作品タイトル不明
187話 クトゥルー、戦慄を覚える【中編】
星食みの魔竜タルタロスは、クトゥルーの持つ精霊王の魔力を食らう。
実にゆったりとした動作で竜は起動する。
体に血液が巡るように、魔力が隅々まで行き届く。
どくん……どくん……と脈動すると、今までセーフモードだった魔竜が、目を覚ます。
『ーーーーーーーーーーー!』
それは獣の鳴き声のようであった。
魔竜の咆哮は星を揺らす。
そしてゆったりと竜は鎌首をもたげていく。
「さぁ! 食らえ魔竜よ! お前に仇なす愚か者をなぁ……!」
クトゥルーの命令に従い、魔竜は視界に勇者エレンを移す。
子供の勇者と比べて、魔竜は巨大だった。
その魔竜は顎をゆっくりと開くと、その体の大きさに似つかわしくない俊敏さで、エレンに向かって首を伸ばす。
ぐわ……! と襲いかかる魔竜のアギトを前に、エレンは棒立ちしていた。
「はーっはっはっはぁ! どうだエレンぅうううう! 死ねぇえええええ!」
肉食獣を彷彿とさせる動きで、魔竜はエレンを食らおうとする。
だがエレンの瞳は微塵も揺らがない。
襲い来る敵をその紅蓮の瞳に捕らえ、動きを見切る。
そしてギリギリで攻撃を回避してみせた。
「なっ……!」
『せやぁ……!』
エレンは霊王の鍵の腹で、魔竜の横っ面を弾き飛ばす。