乗って王都へ帰還することになった。
「久しぶりに暴れたら、疲れちゃったな……」
アスナさんが眠そうにつぶやく。
「私がコーヒーでも煎れよう」
すくっ、とコナスさんが立ち上がる。
ギルドの用意してくれた魔法馬車は広く、キッチンまでついている。
「そ、そんな! 良いですよ!」
「いや、座っててくれ。今回の功労者は君たちだ。私たちはなにもしてないからね。これくらいさせてくれ」
弱々しく微笑みながら、コナスさんが言う。
申し訳ない……けど、せっかくの申し出を断るのも気が引けた。
その後、コナスさんが煎れてくれたコーヒーを、ぼくらは飲む。
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精霊使いへの敵対行動を感知しました。
スキル【解毒】を獲得しました。
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「う……」「あ……」
どさっ、とアスナさん達が倒れる。
ガシャンッ! とコーヒーカップが割れる音。
「く、くくく……毒が効いてきたようだね?」
ゆらり、とコナスさんが立ち上がる。
その目は怪しく輝いていた。
「君たちが私よりも才能を持っているのが悪いんだよ。邪魔な君たちを排除させてもらう」
「排除って……どういうことだ!」
ぼくは倒れ伏すアスナさん達のまえに立ち塞がる。
「なっ!? なぜだ!? 数々のSランク冒険者をしびれさせてきた強毒! なぜ効かない!」
「知らない! それより……数々のって、どういうこと!?」
コナスが醜悪な笑みを浮かべる。
「冥土の土産に教えてやろう。私は以前から、才能のある目障りな 新人(ルーキー) たちをこっそり排除していたのだよ。クエスト中の、不慮の事故と言うことでね!」
「ま、まさか魔族達がぼくらに気づいたのも……」
「私が通信魔法で内通者として、魔族に連絡を取ったからだよ。今日だけじゃない、今まで何人ものやつらを同じような手段で殺してきた!」
「そんな……魔族と協力して、ぼくたちを殺そうとするなんて……ひどい!」
フンッ! とコナスが鼻を鳴らす。
「貴様ら才能のある新人たちが悪いのだ。後から来たくせに生意気なんだよ!」
シャラン、とコナスは双剣を抜く。
灰色の人狼のメンバー達も、それぞれ武器を抜いた。
どうやらパーティぐるみで、証拠隠滅を図ろうとしているのだろう。
「我らは途中魔族に見つかった。ここは自分たちに任せて先に行けと犠牲になって散っていった……。義憤に駆られた我らが魔族を倒した。そうギルドには報告し、コナスの英雄譚の1ページに加えてやろう」
残りのメンバー達も、ぼくらをせせら笑う。
なんて……ヤツらだ! 許せない!
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精霊使いへの敵対行動を感知しました。
パーティ【灰色の人狼】から精霊の加護を剥奪します。
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「死にさらせ!」
シュッ、と双剣がぼくの首を取ろうとする。
けどぼくの身体に当たった瞬間、ぱりぃいん! と音を立てて剣が砕け散った。
「ば、バカな!? どうして!?」
『阿呆め。精霊の加護を失った非力な人間が、精霊王の加護を持つエレンに触れられるわけなかろう。さすがエレンじゃな』
「く……! おいてめえら! 全員で殺せ!」
取り囲んでくるメンバー達。
けどぼくは攻撃を見切って、みぞおちに打撃を加える。
がくん……とメンバー達が倒れる。
「そ、そんなバカな!? 全員Sランクなんだぞ!? 数で勝っているんだぞ!」
『エレンは何人もの大精霊や神獣、天使とすら契約し強さを得ている。もはや人間の世界でかなうやつはおるまい。さすがはエレンじゃ♡』
ぼくはコナスを見やる。
「おとなしく降参し、今まで殺していった人たちに謝るんだ!」
「く、くそぉおおおお!」
コナスが殴りかかってくるけど、ぼくはその頬をぶん殴る。
「ぶげええええええええええ!」
吹っ飛ばされた彼は、馬車の壁をぶち破って出て行く。
ぐしゃっ、と倒れたのだった。
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精霊使いへの敵対行動を感知しました。
コナス、および【灰色の人狼】にペナルティを実行します。
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