作品タイトル不明
57話 悪徳領主の因果応報
テイマーのエレンが、魔族を退けた。
悪徳領主ワイールは、村人から逃げて、領主の館へと戻ってきた。
「くそっ! エネゴーリのボケが! あんなガキどもに敗北しよって!」
エレンの予測通り、彼と魔族は内通していた。
エネゴーリが領民からまきあげた魔鉱石を、自分の懐に入れていたのである。
「くそったれ! あのガキめ! ただですむと思うなよ! 領民を集めてあのガキを殺すようにしてやる……」
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精霊使いへの敵対行為を感知しました。
領主ワイールへのペナルティを実行します。
→領主の 精霊核(エレメンタル) を永久剥奪しました。
→スキル【事実隠蔽】を剥奪しました。
→スキル【挑発】を付与しました。
→etc.……
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そのときだった。
バタンッ! と屋敷のドアが開いた。
どかどかと入ってきたのは、鎧に身を包んだ王国の騎士達だった。
「なんだ貴様ら!? わが館に土足で立ち入るとは! 無礼だぞ!」
騎士団長が近づいてきて、捜査令状を突きつける。
「ワイール! 貴様には魔族と内通している疑惑がある!」
「なっ!? なにぃい!?」
内通の証拠は完璧に潰したはずだった。
犯罪は明るみに出るわけがない。
いったいどうしてバレたのか……?
答えは単純。
精霊王によるペナルティだ。
彼の持つ【事実隠蔽】スキルが、剥奪された結果である。
「国王から領地をもらっておいてなんたる非道!」
「く、くそっ!」
あせったワイールは、懐から煙玉を取り出して、地面にたたきつける。
白煙が立ち上るなか、急いでその場を後にする。
「くそっ! 逃がすな! 追え!」
ワイールは屋敷の中を走り、そして床下に手を置く。
魔法陣が展開し、隠していた地下通路が出現する。
そこへ素早く入り、ダッシュで逃げる。
「はぁ! はぁ! くそっ! なぜバレた!? スキルで事実を隠蔽したのに……! くそぉ!」
通路は地下水路と組み合わせてできている。
血管のように、複雑に入り組んでいる。
「この迷路からわしを見つけることなど不可能だ……! ふはははあ!」
「いたぞ! ワイールだ! こっちだこっち!」
「なにぃいいいいいいい!?」
騎士達が、一直線にこちらに向かってくるではないか。
「なぜだぁあああああ!? どうしてわかるんだぁあああああああ!」
スキル【挑発】。
騎士のスキルであり、自分の存在をアピールし、モンスターのヘイトを集めるスキルだ。
ワイールに付与されたこのスキルの影響で、敵(騎士)に自分の存在を主張。
結果、追いつかれたというわけだ。
「くそっ! くそぉおおおおおお!」
必死になってワイールは逃げる。
ここで捕まったら全てが水泡に帰す。
少なくとも領地は取り上げられるだろう。
魔族と内通していたとなれば、国家転覆の罪で、最悪死罪となりうる。
「そんなことはさせん! わしは逃げるンだぁああああああ!」
しかし……。
「待てこのぉ!」
騎士達に取り押さえられ、その場に倒れ伏す。
「離せ! 離せぇえええ!」
「もう逃がさんぞ! 国家に弓引く大罪人め!」
ワイールはロープで手を拘束される。
「くそ! いやだぁっ! エネゴーリ! 助けろ! ワシを助けろぉおおおお!」
だがエレンによってエネゴーリは倒されている。
そう、エネゴーリ【は】……。
「大人しく観念しろ!」
「ひぃいいい! 嫌だぁあああ!」
そのときだった。
ドガァアアン! と激しい爆音とともに、水路の天井が破壊された。
「なっ、なんだ!?」
「人影です! あれは……魔族だ!」
水路にたっていたのは、緑色をした、熊の魔族だった。
「【アールクマ】! 来てくれたか!」
魔族アールクマ。
子爵級の魔族である。
「みな、ワイールは後回しだ! この魔族を対処しろ!」
騎士達が散開し、アールクマを取り囲む。
王国の精鋭たちだ。
みなそれなりに強い。
「くたばれ、この反逆者どもめ!」
【あー……? てめ、誰に向かって言ってるんだ?】
アールクマが、騎士達をにらみ付ける。
それだけで、若い騎士達は震え上がる。
体から湧き上がる 闘気(オーラ) に、戦意を削がれる。
【おれさまも忙しいんでなぁー……ザコに構っている暇はねえ。大人しく帰れば命は助けてやるぜぇー……】
「ひ、ひるむな! 国家に弓引く敵をのばなしにはできん!」
「「「うぉおおおお!」」」
騎士達はおのれを鼓舞して、襲ってくる。
【あー……うっせえ羽虫どもだなぁ!】
アールクマは手を振る。
それだけだ。
