作品タイトル不明
181話 カルラ、限界を迎える【後編】
『 滅葬砲(ゲヘナ) 、発射準備』
クトゥルーが手を上げる。
それに応じるように、魔竜の体が震え出す。
魔力が竜の口に集中していき、すべてを無に帰す、破壊の炎へと変換する。
「……だーりん、霊装、といて」
現在カルラは、夫アドラと一体化している状態だ。
このまま魔竜の攻撃を彼女が受ければ、同化しているアドラの命さえ散ってしまう。
『それはできません。あなた一人を寂しく死なすことなど、どうしてできましょうか』
つまり、アドラは妻と心中しようとしているのだ。
「ふくろう、本当に良いのかい?」
『もとより、覚悟はできております』
カルラの肉体は、本来ふくろうのもの。
しかし主導権を彼女に返してしまえば、最期の一撃を、防ぐことができない。
ふくろうとアドラは、カルラのそばを死に場所に定めたのだ。
「ははっ、アタシは……しあわせもんだねぇ」
自分とともに死んでもいいと、思ってくれる人たちがいるから。
自分の人生に、意味があったのだと、彼女は満足していた。
『ほらカルラぁ、最期にやっておきたいことはないのかぁい?』
「ない!」
カルラは二カッと笑って、ハッキリと言う。
霊力がつき、魂が無に帰すというのに、彼女は笑っていた。
「良い人生だった! 悔いのない生だった! めちゃくちゃ楽しかった!」
両手を広げて、カルラは目を閉じる。
残る霊力を炎に変えて、魔竜の一撃を、少しでも威力軽減させようとする。
『ばいばい、カルラ。最ッ高に目障りだったよ! 死ねぇええええ!』
魔竜の口から吐き出されるのは、超高熱の炎。
大地を破壊する一撃が、カルラめがけて飛翔する。
雲を蒸発させ、空気を焼き、星をも貫くその一撃。
その一撃を、カルラは真っ向から受け止めようとした……そのときだ。
「そこまでだ!」
一直線に伸びた、魔の炎が両断された。
『なっ!? お、おまえは!?』
「……。ハッ、なぁんだ、間に合ったのかよ」
カルラは目を開ける。
そこにいたのは、自分と同じ、紅蓮の瞳を持つ精霊使い。
「エレン!」
数々の悪を倒し、人類を救った不死鳥の勇者、エレン・バーンズがそこにいたのだ。