作品タイトル不明
58話 犯罪ギルド
ある日の夜。
ぼくは王都にいた。
特S級冒険者達の集まりに参加した、その帰り道。
「ティナが言ってた薬屋さんどこだろう?」
魔法の触媒に使うものが、王都にある薬屋さんで売っているそうだ。
見つからなかったら無理に買ってこなくて良いよと言われたけど、できれば買ってあげたい。
そんなふうにぼくは、店を探してふらふら歩いていた。
すると、人通りの少ない区画へとやってきた。
「なんだか不気味だね……」
『若様。ここは貧民街でございます。柄の悪いチンピラだけでなく、【犯罪ギルド】まであります』
「犯罪ギルド……うう、怖い。もう帰ろうかな……」
そのときだった。
「死ね! おら死ねぇ!」
怒鳴り声、そして何かを殴る音がした。
「なんだか胸騒ぎがする。ラン、今の声のところまで案内して!」
相棒の後をついていき、血管のように入り組んだ裏路地を進んでいく。
やがてぼくらは、【娼館】の裏手までやってきた。
「へっ、すげえなぁ……【鬼族】。こんだけボコボコにしても死なねえのな」
チンピラの男。
その足元に、誰かがいた。
小さな女の子だ。
10歳にも満たないだろう。
「処分して良いって兄貴はいってたからよぉ……殺す前にちょっとやっとくか。鬼の女の味ってヤツをたんのうしてから殺すのもありだな……」
かちゃかちゃ、とズボンを脱ぎ出す。
明らかにヤバい雰囲気だった。
「やめろ!」
ぼくは声を張り上げる。
「あー……?」
チンピラはぼくに気付くと、ふんっ、と鼻を鳴らす。
「ガキが。見てんじゃねえぞ。どっかいけ殺すぞ? あ?」
凄んでくる。
けど魔族やその他のモンスターたちと比べて、全然怖くない。
「……た、す、けて」
足元でうずくまっていた女の子が、ぼくを見やる。
救いを求めるその目を見ると、勇気がわいてくるんだ。
「その子から離れろ!」
「うっせぇなぁ! 調子ぶっこいてんじゃねーぞ!」
腰からナイフを引き抜き、こちらに駆けてくる。
ぼくは 神狼(フェンリル) のスキルのひとつ、【神風】を発動させる。
手から激しい風が吹き荒れて、チンピラをぶっ飛ばした。
「ほげぇええええええええええ!」
木の葉のようにクルクルと舞い上がると、ぐしゃっ、と地面に落ちる。
ぼくは急いで、女の子のもとへといく。
「大丈夫かい!?」
「……ぁ、ぇ、う」
「ひどい……こんなになるまで殴るなんて……」
女の子は、酷い有様だった。
あちこちに殴られた跡。
体はガリガリに痩せている。
目は完全に潰れていた。
「ゲホッ! ごほっ! げほげほっ!」
『こやつ、肺を病におかされておるな』
カレンが彼女をみていう。
癒やしと再生を司る不死鳥は、病にも詳しいんだってさ。
「大変だ! すぐに治療を……」
「てめえ……よくもやってくれたなぁ……」
チンピラがぼくに近づいてくる。
その両手にはナイフが握られていた。
「おれさまを誰だと思ってやがる……? 天下の犯罪ギルド【 六眼(りくがん) 】の構成員だぜ……?」
『 六眼(りくがん) ……たしか王都を裏で牛耳っている、巨大な犯罪ギルドだったはずです、若様』
ランは忍びなので、いろんな情報を集めているのだ。
「知らないよ。あなたがどこの誰だろうと、こんな年端のいかない女の子を、こんなふうに酷く扱っていい道理はない!」
「うるせえ! 正義漢ぶってんじゃあねえぞがき! もう殺す! 絶対殺す!」
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精霊使いへの敵対行動を関知しました。
六眼の構成員コーザへのペナルティを実行します。
→スキル【ナイフ術(S)】を剥奪しました。
→スキル【必中必殺(S)】を剥奪しました。
→etc.……
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「死ねごらぁああああああ!」
チンピラがナイフを持って、ぼくに迫ってくる。
けれど、遅い。
とてつもなく遅く、そして武器の使い方が素人同然だ。
ぼくはナイフをかわし、護身術スキルでナイフをはたき落とす。
「な、なんだこのガキ!? 速いぞ!」
「たぁ……!」
ぼくは掌底で、チンピラのアゴをしたから打ち上げる。
「ぐぇええええええ!」
チンピラはまたも吹っ飛んでいくと、地面にぐしゃっと倒れる。
「く、くそぉ……なんて、強いんだ。化け物か……こいつ……」
「もうこの子に関わるな!」
ゆらり、とチンピラが立ち上がってぼくを見やる。
「もう……おまえ……終わりだぜ……。なんたって、【六眼】に目をつけられたんだからよぉ……」
「そんなことは知らないよ。誰が来てもぼくが返り討ちにする。絶対にだ」
ぼくがにらみ付けると、「ひっ……!」と男が怯えた表情になる。
「お、おぼえてろよぉ……」
そんな捨て台詞を吐いて、チンピラはどこかへと立ち去っていった。
「すぐに治療するね!」
ぼくは女の子のそばにしゃがみ込む。
不死鳥の癒やしの炎で、彼女の体を優しく焼く。
ややあって。
「うそ……おせき……とまった……」
女の子が、目を丸くする。
「うん、もう大丈夫みたいだね」
「…………」
女の子はぼくを見て、じわ……っと涙を浮かべる。
「あり、がとう……ありがとう……お兄ちゃん……」
安堵の表情を浮かべると、女の子は倒れる。
「だ、だいじょうぶっ?」
『どうやら安心して気を失ったようじゃ』
良かったぁ……と安心するのもつかの間。
「この子、親のところへ返してあげないと」
『若様、それは難しいかと思われます』
ラン曰く、この子は娼館の性奴隷らしい(クビのところに奴隷の首輪のあとがあった)
『おおかた、肺に病気が見つかったから、廃棄処分されることになったのじゃろう』
「なんてことだ……こんな小さな女の子を、もののように扱うなんて……!」
『犯罪ギルドは人身売買や暴力など、平然と行う悪いギルドですからね』
「ひどい……ひどすぎるよ!」
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精霊使いへの敵対行動を関知しました。
犯罪ギルド【六眼】に対してペナルティを実行します。
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ぼくは気を失っているこの子を放っておくことができず、パーティのいる家へと、連れて帰ることにしたのだった。