軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

44話 潰れかけの鍛冶屋さん

とある休日。

ぼくはアスナさんと一緒に、トーカの町を歩いていた。

「ふふっ、どんな【指輪】にしようかしら~」

「上機嫌だね。ただの【虫よけ】なのに」

きっかけは先日の、ディーナの事件後。

『ペアリング作らない? ほら、指輪していればディーナも恋人がいるって勘違いしてもう近寄らなくなるかなって! 深い意図はないわ!』

「どこで売ってるのかな?」

「鍛冶屋でも売ってるわ。ギルドでおすすめされたのは【セレスティア】。一番大きな店なんだって」

しかしほどなくして、ぼくらは迷子になってしまった。

この街に来たばかりだし、道に迷うのはしょうがないと思う。

そのときだった。

「あ、あのっ! なにかお困りです?」

振り返ると、そこには小柄な女の子がいた。

浅黒い肌と、とがった耳。

「ドワーフだ」

少女が、とことこと近づいてきた。

「うん。道に迷っちゃって」

「まりぃこの街長いです、案内できるですー!」

マリィという名前のドワーフ少女に、ぼくらは行き先を伝える。

「連れてってあげるですー!」

その後ぼくらはマリィに先導してもらい、目的地である鍛冶屋の前までやってきた。

「ここなのですっ」

「ありがとう、マリィちゃん。おかげで助かったわ」

「じゃ、まりぃはここで失礼するです」

ぺこっ、と頭を下げると、マリィはきびすを返す。

そして、すぐ目の前のお店へと入っていった。

「マリィのお家も鍛冶屋なのね」

「そうだ、どうせだったらマリィのお店で買い物しない?」

「そうね、道案内のお礼もしたかったし。さすがエレン、ナイスアイディアね」

ぼくたちはマリィのお店へと入る。

「お店やってる、のかな?」

店の明かりがついていない。

ガラスのショーケースには、ほぼ何もなかった。

お客は誰もいない。

「いらっしゃーいですー!」

店の奥から、マリィが小走りで来た。

「あ! おふたりとも、どうしたのです?」

「指輪を買いに来たの」

「水臭いよ。君も鍛冶屋さんなら、最初から教えてくれればいいのに」

マリィは弱弱しく笑うと、首を振る。

「まりぃは、鍛冶師じゃないから」

「え、どういうこと?」

彼女に案内されて、店の奥へと入る。

立派な作業場があった。

「もともとここはお父さんのお店だったのです」

「だった?」

「……死んじゃったのです」

「それは……ご愁傷さま。けど、ならあなたがお店を継げばいいじゃない?」

マリィは悲しそうな顔になると、作業台に乗っていた金属片を手に取る。

「これは、なに?」

「まりぃが作った指輪です。……まりぃ、才能無いのです」

指輪はひしゃげて、指に収まらなかった。

「鍛冶スキルが無いの?」

「はい……商品作れなくて、目の前には大きなお店あるし……大事なお父さんのお店、潰れちゃう」

くすん、と涙を流すマリィの肩に、ぼくは手を置く。

「任せて!」

========

精霊使いの能力が発動します。

【 地精霊(ノーム) 】の 精霊核(エレメンタル) を複製します。

【地精霊のスキル(S)】をマリィに付与します。

→スキル【鍛冶・最上級(S)】を獲得しました。

→スキル【高速複製(S)】を獲得しました。

→etc……

========

目の前に黄色い光が集まっていく。

やがてそれは、小さな人形に変わった。

「わぁ! ノームちゃんだわぁ! 久しぶりねぇ!」

アスナさんは満面の笑みを浮かべて、ノームを抱き上げて、すりすりする。

ノームはマリィを見やると、ぴょんっ、とジャンプ。

彼女は慌てて抱き留める。

「マリィ、指輪作ってみてくれないかな」

「けど……」

「大丈夫、ぼくと、そのノームを信じてあげて」

うんうん、と精霊がうなずく。

「は、はいなのです!」

地精霊はマリィの頭に乗っかる。

その状態で、彼女はハンマーを手に取る。

「……わかるのです! 頭の中に、作りたいものを思い描くだけで、作り方が浮かんでくるのですー!」

「アスナさんと外で待ってるね」

邪魔しないように、作業場を後にする。

完成を待っていたその時だ。

がちゃっ、とドアが開いた。

「なんだねチミたちは、ミーのお店に勝手に入らないでくれたまへ」

ぶくぶくに太った、青白い肌の男が、店に入ってきて言う。

「ここはマリィのお店です。あなたは誰ですか?」

「ミーは【アンダードッグ・セレスティア】! そこの大きな鍛冶屋のオーナーだよ」

ふんっ、と小馬鹿にしたように鼻を鳴らす。

「貧乏人どもが。さっさと出て行け。この金持ちのミーに貧乏がうつったらどうするのかね?」

「お客さんにそんな言い方酷いわ!」

「黙れ貧乏人。悔しかったら大金を稼ぐことだね。まあ? 冒険者風情がいくら頑張って稼いでも、ミーには遠く及ばないだろうけどねぇ!」

そのときだった。

「ふたりとも、できたのですー!」

奥の作業場から、マリィが満面の笑みでやってきた。

大きな箱を持っていた。

「やぁマリィ? 未来のお婿さんが迎えに来ましたよぉ~?」

にやにやと笑いながら、アンダードッグが彼女を見て言う。

「どういうこと?」

「まりぃ、アンダードッグさんから借金してるです。返済できないと、自分と結婚しろって……」

借金のかたに結婚を迫るなんて!

ひどいやつだ!

========

精霊使いへの敵対行動を関知しました。

アンダードッグへのペナルティを実行します。

→【鍛冶師の 精霊核(エレメンタル) 】を剥奪します。

→スキル【商売繁盛】を剥奪します。

→etc……

========

「んん~? マリィ、それは何かね?」

アンダードッグが、彼女の持っている箱を触ろうとする。

「だ、だめなのですっ! これはエレンさんたちの」

「ええい、さっさと見せなよ!」

ぐいっ、と引っ張ると、箱がひっくり返る。

どさどさっ、と大量の指輪が、地面に散らばった。

「なっ!? なんだねこれはぁああ!?」

顔を真っ赤にして、アンダードッグが叫ぶ。

「この指輪……凄まじい性能だよ! 凄まじい数のバフがなされてる! ほ、本当にチミが作ったのかね!?」

アンダードッグが、肩を掴もうとする。

びくっ、と怯えるマリィ。

「やめなよ、嫌がってるだろ」

ぼくは護身術スキルを使って、彼の手を掴んでひねる。

「いたたたたっ!」

ぱっ、と手を離す。

「マリィは鍛冶スキルを手に入れたよ。これで借金もすぐに返せる」

「バカを言うんじゃあないよチミ! いくら鍛冶ができるようになったからなんだ! すぐに金が稼げるとでも思ってるのかね!」

========

精霊使いの能力が発動します。

スキル【商売繁盛(S)】をマリィに付与します。

========

ぞろぞろ、とお客さんが入り込んできた。

「なっ!? なんだこの客の数は!?」

客が彼をぐいっと押しのけて、マリィのもとへいく。

「さっきアンダードッグさんが叫んでるの聞いたけど……これ本当にバフがかかってるのかいっ?」

「は、はい……」

「「「おおー!」」」

客達は、落ちている指輪を手に取って、レジに並ぶ。

「おれもくれ!」「わたしも!」

あんなにたくさん作った指輪が、一個もなくなってしまった。

「ぐ、ぐぬぬぬぅ! これで勝った気になるなよー!」