作品タイトル不明
48話 妖精のお姫様
ある日のこと。
ぼくたちパーティはダンジョンに向かう森の中にいた。
ガサッ!
と茂みが動いたと思った次の瞬間、誰かがぼくにぶつかってきたのだ。
美しいドレスを着た女の子だった。
ただ人間にしては、小柄な印象を受けた。
「大丈夫?ぶつかってごめんね」
「!?」
女の子はぼくが声をかけるなり、目をむいた。
「わ、わたくしの姿が見えるのですか?」
「え、うん。普通に見えるよ。ねえ、みんな?」
しかしアスナさん達は、首を横に振る。
「エレン、そこに誰かいるの?」
「だれって……まさか。スキル【視覚共有】 起動(オン) !」
以前ノームのところで使ったスキルだ。
ぼくの見えているものを、アスナさん達にも見えるようにするスキル。
「わっ、綺麗な女の子ね。人間の子供?」
「いや……この体格、それに背中から生えてる【虹色の 翅(はね) 】……ま、まさか伝説の……」
そのときだった。
「いたぞ!」「こっちだ!」
上空から、数人の武装した男達が降りてきた。
武器や鎧から、騎士と思われた。
この女の子同様に、背中から翅が生えている。
「見つけましたぞ【アンジェリカ】姫!」
「【マーダオス】様がお待ちです。帰りましょう」
どうやらこの子はアンジェリカというらしい。
しかも……お姫様?
「嫌です! わたくしはあの男の元へは決して戻りません! 私怨で父を殺した男など!」
「仕方ありません……手荒なまねをしたくはなかったのですが……」
武器を抜いて、アンジェリカににじり寄る。
「やめなよ」
ぼくは彼女の前に立つ。
「なっ!? なんだと!? わ、われらが見えているのか貴様ぁ!」
「うん、ハッキリとね」
「信じられぬ……【妖精】の姿を目で捕らえられる人間など、いてはならぬのに!」
妖精?
『亜人の一種じゃ。人間と精霊のハーフがそう呼ばれておる。精霊同様、常人では見ることができんな』
だからぼくにしか見えてなかったんだね。
「こんな年端もいかない女の子に、大人がよってたかって武器を持ってにじりよるなんて、おかしいよ」
「うるさい! 事情を知らぬ非力な 人間(サル) が!」
「おい野郎ども! やっちまえ!」
妖精たちがその手に槍を持つ。
「お、お逃げになって! 無関係のあなた様たちを巻き込むわけにはいきません!」
「ううん、大丈夫。ぼくらは冒険者……困っている人を助けるのが仕事なんだ!」
だだっ……! と妖精たちが槍を持って、ぼくに突撃してくる。
その先端がぼくの体を串刺しにする……前に、風の障壁を張る。
バキンッ! と音を立てて、槍が半ばで折れる。
「そ、そんなばかなぁ!? 竜をも貫く妖精の槍だぞ!? それを防ぐなどあり得ぬ!」
「この子に手を出したら、ぼくらが許さないぞ!」
「くっ! お、おい野郎ども! なにぼさっとしてやがる! 殺せ!」
どさっ、と後ろに控えていた妖精達が、倒れる。
「エレンに仲間が居ることをお忘れのようね」
武器を手にしたアスナさんとティナが、敵を倒してくれたみたいだ。
「く、くそっ! 一時撤退だ!」
騎士は懐から、マジックアイテムを取り出す。
ゲートのようなものを作りだし、彼らは消えた。
「危ないところを……ありがとうございました!」
バッ……! とアンジェリカが頭を下げる。
ややあって。
「つまり君は妖精で、妖精の国のお姫様なんだね」
ぼくらは車座に座って会話する。
「はい。ここより異なる次元に存在する国で、我ら妖精は人間とは不干渉で暮らしておりました」
妖精は、【始祖】と呼ばれる最初の【精霊と人間のハーフ】の子孫なのだそうだ。
「妖精の力は強大です。人間の世界にいれば必ず争いの火種となりましょう」
「だから人間とは関わらないようにしてたのね」
ええ、とアンジェリカがうなずく。
「ただそれをよく思わない人たちもおります。婚約者だったマーダオスもそのひとりです」
「大方、人間を見下し、強大な力で地上を制圧しようって魂胆ね。浅ましい……」
暗い表情のアンジェリカにぼくが言う。
「さっきお父さんが殺されたって言ってたけど……」
「マーダオスは王族となるべくわたくしの伴侶になろうとしました。しかし父は彼の邪悪な本性を見抜き、断ったのです。ですが仲間を率いて反乱を起こしたのです」
と、そのときである。
「ここにいたかい、愛しのアンジェリカ」
空間に穴が空いて、そこから長い髪をした男の妖精がでてきた。
「……尋常じゃない魔力量よ。エレン、気をつけて」
