作品タイトル不明
189話クトゥルー、同化する【前編】
勇者エレンと仲間達が、着実にクトゥルーたちを追い詰めている。
「くそっ! くそっ! くそぉ!」
魔竜の頭脳部分にて、クトゥルーはガリガリと頭をかいていた。
「なぜ!? どうしてこうも上手く行かんのだぁ……!」
本当なら魔竜を完成させた時点で、自分は唯一の神になるはずだった。
想定外の事態は3つ。
ひとつは、精霊使いカルラの生存および奮闘。
ふたつ目は、精霊王ルルイエの復活。
そして何より、勇者エレンの存在。
「どう考えてもルルは再起不能だっただろ!? それをくそっ! あの忌々しい勇者め! 取るに足りない存在のくせに!」
カルラを母に持ち、ルルイエを立ち直らせた……あの小柄な少年。
どう見ても戦う力のない、英雄にはほど遠い男の子。
それが今や、精霊王の真の力を使いこなし、星を食らう化け物相手に一歩も退かない。
「くそっ! あいつさえ……! あいつさえいなければぁあああ! くそぉおおお!」
だが今更後悔したところで遅かった。
彼はルルイエを潰すための一ピースとしてしか見ていなかった、自分の落ち度。
「み、未来神さま……気をお確かに……」
邪神イグが怯えながらも、主人の心を静めようとする。
「うるさぁい! くそくそぉ!」
だが火に油。
彼の怒りの炎は激しく燃えている。
「今頃ボクが全てを手に入っていたのに……!」
「未来神さま。認めましょう。あの小さな勇者の力は、紛れもなく本物です」
「ボクに意見するのかぁああああ!」
イグに対して拳を振るおうとする。
だが、邪神は真っ直ぐにクトゥルーを見て、退こうとしない。
「ここでわめいていても、時間の無駄です。対策を講じるべきです」
「ぐ……この……そんなの……わかっている……!」
その通り。
このままでは魔竜は討伐されて、自分の目標は達成されない。
「排除するべきは、まずエレンかと。あとは烏合の衆でございます」
「……そうだな。世界よりも、まずはあの憎い勇者をどうにかしなくては」
イグに感化されたわけではないが、この邪神の冷静さを前に、頭に登った血が少しだけ下がってきたのだ。
「イグ。ここは任せる。時間を稼げ」
「かしこまりました。未来神さまは、どこへ?」
「魔竜の核のもとへだ」
クトゥルーは部屋を後にする。