斬撃が宙を飛び、騎士達の体をズタズタに引き裂いた。
「がっ!」「ぐぇ!」「ぐはっ!」
手足をバラバラに切断され、騎士達は地面に倒れ伏す。
かろうじて生きてはいるものの、四肢を欠損し、瀕死状態だ。
「ひゃはっ! ひゃはっはっはぁああああああ! どぉおおおおだぁあああ!」
狂喜乱舞し、ワイールは倒れている騎士団長の頭を踏みつける。
「調子にのりよって! アールクマ! こいつらを皆殺しにしろ!」
【バカはてめえだごら……】
ざしゅっ、とワイールは右腕を切断される。
「へ……………………ひぃいいいいいいいいいやぁああああああああ!」
血を激しく流しながら、ワイールは水路に倒れる。
「腕、腕ガァ! アールクマ!? どうしてだぁあああ!?」
【どうしてもクソもあるか。てめえのせいで、おれの舎弟が死んじまったじゃねえか。どう落とし前つけてくれるんだあぁ!?】
アールクマは近づいて、ワイールの腹部を蹴り上げる。
「ほげぇええええええ!」
ゴムまりのようにはじき飛び、天井と壁にぶつかりながら、倒れ伏す。
骨はバキバキに折れ、折れた肋骨が肺に刺さっている。
「だ、だずげで……ぐ、ぐるじぃ~……」
【大事な舎弟を殺した罪、きっちり精算させてもらうぜ?】
アールクマはワイールの頭を踏みつける。
みし、みしみし……と嫌な音がする。
「ひぎいいいい! 痛い痛い痛いぃいいいいいい! たすけて! 命だけは! だ、だずげ……」
【魔族に弓引いて、生きて帰れると思うなよ? ああ?】
「いや、嫌だぁあああ! 死にたくない! 死にたくないよおぉおおおお! わしにはまだしたいこともやりたいこともあるんだぁあああああ!」
グシャッ! とワイールの頭部は、トマトのように潰された。
【ちっ、きたねえ 人間(サル) の血がついちまったじゃねえかよ……さて、と】
アルクーマが振り返る。
負傷した騎士達が、怯えた表情で魔族を見ている。
【てめえらも生かしてはおけねえなぁ】
「み、みな! 退避するのだ!」
「団長!」
騎士団長が、剣を持って部下の前に立つ。
すでに片腕は失われているが、部下を守るという硬い意思が瞳に宿っている。
【気合い入ってるじゃねえか。だがよお……思い上がるな 人間(サル) 。所詮は魔族には勝てぬが道理よ】
「勝てる勝てないではない! 弱いものを守る、それが騎士団長の務めだ!」
ダッ……! と騎士団長が斬りかかる。
【心意気は買うがよぉ……いかんせん、ザコ過ぎだ】
軽く払う、それだけで、騎士団長は吹っ飛ばされる。
「カハッ……!」
「「「団長ぉおお!」」」
血だらけになった騎士団長に、魔族が近づいてくる。
【これで終わりだ……!】
ぐぉっ、と腕を振り上げた……そのときだ。
ザシュッ……!
【なにぃい!?】
右腕がなにものかに吹っ飛ばされた。
【だ、だれだてめえ!?】
「ぼくはエレン……冒険者だ!」
ワイールを追いかけてやってきた、エレンだ。
【てめえ……おれの腕を切り飛ばすたぁ……良い腕してるじゃねえかよぉ……】
エレンは武器を構えて、魔族の前に相対する。
【てめえだな? エネゴーリ殺したガキどもは?】
びきっ、と額に血管を浮かび上がらせる。
【部下を殺されてむかっとしてたところだ。ちょうどいい……あの世に送ってやらぁあ!】
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精霊使いへの敵対行動を関知しました。
魔族アールクマの魔核を剥奪します。
→スキル【斬鉄】を剥奪します。
→etc.……。
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【死にさらせええええええ!】
強力な斬撃を放とうとする。
だが、エレンはその爪を、風神の剣で受け止めた。
【な、なんだとぉ!? ばかな! 鉄を軽々と斬れる斬鉄の力をとめれるはずがっ!】
「【 不死鳥の羽撃(フェニックス・ブロウ) 】!」
放たれる炎攻撃。
【ほげぇええええええ!】
熱波はアールクマの体を焼き尽くす。
【なぜだ!? なぜたかが人間ごときが、この子爵級魔族を圧倒できるぅうう!?】
『エレンの強さに加え、貴様は弱体化をさせられている。負けるのが道理よ。さすがエレンじゃ』
「これで終わりだ! 【 不死鳥の紅蓮弓(フェニックス・バリスタ) 】!」
放たれた強力な炎の矢が、アールクマの腹をぶち抜く。
【なんて……やつだ……人間にも……こんなに強いヤツが……いるなんて……】
がくんっ、と気を失う。
エレンは吐息をつくと、不死鳥の癒やしの炎で、負傷者の治癒を行う。
「ありがとう……! 君、ほんとうにありがとう……!」
騎士達はエレンに、泣いて感謝する。
一方で、ワイールはひとり、冷たい地下通路で、事切れるのだった。