ぼくたちは警戒心を高めながら、出てきた妖精を見やる。
「私は妖精の王【マーダオス】。そのごみ屑のように小さい脳みそに、しかと尊き名前を刻んでおけよ下等種族ども」
ふんっ、とマーダオスがぼくらを見下したようにして言う。
「さぁ姫。帰りましょう。始祖の血を一番濃く引くのは王族である貴女だ。私の世継ぎを産んでくれ」
「いやよっ! 近寄らないでこの悪魔!」
「婚約者にその言い方はないでしょう?」
「あなたは! 王位欲しさにお父様を殺し! 王城の人たちを無残に殺した! その様な者が悪魔でなくて何だというのです!」
「やれやれ、聞き分けの悪い女だ。少々、お仕置きが必要かな」
ぱちんっ、とマーダオスが指を鳴らす。
突如として地面に魔法陣が展開し、そこから大蛇が出てきた。
見上げるほどの大蛇が、ぼくらの前にいる。
『 世界蛇(ヨルムンガンド) じゃ、世界を滅ぼす毒を使うという神獣の一種! なぜ貴様が持っている!』
「さる【協力者】に力をお借りしてね。さぁ世界蛇よ。私の敵を殺せ! ただし、あの女は生け捕りだ」
ぐっ、と世界蛇が体を反らす。
『若様! 毒の匂いです! 退避しないと!』
「大丈夫だよ、ラン! 【 契約破棄(リリース) 】!」
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精霊使いの能力が発動します。
世界蛇からスキル【 世界呪毒(カース・ヴェノム) (S+)】を剥奪します。
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しーん……。
「なっ!? ばかなっ! おい世界蛇なにをグズグズしている! はやく毒で殺せ!」
「できないよ、ぼくが毒を奪った!」
「ばっ、バカなことを言うな!? どこの世界に神獣から能力を奪える人間がいるというのだぁ!」
大慌てのマーダオスに、ぼくらは武器を構える。
「やろう、みんな!」
パーティメンバー達はうなずく。
「ふ、ふんっ! たとえ毒が使えなくとも! 無敵の世界蛇! 絶対にやられるわけがない!」
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精霊使いの能力が発動します。
世界蛇から精霊の加護を剥奪します。
→スキル【絶対防御鱗】を剥奪します。
→スキル【全ステータス上昇】を剥奪します。
→etc.……。
アスナに精霊の加護を付与します。
→スキル【斬撃超強化】を付与します。
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「せやぁああああああ!」
アスナさんは高速で世界蛇の背中に乗ると、その皮膚を滅多斬りにする。
「そんなばかなぁあああ! 竜の爪すらも弾き返す鱗が斬り裂かれるだとぉお!?」
世界蛇がアスナさんを、尻尾ではたき落とそうとする。
ひゅっ……! とティナの打った矢が、世界蛇の目を射貫く。
「エレン、鱗は削ったわ!」
「ありがとう! いくよ、カレン!」
ぼくの体から、紅蓮の炎が湧き上がる。
精霊の指輪が変形し、大弓に変わる。
「さ、させるかぁ! 極大魔法【 聖光百花盾(セイクリッド・イージス) 】!」
世界蛇の前方に、100もの光の盾が出現する。
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※緊急事態を感知しました。
エレンに、【精霊王の全魔力】の使用権限を、一時的に譲渡します。
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「【 不死鳥の紅蓮矢(フェニックス・バリスタ) 】!」
放たれた炎の矢は、盾にぶつかると凄まじい爆発を起こす。
その爆炎は発散せずそのまま、盾をすべてぶち抜き……。
そして、世界蛇の体を貫いて、大穴を開けた。
「あぁあり得ぬ! こんな! 下等種族に! 我が最強の盾と従魔を打ち破られるなんてぇえええええ!」
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精霊使いへの敵対行動を関知しました。
マーダオスに対してペナルティを実行します。
→人間への存在退化を実行します。
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